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最後に重大発表も飛び出したMA2017決勝戦まとめ――年末恒例「テクノロジーの異種格闘技イベント」2017年の覇者は?(1/3 ページ)

街に年末の喧噪が見え始めた2017年12月16日。東京・日の出桟橋に近い倉庫のようなたたずまいの会場で、開発者が互いにアイデアと技術力で覇を競う開発コンテスト「Mashup Awards 2017」ファイナルステージ(決勝戦)が開催された。全447作品の中から激戦を勝ち抜いた15作品が、賞金と誇りを懸けて挑んだ決勝戦の模様をお伝えする。

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 日本中のエンジニアが、所属する企業や住んでいる地域、年齢などの垣根を越え、自由な発想を元に「マッシュアップ」した作品を競い合う開発コンテスト「Mashup Awards」(MA)。2017年には、447作品がエントリーされ、その中から、第1次審査、準決勝を勝ち抜いた15作品が、ファイナルステージ(決勝戦)へコマを進めた。

 年末を締めくくる風物詩となった「MA」の決勝戦。2017年は12月16日に東京都港区のイベントスペース「TABLOID」で開催された。かつて印刷工場だった会場は、打ちっぱなしの壁面にむき出しの配管が巡る、まさに「テクノロジーの異種格闘技戦」決勝の舞台にふさわしいたたずまいだ。

 MA2017の審査基準は、作品における「チャレンジ度」「ギーク度」「わくわく感」。例年同様、ビジネスモデルは二の次に、アイデアの新規性や奇抜さ、作品へのこだわりや完成度、「見る人をどれだけ楽しませようとしているか」をポイントに審査が行われる。また、前年から設けられた「for Pro(法人)」「for All(個人)」の参加区分は今回も継続。「for Pro」では3作品、「for All」では12作品が各部門での「最優秀賞」を目指して最終プレゼンテーションに臨んだ。

 なお、ファイナルステージの審査は下記5人の審査員によって行われた。

  • 久下玄氏(Coiney/tsug プロダクトストラテジスト)
  • 藤川真一氏(BASE 取締役CTO)
  • 山本大策氏(グローバルウェイ Globalway Lab室長)
  • 栗栖義臣氏(はてな 代表取締役社長)
  • 麻生要一氏(リクルートホールディングス)

 まずは、「for Pro」の3作品を発表順に紹介していこう。

掃除機をどこまでかけたかわかるAR

 掃除機をかけているとき、「あれ? この場所もうかけ終わったっけ?」と迷ってしまったり、単純な反復作業に飽きて適当に済ませてしまったりといった経験はないだろうか。「掃除機をどこまでかけたかわかるAR」は、こうしたモヤモヤを解消し、掃除へのモチベーションを高めてくれる作品だ。

 アプリをインストールしたiPhoneを、専用のアタッチメントで掃除機に固定すれば準備は完了。後は、普通に掃除をすれば、既に掃除機のヘッドが通った場所がAR(Augmented Reality)の要領でiPhoneの画面上に色付きで表示される。エンジニアが大好きな、あの「イカが出てくるアクションゲーム」のように、床をキレイに塗りつぶすことに夢中になっているうちに、退屈なはずの掃除がはかどっているわけだ。開発者によれば「習慣として無意識にやっていることの視覚化」をテーマにした作品だという。

 開発はUnityのARKit Pluginを利用して行われており、iPhoneのカメラに表示された画像からリアルタイムに特徴点を抽出することで掃除機の位置を割り出している。アップデートとして、子どもが掃除機を持ってダッシュすることを防止する「スピードオーバー警告機能」や、人がかけた掃除機の軌跡をロボット掃除機の走行データとして取り込むことで障害物への衝突などをあらかじめ防止できる「憑依機能」なども実装されており、今後の発展にも期待できる作品となっている。

魔法の世界を“実装”するext-broom

 「高度に発達した科学は、魔法と区別が付かない」とは、SF作家であるアーサー・C・クラークの有名な言葉。これを引用しつつ「でも、科学が自然に発達した結果として魔法っぽく見えるのって、受け身な感じがしますよね。私たちは、より攻めの姿勢で『魔法の世界を実装する』ことを目指しました」と開発者が披露したのが「ext-broom」だ。

 「ext-broom」は、世界中で親しまれているファンタジー「ハリー・ポッター」シリーズの中に登場するスポーツ「クィディッチ」を、さまざまなテクノロジーを駆使して現実世界で実現しようというもの。クィディッチは、空飛ぶほうきに乗った魔法使いたちがチームに分かれ、「スニッチ」と呼ばれる魔法生物を捕まえることを目指しつつ、獲得したポイントを競う競技である。

 「空飛ぶほうき」の代わりとなるのは、電動の「ほうき型モビリティ」。プレーヤーは、ローラーブレードを履いた状態でこれにまたがり、ホイールの回転量を調整しつつ、進行方向に舵を切る。思ったところへ素早く動けるようになるためにはそれなりの習熟が必要である点は、とてもスポーツ的だ。また、プレーヤーから逃げ回る「スニッチ」は、超小型のドローンで再現。カメラでプレーヤーの位置を捉え、そこから逃げる動きを自律的に行う。

 多くのプレーヤーが楽しめるようにすることを視野に量産が容易なように、できる限り既製品を組み合わせつつ、見た目も格好良くなるデザインを工夫したという。

スキー場での「会えない」を解決し「会いたい」を叶える雪山BOT with LINE Beacon

 多くの仲間とスキー場に出掛けて「そろそろ集まって食事がしたい」ときに「仲間が今どこにいるか分かりづらい問題」は悩みのタネ。一応「LINEグループ」は作っていたとしても、スキー場ではグローブを着けていることが多く、いちいち外して今いる場所を返信するのも面倒だ。「雪山BOT with LINE Beacon」は、こうした問題を解決してくれる作品である。

 1台3000円程度で購入でき、スマートフォンとBLE(Bluetooth Low Energy)で通信が行える「LINE対応ビーコン」をスキー場内に複数設置しておくことで、ユーザーの直近の居場所を把握。「みんなどこ?」と尋ねることで、LINE botがグループメンバーの代わりに居場所を教えてくれる。スキー好きの開発者は、既に多くのスキー場に同システムを持ち込み、実証実験も行っている。

 もともと「スキー場での男女の出会いを支援したい」との思いから作り上げたシステムだったが、近年、雪山で不幸な雪崩事故が起こったことをきっかけに、簡易的な「雪崩ビーコン」としての可能性にも着目。実際にゲレンデへ出向き、約2メートルの深さの雪に埋まったスマホと、ビーコンとの通信も可能なことを確認した。開発者は「スキー場を楽しくするためのシステムとして作っているが、不測の事故が起こった際に、巻き込まれた人を救える可能性を少しでも高められるシステムとしても可能性を感じている」と話した。

 以上が「for Pro」コースの3作品だ。ここからは「for All」コースの全12作品を一挙に紹介する。

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