最も愛される言語、最も報酬の高い技術が示す開発トレンドの不変と激変、Stack Overflow年次調査:Rustの人気やDockerの普及が鮮明に
Stack Overflowは2022年の年次ソフトウェア開発者調査の結果を発表した。よく使われている技術や愛されている技術、年収の高い技術、雇用や勤務形態などの最新動向が明らかになった。
Stack Exchangeが運営する開発者向けQ&Aサイト「Stack Overflow」は2022年6月22日(米国時間)、2022年の年次開発者調査「2022 Developer Survey」の結果を発表した。同調査は2022年5月11日〜6月1日に実施し、180カ国の7万3000人以上のソフトウェア開発者が回答した。
調査結果は「開発者プロフィール」「技術」「仕事」「コミュニティー」「プロフェッショナル開発者」のカテゴリーにまとまっている。
コーディングの学習方法が変化(開発者プロフィール)
開発者プロフィールではコーディングの学習方法に変化が現れた。
動画やブログ、フォーラムなどのオンラインリソースでコーディングを学んだ回答者の割合が、2021年調査の59.53%から、今回70.91%に上昇した。
45歳以上の回答者は書籍から学んだ人が最も多く、若い回答者はオンラインで学んでいる。18歳未満の回答者はオンラインリソースに最も依存しており、オンラインのコースや認定資格講座で学習した人の割合が最も高かった。
Dockerの普及度に注目(技術)
2021年調査では、「その他のツール」のカテゴリーの中で、「Git」が開発者の基本的なツールであることが確認できた。
2022年調査では同じカテゴリーにおいて、プロフェッショナル開発者の間での「Docker」の回答率が、2021年の55.06%から68.57%に上昇した。Dockerはプロ開発者にとって、Gitと同様の基本的なツールになりつつあるようだ。
「その他のツール」カテゴリーでコーディング学習者とプロ開発者の回答率を比べると、コーディング学習者は3Dツールを使用する傾向が高い。例えば、「Unity 3D」の回答率は、それぞれ22.53%対8.19%、「Unreal Engine」では8.75%対2.99%となっている。
最も愛されている言語は?(技術)
今回の調査の結果、「Rust」は、7年連続で最も愛されている言語となった。開発者の87%が使い続けたいと回答している。
またRustは、最も求められている言語でもある。これは、当該の言語や技術を使った開発を行っていないが、今後行いたいと答えた回答者の割合が17.6%と最も高かったことを意味する。Pythonが17.59%、TypeScriptが17.03%とわずかな差で続いている
最も愛されているWebフレームワーク(技術)
「Phoenix」が「Svelte」を抜き、最も愛されているWebフレームワークの座を獲得した。これに対し、「Angular.js」は3年連続で、最も嫌われているWebフレームワークとなった。
また、「React.js」は5年連続で、最も求められているWebフレームワークとなった。
最も愛されているその他のツール(技術)
Dockerと「Kubernetes」は、最も愛されているその他のツール、および最も求められているその他のツールのいずれのカテゴリーにおいても、それぞれ首位と2位を占めた。
最も求められているその他のツールのカテゴリーでは、Dockerの回答率は2021年調査の29.7%から37.08%に増加している。Dockerを使い始めたいという意欲は衰えていないようだ。
最も報酬が高いのは?(技術)
7つの技術カテゴリーそれぞれについて、年収の中央値が高い上位3つの技術を次に示す。
・プログラミング、スクリプト、マークアップ言語
Clojure、Erlang、F#
・データベース
DynamoDB、Couchbase、Cassandra
・プラットフォーム
コロケーション、Amazon Web Services(AWS)、IBM Cloud(またはWatson)
・Webフレームワーク
Phoenix、Ruby on Rails、Play Framework
・その他のフレームワークとライブラリ
Apache Spark、Apache Kafka、Hadoop
・その他のツール
Chef、Pulumi、Terraform
・統合開発環境
TextMate、Emacs、RubyMine
全ての技術の中で年収の中央値が最も高い技術は、Chef(12万ドル)だった。
フルタイムの雇用者が増えた(仕事)
フルタイム雇用者は全回答者の68.61%となり、2021年比で4.3ポイント上昇した。プロ開発者について見ると、独立請負業者やフリーランサー、自営業が16.6%を占め、2021年比で5.39ポイント増となった。なお、2022年調査では、この質問は複数回答が可能になった。
テレワークは根付いたのか(仕事)
全回答者の約85%が、自社が少なくとも部分的にテレワークを採用していると答えている。
小規模企業は完全なオフィス勤務を採用しているところが多く、従業員2〜19人の企業では20%を超えている。
従業員1万人以上の大企業では、ハイブリッドワークを採用している割合が最も高い。
調べものに費やす時間が生産性に与える影響は?(プロフェッショナル開発者)
全回答者の62%が、問題の答えや解決策を探すのに1日30分以上費やしている。1日1時間以上費やしている回答者も25%に上る。
50人の開発者から成るチームでは、答えや解決策を探すのに費やす時間は、チーム全体で1週間に333〜651時間の損失になる。
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