クラウドやIaCは「エンジニアのたしなみ」 デンソーがデジタル人材育成を内製化する理由:リスキリングも、ある意味で“開発”(1/3 ページ)
業界、業態を問わず、さまざまな企業が人材不足という課題に頭を悩ませている。再教育(リスキリング)で社内の人材をデジタル人材にする取り組みが注目されているが、具体的にどのように進めればいいか分からない企業も多いだろう。本稿は、「Cloud Operator Days Tokyo 2023」のプレイベントで発表されたデンソーの事例から、その方法を探る。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に向けてさまざまな企業が多様な取り組みを進めている。そうした中で課題になりがちなのが「デジタル人材の不足」だ。市場の変化にITシステムを追従させようと思っても、社内にデジタル人材がいない、もしくは既存システムの保守で精いっぱいで「新しい取り組みに着手できない」といったことが起きている。だからといって、外注しようとしても、従来の方式では素早い市場の変化に置いて行かれる可能性もある。
そこで注目されているのが、社内人材の再教育(リスキリング)だ。社内の業務を熟知した人材がデジタル人材になることで、人材不足の解消だけでなく、効率的、効果的にDXを進められるようになるというメリットがある。ただ問題は“どうやって育成するか”だ。
国内有数の自動車部品メーカーであるデンソーは、リスキングを通じて「IT内製化」に向けた体制づくりに取り組み、成果を挙げている企業だ。同社は「DENSO cloud & agile dojo」という自社開発の研修プログラムを開発。それを通じて、クラウド活用やWebサービス開発の実践的なスキルを、開発未経験者を含む全社員に身に付けさせる取り組みを進めている。
このプログラムは、どのような意図で作られ、どのように実施されているのか。デンソーの成迫剛志氏(研究開発センター執行幹部 クラウドサービス開発部長)と、の小浜 明日香氏(デジタルイノベーション室 アジャイル開発課)が、2023年7月20日に行われた「Cloud Operator Days Tokyo 2023」のプレイベントにおいて講演を行った。
実は日本の製造業と相性が良い「アジャイル開発」
デンソーがクラウド活用やWebサービス開発の内製化に向けた取り組みを本格化させたのは、新横浜にあるイノベーションラボ内に「デジタルイノベーション室」を設立した2017年からだ。デンソー入社後半年で一からこの組織を新設した成迫氏は、同室の設立意図について「日本の伝統的な製造業、大企業のやり方とは180度異なる、シリコンバレーのスタートアップのようなやり方で、クラウドサービスの開発から運用までを一気通貫に行える組織を作りたかった」と話す。
こうした組織の実現に当たって、必要だったのが、デザイン思考に基づいた「サービスデザインメソッド」、オープンソースソフトウェア(OSS)を含む「クラウドネイティブなテクノロジーの活用スキル」、そしてアジャイル開発の方法論に基づいた「チームによる内製化の体制」だった。
成迫氏は、日本の伝統的製造業が長く実践してきた生産方式として「トヨタ生産方式」(Toyota Production System、TPS)を挙げ、その理念には「アジャイル開発に通じるところが多い」と指摘している。
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