「参入したら決して逃げない」――エンジニアの誇りを持ち続けるCEOのこだわり:Go AbekawaのGo Global!〜Michael Schumacher編(後編)(1/2 ページ)
ユーザーのエクスペリエンスとシステムをモニタリングする「SysTrack」製品で知られる「Lakeside Software」の創業者兼最高経営責任者(CEO)のMichael Schumacher氏。釣りやスポーツが好きな「普通の」子どもだったSchumacher氏が、Lakeside Software創業に至ったきっかけとは何だったのか。
世界で活躍するエンジニアの先輩たちにお話を伺う「GoGlobal!」シリーズ。前回に引き続き「Lakeside Software」の創業者兼最高経営責任者(CEO)、Michael Schumacher(マイケル・シューマッハ)氏にお話を伺う。シューマッハ氏が考える「エンジニアリングで大切なもの」とは何なのか。
厳しく、理にかなった顧客の要求に鍛えられた
Lakeside Softwareの名前の通り、湖の対岸にオフィスを借りて業務を始めたシューマッハ氏。皆が悩んでいる課題を解決するため、そしてより便利にするため、とにかくソフトウェアを販売したという。最初の顧客となったGM(ゼネラルモーターズ)からはさまざまなことを学んだと同氏は語る。
シューマッハ氏 GMの要求は大変厳しいものでしたが、どれも非常に理にかなったものでした。われわれは多くのことを学べたと思います。VMwareが仮想化のテクノロジーを発表したのもこのころです。「リソースシェアという大きな問題がこれで解決できる」と感動したことを覚えています。ただ、それから10年たつ今も容量の問題はついてまわります。私は従業員に「この業界で22年間仕事をしているが、いまだに最初のころと同じ問題と格闘している」と話しています(笑)。
その後Lakeside Softwareは2012年のロンドンオフィスの開設を皮切りに、グローバル展開を開始。当時、ヨーロッパにも顧客がいたが米国とそれ以外の地域ではビジネスの質は全く違うため「とにかく現地に信用できるスタッフがいなければ、どうにもならない」と拠点展開は慎重に行ったという。
東京にオフィスを設立するために必要だった3つの取り組み
阿部川“Go”久広(以降、阿部川) 東京にオフィスを設立するか、長い期間悩まれたと聞いています。
シューマッハ氏 理由は3つあります。1つ目はローカライゼーション(地域最適化)です。これが十分でないとサービスが展開できないと考えていました。当社の製品はITエンジニアが顧客ですから、日本のエンジニアとスムーズにコミュニケーションが取れなくてはなりません。翻訳も簡単ではありませんし、1回解決すればそれで終わり、といった種類の問題でもありません。継続して対処できるような方法が必要になります。
2つ目はチームです。私が経験から学んだ、どの地域においても最も大切なことは「最初のコアチームを作ること」です。最初に3人の「ビジネスの核となる優秀なチーム」を作ることができれば、成功は間違いありません。逆にこれができないと失敗します。
3つ目は、日本市場は、世界の他の地域に比べて、非常に要求度合いが高いということです。日本の顧客は、全ての面において「サービスが卓越していること、そしてそれを実現するための努力」を求めます。私たちが扱っているようなソフトウェアは、非常に頻繁に製品の機能が変わりますから、ある一定の品質への保証や、エンジニアリングに対するサポート、カスタマーサポートなどについて、顧客の信頼を得るには時間がかかります。
この3つを全て同時に満たさないと、日本市場では成功できない。幸いなことに当社はこの3つともしっかりそろったので日本オフィスをオープンしました。
「考えが変わったので日本での仕事はやめます」ということは、決してできない
阿部川 意思決定が早いことは、ある意味で米国企業の良いところではありますが、例えばそれが、市場参入してきた途端に撤退、ということになると、信用できないという評価につながります。だからこそあなたは長い時間をかけて、日本市場への進出を準備して来られたのですね。
シューマッハ氏 はい、決して失敗は許されませんから。当社は米国の企業というよりはグローバル企業だと思っています。私たちの仕事はチームワークですし、何か一つが欠けてもビジネスの成功はあり得ません。世界中のどの地域でビジネスをするにも、その市場に対するコミットメントがないと成功しません。これはとても難しいことですが、日本市場はそれに見合うだけの非常に大きく有望なマーケットです。
阿部川 優秀なチーム構築のためには良い人材を見つける必要がありますが、どのようにしてそういった人材を採用したのですか?
シューマッハ氏 多くの従業員と会っていただきます。一人でも採用に反対する従業員がいたときは採用しません。長く勤めていただく人を雇うのですから、間違うことはできません。ですから能力などで優れていたとしても、採用に至らなかったこともあります。しかしそれでよいと思っています。特定のスキルが優れているからというだけで人を採用するのではなく「人間としてどうか」ということを見たいと思っています。
阿部川 よい人材を、的確なタイミングで見つけることは至難な業ですよね。
シューマッハ氏 おっしゃる通りです。ですが、あなたがわが社で働くことを想像してみてください。頼みの同僚たちは14時間違うタイムゾーンで仕事をしています。母国語は英語ではありません。その市場での製品の知名度は皆無で、メンバーを雇わないといけないし、サービスを売らないといけないし、システムエンジニアリングもやらなければならないし、マーケティングのプランも作らなければならない大変な仕事です。時間をかけてでも優秀な人を見つけるべきだ、ということはご理解いただけるでしょう。
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