「ターミネーター」のT-800を、2022年のテクノロジーで解説しよう(前編):ダダンダンダダン!(1/3 ページ)
スピルバーグが、手塚治虫が、そして全世界の子どもたちがあのころ夢見たテクノロジーは、2022年現在どこまで実現できているのだろうか?――映画や漫画、小説、テレビドラマに登場したコンピュータやロボットを、現代のテクノロジーで徹底解説する「テクノロジー名作劇場」、第8回は「ターミネーター」だ。
「ターミネーター(TERMINATOR)」は、1984年に公開された映画を皮切りに制作されたSF映画シリーズである。
非常にたくさんの映画、テレビドラマ、アニメなどのコンテンツを生み出した作品群であるが、本稿では、本作品が対象とする歴史事実の全貌がつづられた、サラ・コナーが最初のターミネーターに会う1984年から、息子のジョン・コナーが父親のカイル・リースと会う映画シリーズのTERMINATOR1、2、3、4の4作品を対象に解説していく。
映画シリーズは、この後「ターミネーター:新起動/ジェニシス」「ターミネーター:ニュー・フェイト」が作られている。ジェニシスは1&2のパラレルワールド、ニュー・フェイトは1&2の続編(3&4&ジェニシスはなかったことになっている)だ。2で「スカイネット」誕生を阻止し、「審判の日」を回避したが、新たなAI「リージョン」が誕生し、人類の脅威になっているという設定だ。
TERMINATORは、未来世界においてAIによって支配された米国の防衛システムが人間を抹殺するために核戦争を始めたことが背景にある、いわゆるディストピア作品だ。「未来」といっても、1の制作年が1984年のため、既に想定年を過ぎてしまっている点は目をつぶっていただきたい。
「サイバーダイン社」が開発した防衛システムスカイネットが、米国防衛システムに採用され、人間を抹殺しようともくろんで戦争になり、タイムトラベル装置を使って人間のリーダー「ジョン・コナー」の母「サラ・コナー」を殺害するためにロボット兵士を送り込んでくるところから物語が始まる。
今回は、スカイネットとそれを取り巻くたくさんのロボット群、その中に使われている知能システムについて解説していく。作品の中でもスカイネットは「AIである」とされており、たくさんのエピソードがあるため、解説対象に事欠かない。
TERMINATORシリーズで欠かせないのが、俳優アーノルド・シュワルツネッガーだ。第1作、第2作ではT-800、第3作ではT-850、第4作でもT-800とされる暗殺ロボットに扮(ふん)しており、一貫して全ての作品に登場する。量産型なのだろうが、この映画にシュワちゃんは欠かせない。シュワちゃんはタミちゃんなのだ。
シュワちゃんは、あのコンピュータと同じアーキテクチャ?
最初の作品「TERMINATOR」は、映画公開と同じ1984年に向けて、未来世界から1体のロボットと1人の人間が時間を超えて転送されてくる。ロボットは「T-800型ターミネーターモデル101」(アーノルド・シュワルツネッガー)、人間はターミネーターがターミネート(terminate:殺害)したい目標の人物「サラ・コナー」を守るために来たカイル・リースである。ターミネーターはサイバーダイン社製で、「サイバーダイン システム101(ワンオーワン)」とカイルが説明する。
ロボットも人間も、どちらも素っ裸でやって来る。一応、設定では「タイムトラベル装置は生き物しか送れない」ということになっているからで、ロボットのターミネーターも、生体細胞で外皮を包んでいて外見はまるで人間である。しかし、皮(肉)を剥いでみれば金属でできた骨格が姿を表す。ならば、肉巻きよろしく何でも肉でくるんで転送すればいいのでは……とかいう疑問はここでは取り扱わないことにする。タイムトラベル装置の技術は2022年のテクノロジーでは解説が難しい。
ターミネーターはロボットであり「ものすごいものである」ことを印象付けるために、さまざまな工夫をしている。強力であること、金属でできていること、重いこと、強靭(きょうじん)で銃で撃っても壊れないこと、頭が良いこと、などなど。
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