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Excel バージョン2308に追加されたはずの“新機能[Ctrl]+[Shift]+[V]が使えない”のはなぜ?その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(241)

Microsoftが1年以上前に予告し、Insiderプレビュービルドで開発を進めてきたExcelの[Ctrl]+[Shift]+[V]キーボードショートカットが、2023年8月末、Excel バージョン2308に新機能としてようやく追加されました。Excelをご利用中の皆さんの中には、同じバージョンまたはより新しいバージョン(ビルド)を実行しているにもかかわらず、このショートカットキーを使用しても何も起こらないことに戸惑っている人はいないでしょうか。結論から言うと、このような新機能が継続的に追加されるのは、Microsoft 365 Appsです。買い切り型の永続ライセンス製品(リテール製品)のMicrosoft Officeは対象外です。

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Windowsにまつわる都市伝説

[Ctrl]+[Shift]+[V]キーは、書式を保持せずに、値だけを素早く貼り付け

 [Ctrl]+[Shift]+[V]キーボードショートカットは、「Microsoft 365 Apps」の最新チャネル向けに2023年8月28日(米国時間、以下同)にリリースされた、最新チャネル(Current Channel)向けの「バージョン2308(ビルド16731.20170)」の機能更新プログラムに含まれる新機能の一つです。最新チャネルに続き、2023年10月10日には月次エンタープライズチャネル(Monthly Enterprise Channel)向けにも提供されました。

 この新しいキーボードショートカットを使用すると、クリップボードにコピーされた内容のうち、“値だけ”を貼り付けます。これまで、書式や数式を保持せずに値(データ)だけを貼り付ける場合、リボンの「貼り付け」メニューから「値の貼り付け|値」を選択するか、コンテキストメニューから「貼り付けオプション:値」を選択して貼り付ける必要がありました。それを[Ctrl]+[Shift]+[V]キーボードショートカット1つで素早く貼り付けることができるようになったのです(画面1)。

画面1
画面1 B4セルを選択して[Ctrl]+[C]キーを押し、D4セルに[Ctrl]+[Shift]+[V]キーで貼り付けたところ。B3セルの書式(文字の大きさ、背景色)や式(=SUM())ではなく、値(600)が張り付く

 しかし、「Microsoft Excel」(以下、Excel)の同じバージョン(ビルド)を実行しているにもかかわらず、全く同じ操作をしても何も起こらない場合もあります(画面2)。つまり、[Ctrl]+[Shift]+[V]キーボードショートカットが実装される前と何も変わっていないというか、[Ctrl]+[Shift]+[V]キーボードショートカットが実装されていないのです。

画面2
画面2 D4セル上で[Ctrl]+[Shift]+[V]キーを押しても、何も起こらない

 Excel バージョン2308の新機能としては、もう1つ、「データの入力規則」ドロップダウンリストのオートコンプリート機能があります。

 これまでは、ドロップダウンリストから値を選択するか、完全に選択肢と一致する文字列をセルに入力することで値を確定できました。新機能のオートコンプリート機能により、選択肢の値の一部を入力して値を絞り込む、あるいは確定できるようになりました(画面3)。このオートコンプリート機能も、[Ctrl]+[Shift]+[V]キーボードショートカットが効かないデバイスでは、同様に機能しません(画面4)。

画面3
画面3 「データの入力規則」ドロップダウンリストのオートコンプリート機能により、選択肢を値の文字の一部で絞り込むことができるように(英語の場合は部分一致だが、日本語の場合は前方一致にのみ対応している模様)
画面4
画面4 [Ctrl]+[Shift]+[V]キーボードショートカットが使えなかったデバイスでは、オートコンプリート機能も機能せず、エラーに

 最新チャネル向けに2023年9月末にリリースされたバージョン2309では、Excelに新しい「自動データ自動変換」オプションが「ファイル|オプション|データ」に追加され、セル先頭の「0」が削除されて数値に自動変換されたり、文字列が日付に自動変換されたりといったExcelの既定の動作を無効化できるようになりましたが、この新機能も同じビルドで追加されていない場合があります。

 このように、Excelの同じバージョン(ビルド)なのに挙動が異なる理由は、そのExcelがサブスクリプション製品である「Microsoft 365 Apps(for Enterprise/Business/Personal)」であるか、買い切り型の永続ライセンス製品(パッケージ製品、リテール製品」である「Microsoft Office(Home and Business/Standard/Professional/Professional Plus 2021など)」であるかの違いです。

 サブスクリプション製品と永続ライセンス製品の違いは、購入方法、インストール可能台数、クラウドストレージ提供の有無、永続ライセンス製品は「5年」という長期のサポート(注:「Office 2016」以前は10年、「Office 2019」は7年、「Office 2021」以降は5年)など、さまざまありますが、新機能(機能更新プログラム)が継続的に提供されるのは“サブスクリプション製品だけ”となります。

 最新チャネルの場合、同じバージョン(ビルド)が同じタイミングで永続ライセンス製品に対しても提供されますが、こちらはセキュリティ更新プログラムやバグ修正を含む品質更新プログラムのみの提供で、新機能(機能更新プログラム)を取得することはありません(画面5)。使用中のOfficeアプリがどちらであるかは、任意のOfficeアプリを開いて「ファイル|アカウント」から確認できます(画面6)。

画面5
画面5 永続ライセンス製品には新機能は提供されない。アップグレードライセンスもないので、新機能は次期バージョンを購入することで利用できるようになる
画面6
画面6 Officeのバージョン情報。左が永続ライセンス製品、右は新機能が継続的に追加されるサブスクリプション製品

 Officeアプリのサブスクリプション製品と永続ライセンス製品に関して、新機能の扱いの違いについては、本連載でも過去に何度か取り上げてきました。例えば、Office 2016には、当時、サブスクリプション製品である「Office 365 ProPlus」に対して「アイコン」や「SVG画像」、数式での「LaTeX」サポートが追加されました。永続ライセンス製品ではこれらの機能は利用できませんでした。

 サブスクリプション製品に対して追加されたこの新機能は、永続ライセンス製品では次のバージョン(Office 2019)のときに、標準機能として搭載されることになりました(画面7)。同じように、最近(Office 2021以降)にサブスクリプション製品に追加された新機能については、永続ライセンス製品の次のバージョン(出る出ないを含め、予定は明らかになっていません)に標準搭載されることになるでしょう。

画面7
画面7 Office 2016のサブスクリプション製品に追加された「アイコン」「SVG画像」「LaTeX」などの新機能は、永続ライセンス製品では次のOffice 2019に標準搭載された

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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