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ブロックチェーン技術のあらましや今後の展望を5分で学ぼうビジネスパーソンのためのIT用語基礎解説

IT用語の基礎の基礎を、初学者や非エンジニアにも分かりやすく解説する本連載、第10回は「ブロックチェーン」です。ITエンジニアの学習、エンジニアと協業する業務部門の仲間や経営層への解説にご活用ください。

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1 ブロックチェーンとは

 ブロックチェーンとは、ネットワーク上のコンピュータ同士を接続して取引履歴を分散的に記録し、データを鎖のように連結して保管する技術のことです。

 一般的な情報システムでは中央集権型の方式でデータを管理しますが、ブロックチェーンではネットワークを構成するコンピュータに同じデータを分散して共有し、データの一貫性を確保します。このような方式を「分散型台帳技術」といいます。


図1 一元管理と分散管理 出典:進むブロックチェーンの活用(総務省)

2 ブロックチェーンの誕生

 ブロックチェーンは2008年にsatoshi nakamotoという匿名の人物(またはグループ)が公開した「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」という論文の中で、仮想通貨ビットコインを支える分散型台帳技術として発表したことが起源とされています。

3 ブロックチェーンの種類

 ブロックチェーンには「パブリック型」「コンソーシアム型」「プライベート型」といった種類があります。

パブリック型

 パブリック型は管理者が不在で、誰でも許可なく取引に参加できます。取引情報をチェックして承認する「マイニング」という処理によって、取引情報の正当性を保証します。

プライベート型

 プライベート型には管理者が存在し、管理者によって許可されたユーザーのみが参加できます。データの透明性は損なわれますが、悪意を持った参加者を除外することができ、秘匿性が高いデータを扱うことが可能です。また、管理者が取引を承認する仕組みであるため、一般的にはマイニングの手続きが不要です。このような特徴から、パブリック型のブロックチェーンと比較すると取引の承認にかかるスピードは速いといえます。

コンソーシアム型

 コンソーシアム型は、参加者が限定される点などプライベート型と同じ特徴を持っていますが、管理者が複数であるという点に違いがあります。複数の管理者によって合意形成されるため、プライベート型と比較するとデータの透明性や信頼性は高いといえます。

4 ブロックチェーンのメリット/デメリット

 ブロックチェーンの種類によりメリットとデメリットは異なってきますが、ここでは最も一般的なパブリック型のブロックチェーンについて、従来の中央集権型のデータベースと比較した際のメリットとデメリットを述べます。

4.1 ブロックチェーンのメリット

4.1.1 データの改ざんに対する耐性が高い

 ブロックチェーンでは、取引の履歴を「ブロック」という単位で記録し、ブロック同士を鎖のようにつなげて保管します。ブロックには、取引の記録やナンス(※1)、1つ前に生成されたブロックの情報を含んだハッシュ値(※2)などが含まれます。

 例えば、1つのブロックを改ざんしようとした場合、ブロックの変更によりハッシュ値が変更されるため、後続のブロックのハッシュ値も併せて変更する必要があります。ブロックはネットワークを構成する各ノードに保存されているため、それらを全て改ざんすることは極めて困難です。

※1 ナンス:Number used onceの略語で、ブロックチェーン上に新しいブロックを追加する際に用いられる数値のこと。ハッシュ値の算出に利用される
※2 ハッシュ値:元となるデータから特定のアルゴリズムによって生成される固定長の値のこと。データが変更されると生成される値が変わることから、データの改ざんチェックなどに利用される


図2 ブロックのデータ構成イメージ

4.1.2 データの透明性と公平性が高い

 ブロックチェーンでは全ての取引がネットワークを構成する参加者に公開されます。これにより、ブロックチェーンを構成する全ての参加者が取引履歴を閲覧できるため、不正な取引を防止できます。このように、データの高い透明性を活用し、サプライチェーン(※3)が抱える課題の解決にも役立っています。

※3 サプライチェーン:商品の原材料調達から製造や在庫管理、物流、販売、消費までの一連の流れを指す用語のこと

4.2 ブロックチェーンのデメリット

4.2.1 データを削除できない

 ブロックチェーンはその仕組み上データを削除できません。個人情報のような本人の要求により削除する必要があるデータであっても、一度ブロックチェーンに記録されたデータは削除できません。メリットに挙げた改ざんへの耐性の高さがデメリットにもなり得ます。

 また、データを削除できないため、ブロックチェーンの活用が進めば進むほど取引データが巨大化し、通信量やデータ量が増大します。

4.2.2 処理に時間がかかる

 ブロックチェーンはネットワークを構成するコンピュータ同士でそれぞれデータが正しいことを検証します。このような合意形成の仕組みを採用していることから、データが正しいことを証明するために時間がかかり、中央集権型の仕組みと比較すると処理に時間がかかるといえます。なお、近年ではこの処理速度の問題を解決するためにさまざまなコンセンサスアルゴリズム(※4)が開発されています。

※4 コンセンサスアルゴリズム:ブロックチェーンにおいてブロックを追加する際の合意形成アルゴリズムのこと

5 ブロックチェーンの活用事例と今後の展望

 ブロックチェーンはもともと仮想通貨を動作させるための技術として開発されたことから、仮想通貨のみに活用されるものと思われがちですが、近年は金融分野以外でも活用されています。


図3 金融以外の分野におけるブロックチェーンの応用事例 出典:非金融分野におけるブロックチェーンの活用動向調査(独立行政法人 情報処理推進機構)

 このようにブロックチェーンはさまざまな分野で活用できる技術であり、それぞれの市場は非常に大きな規模があります。ブロックチェーンには産業の構造そのものへ影響を与える可能性があるといわれており、新しいビジネスを生み出す期待がもたれていますが、デメリットに挙げたようなスケーラビリティの課題が大きな障壁となっています。いかにしてスケーラビリティの課題を克服するかが、ブロックチェーンの活用を促進させるポイントになるといえるでしょう。

古閑俊廣

BFT インフラエンジニア

主に金融系、公共系情報システムの設計、構築、運用、チームマネジメントを経験。

現在はこれまでのエンジニア経験を生かし、ITインフラ教育サービス「BFT道場」を運営。

「現場で使える技術」をテーマに、インフラエンジニアの育成に力を注いでいる。

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