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「最悪のシナリオ」と「最高のシナリオ」に大きな違いがないならリスクがある方を選ぶGo AbekawaのGo Global!〜Paul McMahon(前)(3/3 ページ)

グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回はTokyoDevのPaul McMahon(ポール・マクマホン)さんにお話を伺う。勉強は決して得意な方ではなかったが、性に合うもの、興味があるものを追いかけることでソフトウェアデベロッパーとしてのスキルをポールさんは身に付けていく。

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お小遣い稼ぎで終わらせたくない

阿部川 ポールさんのブログを読みました。そこには、日本語で、「これまで3カ月間日本語を勉強してきました」と書いています。デベロッパーの仕事を探すために、このメールを送ったのですね?

ポールさん はい、仕事はオンラインで探しました。当時(2006年)は、私のように英語しか話せなくて、経験のない人でも大丈夫な求人は少なかったのですが、偶然にも、その条件に合っていて、何だか面白そうな企業を見つけたので、メールを送って面接を受けたのです。

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インタビューに笑顔で応えるポールさん

阿部川 なかなかの冒険でしたね……。そして無事、2006年10月にUbitに入社します。

ポールさん はい。ちなみにUbitに採用された時点ではまだワーキングホリデービザでした。カナダのワーキングホリデービザは6ヶ月で更新する必要があるため、更新時に就労ビザに変更しました。

阿部川 当時、ポールさんは日本のことはほとんど知らなかったと思うのですが、その中でフルタイムの仕事というのはどんな感じだったのでしょう。

ポールさん そうですね、コミュニティーカレッジ時代の友人からいろいろと聞いて興味は持っていたのですが、日本と強いつながりはありませんでした。ただ、Ubitは当時の日本の企業としては珍しく、国際色豊かなソフトウェアデベロップメントチームがありました。エンジニアリングチームの文化は、とてもインターナショナルでしたし、伝統的な日本の企業の環境とは違ったものだったと思います。

 そうした環境で、実際のビジネスの世界においてソフトウェアの開発者の仕事がどのようなものなのかをよく知ることができました。ソフトウェアデベロッパーの仕事の可能性という観点から見ると、毎日の仕事へのモチベーションを高められる会社でした。

阿部川 素晴らしいですね。

「まずはリスクを取ってやってみよう」で起業

阿部川 25歳のときに退職されてMobaleanを設立されます。起業を決めたきっかけは何だったのですか。

ポールさん はい。Ubitは、ソフトウェアデベロッパーにとっては素晴らしい会社ではありましたが、ビジネスにおいて幾つかの課題を抱えていました。何かを劇的に変えないといけないと、私は思っていました。ただ、自分の意見を声高に述べることに多少の抵抗がありましたし、まだ24歳の若造でもありました。でも何かしないとまずい、とか、このアイデアはうまくいかないなどと焦燥感に駆られていました。

 そんな話を、私をUbitに誘ってくれた尊敬する2人のデベロッパーにしたところ、「一緒にフリーランスで仕事をしてみないか」と言ってくれたので、「それは面白そうだ、やってみよう」ということになりました。こんな機会はそうないだろうと思いましたし、差し当たって他にやりたいこともなかったので(笑)。

 また、私は3人の中で一番若かったので、その分リスクを引き受ける形で始めようと決め、Mobaleanを設立しました。主に日本のモバイルWebの開発事業を担っていました。日本のモバイルフォンに特化した機能などがあり、技術的にも通常のWeb開発とは違う部分も多く、楽しい領域でした。Ubitの仕事でも関わっていた領域なのである程度の知識は持っていましたが、決して専門家というわけではありませんから、多くの問題にぶつかりましたね。


編集中村
編集 中村

 いいですよね。問題があって「何とかしないと」と思うことはたやすいのですが、次の一歩はなかなか踏み出せないと私は思います。そこで1人立ち止まるのではなく、仲間(尊敬する人)に相談したポールさんはすごいですし、その時点で起業することは必然だったのでしょうね。


阿部川 起業するとき、3人でビジネスをやっていく自信はあったのですか。

ポールさん どうでしょうか。私はどちらかといえば、リスクを取るタイプの人間だと思います。状況を見て「最悪のシナリオ」と「最高のシナリオ」を考えたとき、2つに大きな違いがないなら、自信と若さに任せて、まずはリスクをとってやってみようと思いました。

阿部川 素晴らしいですね。Mobaleanでの仕事は楽しかったでしょう。

ポールさん そうですね。私たちは、自分たちの実入りを最大限にしようとか、お金持ちになろうとかよりも、それぞれのライフスタイルを重視していました。ソフトウェアデベロップメントの領域には、私たちが追求しているライフスタイルを維持できるのに十分なプロジェクトがありましたから、ビジネスデベロップメント的な活動はしなくても会社を回していくことができました。

阿部川 いいですね。起業で大事なことは目的やビジョンです。ポールさんたちは明確な会社のビジョンをお持ちだったのですね。ポールさんのブログ(TokyoDevのWebサイト)を見て、私がとても感銘を受けたのが、日本でソフトウェアデベロップメントの仕事をする場合の給料を明確に数字で表していることです。ソフトウェア開発に関して、このようにズバリ数字を出している企業はあまり見たことがありません。これはポールさんの経験に基づいたものなのですか。

ポールさん 経験を基にしているという点ではそうですね。

 TokyoDevのWebサイトはUbit時代に私が個人的に立ち上げたものです。始まりはただのブログだったのですが、日本のデベロッパーコミュニティーに参加するようになって、多くの素晴らしい仕事が日本人のデベロッパーによって行われているにもかかわらず、世界にはそれが知られていないと感じるようになりました。それでどうしても日本人の仕事を世界に伝えたくなって今の形になりました。



 自分の思いに実直で、まず飛び込んでみることで自分の適性を見いだしたポールさん。ふとしたきっかけから日本で働き始めたポールさんが感じたのは「この素晴らしさを世界に伝えたい」ということだった。後編は、TokyoDevの活動とインターナショナルで活躍できるエンジニアになるために何が必要かについて。

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