転職すれば、年収アップするわけではない:面接官はなぜ、現在の年収を聞くのか(1/2 ページ)
アフターコロナの年収向上戦略。最終回は、筆者が(無駄な転職をした)体験から得た教訓と学びを共有する。底辺から脱出するためにエンジニアに必要な能力とは――。
ITエンジニアの年収向上戦略、第1回は現状分析と今後を予想し、戦略的に上の商流に移る必要性を、第2回は2020年代を生きるエンジニアの年収アップに必要な「スキル」を考察しました。今回は、筆者の体験を元にした「転職で年収アップする方法」をお伝えします。
底辺をさまよい続けたくなかったら
ぼくは3回の転職経験があり、1回目は失敗しました。
失敗した最大の理由は、「業界の構造」を理解していなかったことです。新卒で入社したのがIT業界最底辺の会社だったので、「たまたま入社した会社が悪かっただけで、他の会社はマシだろう」と思い込み、大した調査もせずに衝動的に転職したのです。
その結果、2社目も業界の下位に当たる商流の会社でした。見た目の年収は少しだけ上がりましたが、本質は何も変わりません。無駄に転職回数を増やしただけになりました。
この経験をしたおかげで、ぼくはキャリア戦略の必要性を実感しました。衝動的な転職は確実に失敗すると断言できます。キャリア戦略を立てて、立てた戦略に沿って行動しなければ、ぼくの最初の転職と同様な失敗をするだけです。そのためには、目先の年収にこだわらず、生涯収入を意識することが重要です。
ぼくの場合は、生涯収入を増やすために、上位に当たる商流の会社への転職を目指すことにしました。具体的には、メーカーの社内SEを目指しました。そして、社内SEとして内定をもらうためにはテクニカルスキルだけでは足りないと感じたので、業務知識の必要性を意識し始めます。20代前半のうちから、プロジェクトに参画するときには、上流工程に意識して参加していました。作業ではなくて、積極的に仕事を取りに行ったのです。
面接官が「現職の年収」を聞く理由
転職と年収について説明します。
中途採用試験には必ず面接があります。書類選考を免除されることはあっても、面接免除はありません。そして面接でほぼ確実に聞かれる項目が「現在の年収」です。
ではなぜ現在の年収を聞かれるのでしょうか? この質問、ビジネスゲームのレベルを確認しているのです。
企業は、年収500万円の人には500万円レベルのアウトプットを期待します。ITエンジニア歴10年程度の30代なら、チームリーダー経験があるだろう、クライアントの要件もまとめてくれるだろう、と。年収800万円ならば、プロジェクトマネジメントはもちろん、組織マネジメントや若手の育成も期待します。年収を知るだけである程度のスキルレベルが見えてくるのです。
もちろん面接官は、事前に書類に目を通していたり、面接でいろいろヒアリングしたりするのですが、正直なところ、初対面からたった1時間程度話しただけで、その人の全てが理解できるわけありません。ですが、応募者の現在の年収が分かったら、そのレベルにあった質問や経験を聞くことに集中できます。年収の確認は、短い時間でミスマッチを防ぐための重要なプロセスなのです。
逆をいうと、無鉄砲に高過ぎる年収を要求するのは、自分の首を絞める行為です。年収を上げたければ、戦略的にスキルレベルを高めていく以外にありません。
まずは、現在所属する会社でできる限り年収を上げていくことです。年収が上がればビジネスゲームのレベルが上がったと見なされるので、転職でも有利に働くのです。いまいる会社で頑張った行為が無駄になることはありません。全てはつながっているのです。
いまの会社でうだつが上がらないからと、転職で全てを解決しようとするのはやめた方が懸命です。いまうだつが上がっていない人は、転職先でもきっとうだつが上がらないでしょう。
なぜならば、場所を変えてもあなたは変わっていない、ビジネスゲームのレベルが上がっていないからです。余談ですが、転職時に現在の年収を盛ると、年末調整の際にバレます。そして、本当はレベルが低いのに高いレベルの仕事を任されてしまうので、双方ストレスになります。
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