生成AIは今後7年間で4500億ドルの利益を生む可能性、そのための条件は? ABI Researchが予測:「生成AIが今後至るところに展開される」
ABI Researchは、生成AIが今後7年間で、12の異なる業種で4500億ドル以上の利益をもたらすとの予測を発表した。
ABI Researchは2023年7月27日(米国時間)、生成AIが今後7年間で、12の異なる業種で4500億ドル以上の利益をもたらすとの予測を発表した。
コンテンツに重きを置く業種では混乱が発生
生成AIはすでに多業種の市場全体で数百の使用事例がある。しかし、ABI Researchによると精度や性能、企業への対応は、使用事例が異なる3つの波がやってくることを意味するという。ABI Researchのシニアアナリストであるリース・ヘイデン氏は「マーケティングや教育のようなコンテンツに重きを置く分野では、導入の第1波で、すでにさまざまな職務で混乱が起きている」と語る。
ヘイデン氏は「現在の採用の波は革命的なものではない。むしろ、生成系のツールを提供することで従業員の生産性を向上させるという、内部的なものに重きが置かれるだろう」と述べる。
また、ヘイデン氏は次のように語っている。「生成AIは、外部サービスにより大きな影響を与えるだろう。生成AIがより成熟し、信頼性が高まるにつれて、企業はAIを中心とした製品やサービスを構築できるようになる。ヘルスケアや法務のようなサービス産業は、根幹となるサービスを構築するために、ますます生成AIを活用するようになるだろう。例えば、ヘルスケア企業は生成AIツールを活用して、患者の健康傾向を管理したり、ヘルスケアに関する質問に答えるチャットボットを構築したりすることができる」
活用次第で生成AIがビジネスでの分断を促進する可能性も
一方で、ヘイデン氏は生成AIに関して警鐘を鳴らしている。
「生成AIが企業に最も大きな価値を生み出すのは、製造業や物流関係の業種が、生成AIを活用してプロセスを自動化、最適化することだ。これは大きなインパクトをもたらすが、それが潜在的に危険な結果を生み出す可能性がある」と言う。
企業は生成AIに対して明確な戦略がない場合が多いという。個々の事業部門は現在、業務を補強するために生成AIの導入方法を検討している。こうした独断での導入は、ビジネスにおけるプロセスでの分断を促進すると同社は予測している。
このような事態を避けるために、従業員の利用方法やガバナンス、法的アプローチ、期待されるビジネス成果など、生成AIの利用に関する中心的な企業戦略とともに、企業展開に対して慎重なアプローチをとる必要があるという。
生成AIは活用され始めたばかり
企業における生成AIは活用され始めたばかりだ。一部の多国籍企業はベンダーと強固なパートナーシップを築き始めており、新興企業はコンテンツ生成プロセスを強化するためのツールを迅速に活用している。しかしながら、市場の大半はまだユースケースや導入オプションを模索している段階だ。
ヘイデン氏は「生成AIの市場がどのように発展していくのか、特に今後2年間で生成AIに対して世界的な規制が施行されるのかが注目される。しかし、今のところ、すでに特定されているユースケースと提供される潜在的な価値を考えると、生成AIが今後7年間で至るところに展開され、ほとんどのビジネスプロセスに統合されると予想する」とヘイデン氏は結論付けている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 企業に価値をもたらすジェネレーティブAIの4つのユースケース
AIのイノベーションは加速しており、さまざまな業界でジェネレーティブAI(生成AI)のユースケースを数多く生み出している。ジェネレーティブAIは、特定のモノについて可能なさまざまな設計を探索し、正しい、最適な組み合わせを見つけられる。本稿では、企業に価値をもたらす4つのユースケースを紹介する。 - 「やりたいことを言語化する」以外で、生成AI活用に必要なスキルとは 経済産業省が資料を公開
経済産業省は「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方」を取りまとめた。生成AIをDX推進に利用するためには「全社的なビジネスプロセスや組織の変革につなげることが重要だ」としている。 - 8割が「生成AIは間違いなく自社で活用されるが、まだ先のこと」と考えている テラデータ
日本テラデータは、全世界の企業経営幹部を対象に実施した生成AIの導入や活用に関する調査の結果を発表した。9割が生成AIによる恩恵と可能性を理解しているものの、6割以上が生成AIによる成果に疑念を抱いていた。