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越境学習者は2度死ぬ? 社外の学びを社内に浸透させるには仕事が「つまんない」ままでいいの?(98)(3/3 ページ)

勉強会やセミナーなど、社外での学びを社内で共有したときに、熱量の差に愕然(がくぜん)としたことはありませんか?

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社外での学びを社内に適用するために大切な4つのこと

1 変化は少しずつ

 1つ目は、急な変化を避けること。つまり、少しずつ変えることです。

 人は、いままで経験がないことを急に言われると、「大丈夫なのかな」と不安に思ったり、恐れを抱いたりするものです。変化って、怖いんですよね。

 でも社外で新たなことを学んだ直後は、熱量が高くなっているためについ、「これからは○○が大切なんだ!」「これが最先端なんだ!」みたいに熱く語ってしまいがちです。力ずくでやってしまうと周囲はビックリして、最悪の場合、敬遠され孤立してしまいます。

 もし、社外で学んだ新たなことを社内で実践するなら、小さい変化から始めると良いのではないかなぁと思います。

 例えば、新たなITツールを導入するとき、いきなり変えようとすると反発が起きます。それを防ぐためには、まず「最近は、こんなツールがはやっているみたいだよ」と周囲に話してみたり、関連するURLをグループウェアやチャットにさりげなく共有したりしながら、少しずつ情報に触れてもらう。関心を持ってもらう。そんな作戦がいいんじゃないかな。

 また、関心がない人に取り組んでもらおうとすると、拒否反応を示されることが多いもの。まずは、社内で興味を持ってもらえそうな人から当たっていくのもいいかもしれませんね。

2 分かりやすい言葉を使う

 2つ目は、分かりやすい言葉を使うことです。

 ビジネスシーン、特にIT業界では。DX(デジタルトランスフォーメーション:ITによるビジネス変革)やCX(カスタマーエクスペリエンス:企業が提供する商品やサービスによる顧客体験)をはじめ、横文字を使う機会が多いですよね。しかし、分からない言葉に「何それ?」と抵抗感を抱く人も多くいます。

 学んできたことを社内に広げるためには、できるだけ分かりやすい言葉を使っていくことも大切ではないかと思います。

 例えばDX……は、最近ではさすがに聞き慣れた言葉になってきましたが、CXみたいな聞きなれない言葉をいきなり使うと「は?」となってしまいます。それならば、「顧客がサービスを使ったときの体験」のように、日本語で分かりやすく伝える方がいいでしょう。

3 肯定的な言葉を使う

 3つ目は、肯定的な言葉を使うことを挙げてみます。

 社内で新しい価値観や新しい取り組みを広めようと思うとき、最初は思い通りにならないことも多いものです。そのため「何であいつらは分かってくれないんだ!」のように、ネガティブな言葉で批判したくなることもあるでしょう。場合によっては「うちの○○はダメだ」とSNSに書き込みたくなるケースもあるかもしれません。

 でも、そういったネガティブな発言や書き込みを社内の人が見ている場合もあります。そういった「場外での不要な衝突」はできれば避けたいものです。

 ちなみに、ボクには以前、社内の不満をブログに書いて、それを同僚に読まれてしまい、人間関係的に取り返しがつかなくなったことがあります(苦笑)。

 越境学習的に考えると、葛藤は悪いことではありませんし、学びのプロセスでもあるので、「まだまだ、伝わっていないみたい。もっと伝え方を工夫していかないと!」「現段階ではなかなか伝わらないけれど、仕事がやりやすくなるようにこれからも取り組んでいきたいです!」のように、肯定的な言葉を使って発信していくといいかもしれませんね。

4 仕事はちゃんとやる(社内の信頼を得る)

 4つ目は、まずはいまの仕事をきちんとやることです。

 社外での学びを社内に生かそうと思うとき、何だかんだいって「社内における信頼関係」が最も重要なんじゃないかなぁと思います。というのも、社内における信頼関係があると「○○さんが言うことなら……」と、周囲の人が受け入れてくれるじゃないですか。

 普段の業務の中で、「これだからうちの会社は……」と不満ばかり口にしていませんか? そのはけ口を社外にもとめていませんか? 社内でやるべきことをやっていますか?

 その思いを実現するためにも、取りあえず目の前の仕事をちゃんとやって、周囲から信頼されることも大切だと思います。

大きなケガをせずに、楽しく実践するために

 社外で得た知見や学びを社内に浸透させるために大切なことを見てきました。

 社内をより良くするために、社外へ飛び出して、新たな価値観に触れたり学んだりすることはとても大切だと思います。特に人生100年時代といわれるいま、今後のキャリア形成にもなりますよね。良い経験になります。社外での、新たな人のつながりもできます。

 一方で、新たな学びを社内に浸透させるときには、さまざまな葛藤や障害が起きがちです。できるだけ大きなケガをせずに、楽しく実践できるといいですね。

筆者プロフィール

竹内義晴

しごとのみらい理事長 竹内義晴

「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。

著書「Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント(翔泳社)」「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。


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