元任天堂開発者が伝授、3つのモノサシを使ってアイデアの「いい/わるい」を計測する:それは、発想か着想か(1/4 ページ)
相対性理論、印刷、iPhone――世の中を変える発明は、全て優れたアイデアから生まれた。では優れたアイデアとは何なのだろうか。あなたのそのアイデアは、いいアイデアなのか、そうではないアイデアなのか、「アイデアの測り方」と「アイデアの見極め方」を、WiiやSwitchの開発者が伝授する。
いいアイデアとは何でしょう?
これまでは、「シンプルで分かりやすい」「実現可能性が高い」「費用対効果がある」「新規性や意外性がある」などを基準として、アイデアの「いい/わるい」を評価してきたと思います。こういった基準は、製品やサービスのアイデアを判断する際に確かに役に立ちます。
では、新たな領域の開拓を目指すプロジェクトやスタートアップ企業のビジネスなど、まだジャンルも確立されていないようなアイデアはどうでしょう。2006年の人から見たAppleのiPhone、2022年現在でいうとMetaのメタバースでしょうか。その時点の慣習からすると、非常識、非合理、実現困難に思えるアイデアの「いい/わるい」はどう判断するのでしょうか?
ここで自己紹介をします。私、杉山慎は、翻訳を含めた自然言語処理の応用を得意とする「八楽」で、新規事業プロダクトマネジャーをしています。以前は「任天堂」でWiiからSwitchまで家庭用ゲーム機とその周辺機器の開発に従事していました。Wiiリモコンの開発では、試作研究段階から製造・修理まで全体にわたり携わりました。
現在は、フリーランスのハードウェア、ソフトウェアのエンジニアでもあります。技術支援として参画した「Atmoph」でデジタル窓「AtmophWindow2」の開発に携わったり、「中西金属工業」の企業内起業に参画し、2019年グッドデザイン賞のBEST100を受賞した冷凍ゴミ箱「Clean Box」の試作開発に携わったりしました。
任天堂やAtmophなどでさまざまな挑戦的なプロジェクトに参加する機会に恵まれ、玉石混交な無数のアイデアに遭遇する経験をして、画期的と評価され成果を残すアイデアには幾つかの共通点があるように思えてきました。それを深く考える内に、成果が出る前の段階でもいいアイデアであるか否か、見極める方法がある程度身に付いたと自負しています。
本連載の目的は、この「アイデアの見極め方」の共有です。冒頭で示したアイデアを評価する際のこれまでの視点は残しながら、新たな視点を追加していきます。
内容は、経験則を整理したノウハウ集のようなものです。若手エンジニアやこれからエンジニアを目指す方、エンジニア以外のさまざまな職種の方にも役に立つと思います。
iPhoneやWiiなど数億人規模に影響のある大きなアイデアから、製品やサービスなど新規プロジェクトになるようなアイデア、チーム内の改善などの小さなアイデアまで、幅広い範囲のアイデアに適用できます。
本連載が、ニュースなどで製品サービスのリリース情報を目にした際の一助となることはもちろん、エンジニアとして先駆的なプロジェクトに参画する機会の判断材料、自分で挑戦的なアイデアを考える際の手掛かりとしてお役に立てれば幸いです。
アイデアを測るツール
最初にアイデアを測るためのツールを紹介します。
マインドマップやマンダラート、KJ法などの「考える」ためのツールをペンやノートだとすると、「測る」ためのツールはモノサシです。モノサシがペンで書いた線のサイズを測ることや書くときの補助となることと同様に、アイデアを測るツールは、アイデアの立ち位置を測り、アイデアを考える補助となります。
アイデアを測るモノサシは、費用対効果、実現可能性など数多くあります。ここでは、アイデアを見極めるときに便利なモノサシを紹介します。
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