Windows Updateの不都合な現実:その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(115)(1/2 ページ)
2018年7月11日の定例のWindows Updateは、更新プログラムが提供された全てのWindowsに共通の既知の問題が複数あり、翌週17日にその問題を修正する更新プログラムが提供されました。そこから見えてくる、Windows Updateの問題点とは?
はじめに、Windows Updateの「高速インストール」について
既にご存じの方は多いでしょうが、Windows 10の品質更新プログラムは主に「累積更新プログラム(Cumulative Update)」として提供されます。
ここからはあまり知られていないと思いますが、Windows 10のWindows Updateは、インストールが必要な累積更新プログラムを検出すると、「高速インストール(Express Update)」を選択します(利用可能な場合)。
以降は筆者の想像も含みますが、高速インストールでは、まず更新されたコンポーネントのカタログを含む「高速インストールパッケージ」(*x86/x64-express.cab、これには更新プログラム自体は含まれていません)をダウンロードして展開し(.xml、.cat、.mum、.manifestなど)、システムをスキャンして、更新が必要なコンポーネントの更新ファイルをダウンロードするというような動きをします。そのため、実際のダウンロードサイズが少なくて済むというメリットがあります。
通常、毎月第二火曜日(日本ではその翌日の水曜日)にリリースされる累積更新プログラムでは、高速インストールが利用可能です。これは、2016年10月以降のWindows 7/8.1、Windows Server 2008 R2/2012/2012 R2の「セキュリティマンスリー品質ロールアップ」(Monthly Rollup)や「セキュリティのみの更新ロールアップ」(Security-Only Update)でも同様だと思います。
これまで高速インストールは、Windows Updateと「Windows Server Update Services(WSUS)」で利用できました。以下のMicrosoftの公式ブログで説明されているように、2017年1月からはサードパーティーのパッチ管理ツール向けにもこの方式が公開されているそうです。
- Windows 10 quality updates explained & the end of delta updates[英語](Windows IT Pro Blog)
Microsoft Updateカタログでは、累積更新プログラムの「フルパッケージ」(*-x86/x64.msu)と「差分(Delta)パッケージ」(*-x86/x64_delta.msu)が提供されています。差分パッケージは高速インストール(Express)パッケージとは異なり、前回の累積更新プログラムとの差分を含みます。
Microsoftの公式ブログでは、サードパーティーへの高速インストールの公開に伴い、2019年2月から、差分パッケージの作成を終了する予定であることが示されています。
現在、Microsoft Updateカタログでは、毎月第二火曜日リリースの累積更新プログラムについては差分パッケージが提供され、それ以外にリリースされる累積更新プログラムについてはフルパッケージのみが提供されています。2019年2月の第二火曜日のリリースを最後に、つまり2019年3月からは差分パッケージは利用できなくなるということです。
Microsoftの公式ブログでは「フルパッケージによる更新(Full Update)」「高速インストールパッケージによる更新(Express Update)」「差分パッケージによる更新(Delta Update)」の違いについても詳しく説明されているので、特にシステム管理者やITプロフェッショナルの方は、一度目を通しておくことをお勧めします。筆者も個人ブログでこれらの違いをまとめているので、参考にしてください。
- Windows 10 累積更新の高速(Express)と差分(Delta)の違い(筆者の個人ブログ:山市良のえぬなんとかわーるど)
翌週に修正された2018年7月第二火曜日の更新の問題
Windows Updateの更新パッケージと3種類の更新方法を知っていただいたところで、2018年7月第二火曜日リリースの更新プログラムの問題と絡めて、“Windows Updateの不都合な点”を明らかにしたいと思います。
2018年7月第二火曜日にリリースされたWindows 10とWindows Server 2016以降の累積更新プログラム、Windows 7/8.1とWindows Server 2008 R2/2012/2012 R2のセキュリティマンスリー品質ロールアップ、セキュリティのみの更新ロールアップ、Windows Server 2008 SP2(2018年9月から累積モデルに移行予定)のセキュリティ更新、これら全てに共通する複数の不具合(3つまたは4つ)が「既知の問題」として報告され、翌週16日(日本では17日)に、この問題を修正するだけの更新プログラムがリリースされました。
いずれも更新された「Tcpip.sys」が原因で発生した問題のようです。以下の表1に問題を含む更新プログラムと、その問題を修正する更新プログラムをまとめました。
Windowsのバージョン | 問題を含む2018年7月の更新 | 修正版(2018年7月第3週リリース) | サイズ |
---|---|---|---|
Windows 10 version 1803 Windows Server,version 1803 |
KB4338819(Build 17134.165) | KB4345421(Build 17134.167) https://support.microsoft.com/en-us/help/4345421 |
x86:374.8MB x64:678.2MB |
Windows 10 version 1709 Windows Server, version 1709 |
KB4338825(Build 16299.547) | KB4345421(Build 17134.167) https://support.microsoft.com/en-us/help/4345421 |
x86:461.4MB x64:836.1MB |
Windows 10 version 1703 | KB4338826(Build 15063.1206) | KB4345419(Build 15063.1209) https://support.microsoft.com/en-us/help/4345419 |
x86:682.3MB x64:1211.6MB |
Windows 10 version 1607 Windows 10 Enterprise 2016 LTSB Windows Server 2016 |
KB4338814(Build 14393.2363) | KB4345418(Build 14393.2368) https://support.microsoft.com/en-us/help/4345418 |
x86:680.3MB x64:1300.6MB |
Windows 10 Enterprise 2015 LTSB | KB4338829(Build 10240.17914) | KB4345455(Build 10240.17918) https://support.microsoft.com/en-us/help/4345455 |
x86:468.4MB x64:905.8MB |
Windows 8.1 Windows Server 2012 R2 |
KB4338815(Monthly Rollup)またはKB4338824(Security-Only) | KB4345424 https://support.microsoft.com/en-us/help/4345424/ |
x86:24.1MB x64:39.0MB |
Windows Server 2012 | KB4338830(Monthly Rollup)またはKB4338820(Security-Only) | KB4345425 https://support.microsoft.com/en-us/help/4345425/ |
x64:40.9MB |
Windows 7 SP1 Windows Server 2008 R2 |
KB4338818(Monthly Rollup)またはKB4338823(Security-Only) | KB4345459 https://support.microsoft.com/en-us/help/4345459/ |
x86:23.9MB x64:33.7MB |
Windows Server 2008 SP2 | KB4295656(Security Update) | KB4345397 https://support.microsoft.com/en-us/help/4345397/ |
x86:633KB x64:838KB |
表1 問題を含む2018年7月の更新プログラムと、その問題を修正する更新プログラム(Windows 8.1とWindows Server 2012 R2以前はこの一覧にはない「マンスリー品質ロールアップのプレビュー」でも修正されている) |
問題を修正する更新プログラムは、Windows 10とWindows Server 2016以降向けには、累積更新プログラムとしてWindows UpdateおよびMicrosoft Updateカタログを通じて、Windows 8.1とWindows Server 2012 R2以前向けには、その翌日に個別の修正プログラムとしてMicrosoft Updateカタログを通じて提供されました。Windows Server 2008 SP2については、オプションの更新としてWindows Updateで提供されました。
また、個別の更新プログラムの翌日にリリースされたマンスリー品質ロールアップのプレビュー(2018年8月のセキュリティマンスリー品質ロールアップのプレビュー版)には、この問題に対する修正が含まれており、Windows Updateで配布されています。
この問題に関する日本語の公式情報は、以下のブログ記事になります(注:一部のサポート情報のOS Build番号にミスがあります)。
- 7月の更新プログラムを適用するとStopエラーなどの問題が発生する(Ask the Network & AD Support Team)
Windows 10 バージョン1709(Fall Creators Update)以降の場合、Windows Updateの「更新プログラム」のチェックをクリックしても、問題を修正する更新プログラムは検出されない場合があります。WSUSを利用していない場合、検出されない理由は「Windows Update for Business(WUfB)」ポリシーが設定されていることにあります。なぜそうなるのかは、本連載第111回をご覧ください。不具合の影響を受けていて問題を解消したいなら、Microsoft Updateカタログからダウンロードしてインストールしてください。
- 秘密のWindows Update for Businessショー(本連載 第111回)
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