イオン銀行がOracle Exadataで統合データベース基盤を刷新。夜間バッチとデータ集計の処理性能が大幅に向上:さらなるデータ活用、サービス向上に向けた次世代システムの中核に
イオン銀行は、預金口座数の増加やサービス拡充などビジネスの拡大に伴ってパフォーマンスやリソースの面で課題が生じていたデータベース基盤を「Oracle Exadata」によって刷新。夜間バッチ処理やオンライン処理の性能を大幅に改善し、今後のさらなるデータ活用に向けて中核となる新統合データベース基盤を整えた。
増え続けるデータ量への対応、蓄積したデータのさらなる有効活用を図るべく統合データベース基盤を刷新
イオン銀行は2016年11月、パフォーマンスやリソースの面などで課題を抱えていたUNIXサーバによる統合データベース基盤を、ハードウェアの保守期限切れを機に「Oracle Exadata」で刷新した。同行はなぜOracle Exadataを選んだのか、その効果は?──導入を推進したイオン銀行の担当者らと、プロジェクトを支援した日立製作所の関係者らに聞いた。
「商業と金融の融合」「リテール・フルバンキング」を事業コンセプトに掲げて創業し、2017年10月に設立10周年を迎えたイオン銀行。親しみやすく、便利で分かりやすい銀行を目指してサービスを展開する同行は、100店舗を超えるインストアブランチ※1を365日、原則21時まで営業している他、365日24時間手数料無料で使える「イオン銀行ATM」を日本全国に約5800台設置するなど、顧客が身近に利用できる環境を精力的に整えてきた。インターネットバンキング関連のサービスも充実しており、例えばスマートフォンを使って預金残高や入出金、明細などを確認できる「通帳アプリ」を顧客向けに提供している。
※1 スーパーマーケットなど商業施設内に設置された銀行店舗
そのイオン銀行は、UNIXサーバ上のHiRDBで運用していた顧客情報などを管理する統合データベース基盤を、ハードウェアの保守期限切れに伴いOracle Exadata X6に移行した。その背景について、同行 システム開発部長の齋藤友泰氏は次のように説明する。
「開業からこれまでの間、イオン銀行ではさまざまな新サービスを提供してきましたが、それに伴って新たなシステムを随時導入してきたことから、データ量は年々、増加傾向にありました。そのように増加し続けるデータ量に対応すること、そして蓄積した情報を有効かつ迅速に利用すること──これらが新たな統合データベース基盤の構築における大きなテーマでした」
これまで利用してきた統合データベース基盤は安定稼働を最重要視して構築されたが、長年運用する中で幾つかの課題が生じていた。具体的には、種類が異なるデータベースが行内に複数存在すること、データの源泉となるシステムや類似機能を持つシステムが複数存在し、システム運用管理の業務が煩雑化していたこと、データ量の増加に伴うリソース不足などである。
また、これらに加えて性能面でも大きな課題を抱えていたとシステム開発部 システム開発グループ マネージャーの宮崎智彰氏は明かす。
「以前の統合データベース基盤は一部のSQLの実行に多くの時間がかかるという課題がありました。特に問題を抱えていたのが統合データベース基盤の顧客情報をクレジットや住宅ローンといったサービス用のシステムに反映するための夜間バッチ処理です。年々データが増加していたこともあり、近年は翌朝の業務開始までに終わるかどうかという差し迫った状況にありました」(宮崎氏)
Oracle ExadataはIAサーバとの比較検討で3倍の性能差
これらの課題を解決するために導入されたのがOracle Exadata X6だ。同行では、同製品と「Oracle Database 12c Enterprise Edition」「Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)」を用いたハイアベイラビリティ構成を実現。また大規模データベース環境の管理性やパフォーマンス、可用性を高める目的から「Oracle Partitioning」、データベースチューニングのために「Oracle Diagnostics Pack」「Oracle Tuning Pack」などのオプション製品を併せて導入した。
ただし、初めからOracle Exadataありきで検討が進められたわけではなかったようだ。
「実は、当初はIAサーバによるシステムを検討していました。しかし、Oracle Exadataと性能およびコスト面で比較検討した結果、長期的に見てOracle Exadataを採用する方がメリットが大きいと判断したのです」(齋藤氏)
実際にIAサーバとの比較検証を実施したのは、イオン銀行の勘定系システムの運用管理を担い、今回、新統合データベース基盤の導入も支援した日立製作所である。その内容について、同社 金融第一システム事業部の川邉章司氏(金融ソリューション本部 金融システムサービス第一センタ 主任技師)は、「IAサーバとOracle RACを組み合わせた構成とOracle Exadataの性能を比較しました。この2つの環境について一定量のデータに対する検索処理の性能を比べたところ、Oracle ExadataはIAサーバより3倍も高速に検索できることが分かったのです」と説明する。
また、イオン銀行の齋藤氏は、「今後、勘定系も含めた次世代システムの構築を検討していますが、データベース基盤はその中核となる存在です。Oracle Exadataは性能面、そして信頼性の面において、当行の要望に応えてくれるソリューションだと考え、採用を決めました」と明かす。
日立製作所の支援によりHiRDBからスムーズにデータ移行
このプロジェクトが始まった当初はOracle Exadata X5で検討を進めていたが、折良く後継のX6がリリースされたことから2016年5月に同製品の採用を決めた。その経緯について、日立製作所の山口勇氏(産業・流通ビジネスユニット 産業ソリューション事業部 エンタープライズパッケージソリューション本部 ERPソリューション部 主任技師)は次のように説明する。
「Oracle Exadata X6は、X5からさらに大幅に性能が向上しており、お客さまにより高い付加価値をご提供できます。そこで、日本オラクルとも密接に情報交換を行いながらX6の導入準備を進めた結果、特に問題もなくスケジュール通りに新たな統合データベース基盤を構築することができました」(山口氏)
なお、Oracle Exadataへの移行に際しては、旧データベース基盤からのデータ移行作業が大きな関門になった。作業を担当した日立製作所の東島平剛氏(金融第一システム事業部 金融ソリューション本部 金融システムサービス第一センタ 技師)は、次のように述懐する。
「旧データベース基盤には大量のデータが格納されていた他、異種データベース製品間でのデータ移行となるため、製品仕様の差異を吸収するためのデータ型変換が必要になるなど、幾つかの不安要素がありました。ただし、以前に関連システムのデータベースでHiRDBからOracle Databaseへのデータ移行を経験しており、そこで得たノウハウも活用してスムーズにデータ移行を完遂することができました」(東島氏)
データ検索/集計処理が8倍、夜間バッチ処理が3倍に性能向上。Oracle Exadataを次世代システムの中核に
こうしてOracle Exadataによる新たな統合データベース基盤が完成すると、2016年9月から新旧環境の並行稼働が開始された。アプリケーション開発担当者などが新統合データベース基盤に徐々に慣れることができるようにとの配慮からだ。この段階的な移行も非常にスムーズに進んだと話すのは、イオン銀行の諸星祐介氏(システム開発部 システム開発グループ)である。
「新統合データベース基盤ではレスポンスが劇的に向上したことから、私たちが強く誘導するまでもなく、アプリケーション担当者の皆さんは進んで旧基盤から移行してくれました。移行を円滑に進められたのはOracle Exadataの高い性能のおかげだと思います」(諸星氏)
また、Oracle Exadataに移行したことで、さまざまな業務処理の性能が大きく向上した。
「実際に業務ユーザーが行っているデータ検索や集計の処理にかかる時間が5分の1から8分の1程度に大きく短縮されました。また、最終的な集計結果を出す前段階のデータ取得の性能も10〜15倍ほど速くなっており、作業時間を劇的に短縮できました。以前は始業時間の直前まで6、7時間かけて行っていた夜間バッチ処理についても、Oracle Exadataに移行してからは2時間程度で完了するようになり、余裕を持って始業を迎えられるようになったことは大きなメリットです」(諸星氏)
一方、ビジネス面における効果を強調するのは齋藤氏である。
「Oracle Exadataに移行してシステムの処理能力が向上し、データ量の増加にも速やかに対応できるキャパシティーと拡張性を手に入れたことで、業務部門に対して提供するデータの幅をどんどん広げていけるようになりました。例えば、それぞれのお客さまについて、預金情報だけではなく住宅ローンの利用状況も併せて表示するなど、当行のさまざまな商品のご利用状況を一元的に見られるようになります。こうしたアプリケーションの機能拡張が実現可能となったことは、ビジネス面の大きなメリットの1つです」(齋藤氏)
イオン銀行は現在、顧客サービスのさらなる拡充に向けてシステムの拡張を進めているが、それに伴って増加したデータベースをOracle Exadata上に集約する作業を進めている。勘定系も含めた次世代システムの検討にも着手しており、Oracle Exadataによる統合データベース基盤がその中核を担う予定だ。これらの計画と合わせて、セキュリティ強化のためにOracle Advanced SecurityやOracle Database Vaultなどの導入も検討していきたいという。
さらに、現在は夜間の日次バッチ処理で更新しているデータをリアルタイムに参照できるようにし、「最新の顧客データを活用した新たなサービスの展開も視野に入れていきたい」と齋藤氏は話す。
加えて、齋藤氏は「今後、Webサイトのアクセスログや店舗画像データなどのノンリレーショナルなデータを使ったマーケティング分析やお客さまへのレコメンド情報の配信といったオムニチャネルの取り組みを進める構想も膨らませています。その中で、Oracle Exadata内の顧客情報などとノンリレーショナルデータを組み合わせて活用できるOracle Big Data Applianceの導入も検討していきたいと思います」と今後の展望を語った。
データ量の増加に伴う夜間バッチ処理やオンライン処理の遅延と、それによって生じる業務への支障は現在、多くの企業で深刻な問題となっている。イオン銀行はOracle Exadataによってこれらの問題を一掃したばかりではなく、データのさらなる有効活用やサービス拡充に向けた強固なデータベース基盤を整えることができた。独自の強みを生かした「商業と金融の融合」を推進する同行が今後、どのようなサービスによって顧客を魅了していくのか、引き続き注目していきたい。
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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2018年5月10日