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時間を厳守すること、誠実であること、清潔に仕事をすること、高い品質を維持すること 私を魅了した日本の価値観Go AbekawaのGo Global!〜Shoaib Shaikh(後)(1/2 ページ)

グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回もソフトウェアエンジニアのShoaib Shaikh(ショエブ・シェーク)さんにお話を伺う。大学に入るまで「日本で働くなんて考えたこともなかった」という同氏は、どういういきさつで日本企業に就職したのか。

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 国境を越えて活躍するエンジニアにお話を伺う「Go Global!」シリーズ。前回に引き続き、ソフトウェアエンジニアのShoaib Shaikh(ショエブ・シェーク)さんにお話を伺った。日本で働くことを決定付けた「2人の恩師」とは。聞き手は、アップルやディズニーなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広。

「品質と技術の国」の日本へ

阿部川 “Go”久広(以降、阿部川) PICT(Pune Institute of Computer Technology、プネ大学)卒業後はすぐにIT業界で働き始めたのですか。

Shoaib Shaikh(ショエブ・シェーク、以降、ショエブさん) 最初の仕事は学校での講師でした。イガットプリにあるKDPという大学で、7カ月くらいエレクトロニクスデバイスについて教えました。

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ショエブさん

阿部川 学生に教えるという経験は、ビジネスの現場へ入るためのよい準備期間になったでしょう。その後、NTT Data Global Delivery Servicesに入社されます。どういういきさつで応募されたのですか

ショエブさん NTT Data Global Delivery Servicesから私にアプローチがあったのです。PICTには多くの企業が視察に訪れ、ジョブフェア的な催しでは、企業が成績の良い学生と面談します。NTT Data Global Delivery Servicesもその企業の一つで、私とのインタビューを申し入れてくれたので、在学中に受けました。その後しばらくして「雇用したい」と連絡がきたのです。

阿部川 インタビューがきっかけになったのですね。NTT Data Global Delivery Servicesに入社したときにはもう日本語で仕事されていたのですか。

ショエブさん とんでもない! 最初は全く日本語が分からなかったので、社内の「Japan Language Center」という組織で5カ月間、臼井さんと渡部さんという2人の先生から日本語を学びました。会社員なのに仕事はせず、学生のように朝から晩まで勉強しました。ずっと勉強です。宿題も出ました(笑)。講義もありますし、ロールプレイもしました。そのおかげでN3の日本語能力試験をパスできました。


編集中村
編集 中村

 日本語能力試験は認定レベルが5段階に分かれています。平仮名や片仮名といった基本的な日本語を理解できる「N5」から新聞の論説や評論といった難易度の高い文章を理解できる「N1」までがあります。ちなみにショエブさんは現在「N2」レベルとのことです。

(参考リンク:日本語能力試験


 日本語の特訓が終わったら、技術に関するトレーニングへと移りました。Javaをメインとした2カ月のトレーニングがあり、その後プロジェクトチームへ配属されました。

阿部川 なぜ日本の企業に就職したのですか。日本が好きだったなど理由があるのですか。

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阿部川 “Go”久広

ショエブさん それにお答えするためには、少し話を戻さなければなりません。2013年のことです。多くの企業がPICTを訪れた話はしましたね。その中の1社が楽天で、プレゼンテーションを見せてもらいました。会社概要や日本の説明、楽天のビジネス展開などを聞き、インド出身者が日本で働けることを知りました。実はそれまで、日本のこともインド以外で働くことも考えたことがありませんでした。

 NTT Data Global Delivery Servicesに入社した当初も、日本語を積極的に学びたいとは思っていませんでした。日本語は難しいですから。しかし臼井先生と渡部先生がその意識を変えてくれたのです。彼らは言語そのものだけではなく、日本の文化や日本的価値観を教えてくれました。時間を厳守すること、誠実であること、清潔に仕事をすること、高い品質を維持すること――細かいことかもしれませんが、非常に大切な姿勢を先生たちは教えてくれたのです。

阿部川 小さいころから良い先生に恵まれていますね。

ショエブさん そうですね。人には恵まれています。最初のプロジェクトで一緒に働いた日本のエンジニアからも多くのことを学びました。働く人たちの文化やどのように時間を使って仕事をしているのか、毎日の仕事からどうやって成果を効果的に生み出しているか。そうやって少しずつ、日本や日本の文化を好きになっていきました。

 この経験はその後、大変役に立ちました。顧客の要求に応えるのは大変でしたが、なぜそのような要求が来るのか背景が分かるようになり、安心して仕事をできるようになったからです。そうなれば、もう私にとって日本以外で仕事をすることは考えられませんでした。私にとって日本とは、品質と技術です。私が日本で生活するモチベーションは、この2つです。


編集中村
編集 中村

 なぜその要求をするのか分からないという経験はエンジニアなら誰しもあるのではないでしょうか。個人的にはネガティブな印象を持つことが多いのですが、ショエブさんはとてもポジティブに捉えていますね。思いや背景を理解できるなら大変でもしっかり成果が出せる。まさにエンジニアのかがみともいえる考え方ですね。


阿部川 そのようにおっしゃっていただき、大変光栄です。ところで、“時間厳守”や“誠実さ”といった日本の価値観を学んだということですが、でもインドにもそれらはありますよね。

ショエブさん もちろんです。インド人もとても丁寧ですよ(笑)。ただ、国の基本的な価値観は、その国がそのとき置かれている状況に大きく影響を受けると思います。インドは発展途上国ですから、そこでの価値観や問題などは、必ずしも先進国と同じではないと考えます。

 例えば先進国では仕事、役割などはあらかじめ決まっていて簡単には変わりませんが、発展途上国ではそうとは限りません。「丁寧であること」は日本では必ず重視される部分だと思いますが、インドでは必ずしもそうではないということです。このような違いは私にとっては日本の魅力だと思います。この違いがあるからこそ、日本は世界から際立った位置に立っているのだと思います。自分もそのようになりたいと思っています。

阿部川 ありがとうございます。丁寧であることや、おっしゃっていただいた資質は日本の誇りだと思います。

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