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元任天堂開発者が解説 「反対」のテクニックを使ってアイデアの質を高めるリンゴの反対はダルマ?(1/2 ページ)

新しい価値ある画期的なアイデアは、一見関係のなさそうな事柄を結び付けることで生まれる。その手順は? やり方は?――。WiiやSwitchの開発者が伝授する「アイデアの考え方」、今回は反対のテクニックを使って、イノベーションにつながるアイデアの考え方を学びます。

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 アイデアをいつもと異なる視点で捉える本連載、前回は、箱法というツールを使って、「連想」からアイデアの量を増やす方法を紹介しました。

 今回は「反対」のテクニックを使って、アイデアの質を高めていきます。

 反対は、反対の属性を持つ単語を思い浮かべる思考の技術です。「熱い」の反対は「冷たい」、「善」の反対は「悪」など、対義語も反対の一部です。とても基本的なことなので、日常的な単語ならば反対を容易に思い浮かべられると思うかもしれません。

 では、「リンゴ」の反対、または「コンピュータ」の反対は何でしょう? 簡単に答えが出てこなかったり、正解かどうかの自信がなかったり、少し難しさを感じたのではないでしょうか。

 本記事では、反対の定義や、言葉によって反対を考える難しさの違いがある仕組み、反対の考え方を深く掘り下げて説明します。

反対とは何か

 反対は、単語の対義語を新たに考えるような行為であり、連想の一部でもあります。反対について、対義語との違いから、その特徴を説明していきます。

 記事の冒頭で、暑い⇔寒い、過去⇔未来のように対義語から反対を考えやすい単語と、リンゴやコンピュータのように対義語が考えにくい言葉があると説明しました。

 この差は何が原因でしょう? ここに反対の特徴が隠れています。


反対を考えやすい言葉と、反対を考えにくい言葉がある

 反対の考えやすさの違いは、ずばり、単語の抽象度の違いです。

 反対を考えるのには、抽象的な言葉は簡単で具体的な言葉は難しい、という特徴があります。対義語は反対の一部で、対義語が明確な言葉は抽象的な形容詞や名詞です。

 例えば「新しい」という形容詞、「未来」という名詞も具体的な物を表さない抽象的な概念です。そのため、それぞれ「古い」「過去」という明確な対義語があります。

 具体的な言葉である「リンゴ」「ゴリラ」「ラッパ」などは、明確な対義語がないため反対を考えることは難しいと思います。

 また、反対の特徴として、対義語のように1対1になっているわけではなく、1つの単語に対して反対になる単語が複数ある、ということが挙げられます。

 例えば、「おじさん」の対義語は「おばさん」です。これも反対ですが、別の反対としては「女子高生」があります。おばさんより女子高生の方がおじさんの反対度が高いように感じるのではないでしょうか?

 おじさんの属性や抽象概念は、「男、中年、労働者」などです。それぞれの反対は、「男⇔女」「中年⇔若年」「労働者⇔学生」です。「女、若年、学生」で合成連想をした結果の一つが「女子高生」です(複数の概念から単語を思い浮かべる合成連想については、前回説明しましたので参照ください)。

 おじさんの反対は属性の選択次第で他にもたくさんあります。「ギャル」「おばあちゃん」「青年」などの反対も該当しそうです。このように「反対は1つの単語に対して複数ある」ということになります。また、「特徴的な属性の対義になる要素の数が多いほど反対度が高い」という性質もあります。

 さて改めて、アイデアと反対の関係の説明に移ります。

 前回の連想についての記事ではアイデアの量の話をしましたが、今回の反対はアイデアの質についての話です。アイデアの質といえば、新しい価値ある画期的なアイデアの実現としてイノベーションという概念があります。イノベーション研究の第一人者であるクレイトン・クリステンセンはイノベーションを以下のように提唱しています。

イノベーションとは、一見、関係のなさそうな事柄を結び付けることである。
『イノベーションのDNA─破壊的イノベータの5つのスキル』(C. クリステンセン他著、翔泳社)

 「結び付ける」は、前回示したアイデアの定義「既存の要素の組み合わせ」の「組み合わせ」と同義です。イノベーションをアイデアの質の高さで考えると「一見、関係なさそうな」が重要だということが分かります。

 この「一見、関係なさそうな」ことを考えるのには反対が役に立ちます。イノベーションの具体例で考えてみましょう。

 近年の有名なイノベーションといえばスマートフォンです。スマートフォン登場以前の携帯電話は固定位置のボタンを押すという決まった操作でした。それに対し、スマートフォンは固定位置ボタンの反対である自由にUIを配置できるタッチパネルを有することで、フリックやピンチなど多彩な操作ができるようになりました。

 そもそもスマートフォンの本質としては、「難しい知識が必要で大きな場所をとる」コンピュータによるインターネットを、その反対の「簡単かつ手のひらサイズ」で実現したこと、というのもあります。

 筆者が開発に関わったイノベーションの例では、「任天堂」が2006年に発売した家庭用ゲーム機「Wii(ウィー)」があります。固定して持つゲームパッドが反対に動かして操作するリモコンになったことで、部屋で1人でするゲームが反対のリビングでみんなでするゲームに変わりました。

 このように、イノベーションは幾つもの反対から成っています。アイデアの質には反対がとても重要というわけです。

 では、どうやって反対を考えるのでしょうか?

 おじさんの反対を考える例で少し手順を説明しましたが、論理的に組み立てて考えることができます。改めて反対を考える手順の説明をしていきます。手順の概要は以下の通りです。

  1. 連想で分解する
  2. 特徴度で並べ替える
  3. 対義語、隣接語を考える
  4. 連想で合成する

反対を考える手順

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