酒造りのノウハウをIoTで数値化 データと映像で品質向上と技術伝承――寒梅酒造、NTT東日本らと実証実験
日本酒蔵の寒梅酒造は「もろみ仕込み」の工程をセンサーで計測し、遠隔監視する実証実験を開始。職人の経験で受け継がれてきた酒造りのノウハウを数値化し、酒造の効率化や技術伝承の簡易化を図る。
宮城県の老舗清酒メーカーである寒梅酒造とNTT東日本、ラトックシステムは2018年10月29日、日本酒の製造工程にセンサーなどのIoTデバイスを導入し、データの自動計測と遠隔確認を可能にする実証実験を開始した。計測データを活用して、日本酒製造の効率化と品質向上、技術伝承の簡易化を目指す。
日本酒の製造において、品質の維持向上などのノウハウは、作り手による経験や暗黙知に頼るところが大きい。特に、日本酒造りの重要な一工程である「もろみ仕込み」では、酒蔵で人の手を要するさまざまな作業(温度など、各種データの定期的な計測、発酵状況の目視確認など)が必要になる。
実証実験では、寒梅酒造の酒造タンク内に温度センサー、CO2濃度センサー、IoTカメラを、ろ過室に温湿度センサーをそれぞれ設置。センサーデータとカメラ映像により、もろみの状態を遠隔確認できるようにして、データを作業記録と合わせてクラウドに蓄積。これまで経験で受け継がれてきた酒造りのノウハウを数値化、分析することで、酒造作業の効率化、日本酒の品質向上、技術伝承の簡易化の実現に向けた効果を検証する。
酒造タンクに設置する温度センサーは、ラトックシステムの酒造品温モニタリングシステム「もろみ日誌」を活用。CO2濃度センサーとIoTカメラは、NTT東日本の「ギガらくWi-Fi」のIoTサポートオプションを、ろ過室に設置する温湿度センサーは、ティアンドデイのデータロガー「おんどとり」を使用する。
実証期間は、2018年10月29日から2019年9月末までの予定。3社は実験環境の構築や実験実施で得たデータを基に、同様の課題を抱える酒蔵への展開やデータの活用方法についての検討を進めていくとしている。
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