試験のために勉強する人にとって、勉強は苦しいこと。でも……:Go AbekawaのGo Global!〜蔡樺編(後)(3/3 ページ)
私は、負けたくない――グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回も、中国出身の蔡樺さんにお話を伺う。紙モデルで培ったものづくりへの喜びをエンジニアとして開花させた蔡さんが今後日本でやってみたいことは、なんと「ケーキ作り」だった!
日中の学生の「勉強」の違い
阿部川 サイさんと同じようにがんばっている、日本の若いエンジニア読者に何かメッセージをいただけますか。
サイさん 多分、みんなそれぞれの立場でがんばっていると思います。でも、私は……負けたくない。そういう気持ちでがんばっています。
編集部 日本の学生は中学も高校も大学もあまり勉強しないので、そうゆう人たちに比べたら、負ける気はしないのではないですか。
サイさん そんなことは、ありません。中国の学生は、勉強はするけれど、何のために勉強したのかが分かっていないと思います。もし私が中学や高校のときに、「何のために勉強しますか」と聞かれたら、多分「試験のため」と答えたと思うんです。でも日本の学生は違うと思います。
インターンのとき同期だった日本人は、「エンジニアになるために勉強しました」ときっぱり言いました。そのために大学も情報関連の学科に行くなど、目標がとても明確でした。自分のために勉強しているんです。そう考えると、日本の学生の方が中国の学生より優秀だと思います。
阿部川 同期に恵まれてよかったですね。日本人でも試験のために勉強する人や、親のために勉強する人も、実際はいますからね。
サイさん 試験のために勉強する人にとって、勉強は苦しいことですよね。でもその同期にとっては、勉強は楽しいことで、それを自覚して勉強している。そうする知識の程度や幅が、広く深くなります。勉強したいから、「今日はこれ、明日はあれ」というように、自発的に勉強の範囲が広がっていっているのだと思います。
編集部 あのう、さっきから薬指の指輪が気になっていたのですが……。
サイさん 大学院を卒業してすぐに、高校時代のクラスメートと結婚しました! 主人は日本に来たばかりなので、いま日本語を勉強しています。ハードウェアが専門なので、じきに製造業やものづくりの仕事をすると思います。
阿部川 ご主人は、サイさんとご結婚するために日本に来たのですね。
サイさん はい。
一同 ほー!! (日本のエンジニアに)全然、負けてないですね(笑)!
インタビューを終えて Go's thinking aloud
美しい人だった。春のうららかな陽光を受けなくとも、その笑顔は透き通っていた。
強い人でもあった。「負けたくない」と静かに、しかし強く言った。中学、高校と勉強しかしてこなかった。その上での大学、留学、そして社会人。「ゆとり教育」とは真逆の試練。私には、「誰かに負けたくない」や「何かに負けたくない」ではなく、「自分に負けたくない」と聞こえた。
そして謙虚な人だった。「今のエンジニアとしての能力と日本語の力では、まだまだ戦えない」。自虐ではなく、冷静に実力を見定め、将来図を描いていた。
こんなときだからこと、私たちは変化を恐れず、進化し続けなければならない。ある老舗の四代目は、「変わらないために、変わり続ける」と言った。現状を変えるには、いつでも必ず、人知れぬ努力や鍛錬が必要になる。しかしそれを支えるのは、まずは己の強い意思、そして柔軟な知恵、それと支えてくれるチームワークだ。
当たり前のことを当たり前に、負けずに、謙虚にやり続ける。輝く瞳は、私たちが忘れてはいけないITの原点、仕事の王道を思い出させてくれた。
編集部から
「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(日本在住、35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOの来日などがあれば、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。
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