非クラウドインフラ市場に逆風、クラウドインフラ支出は増加も需要は減少:「2024年のクラウドインフラ支出見通しは非常に明るい」
IDCは、2023年第3四半期における世界の企業インフラ支出動向を発表した。クラウドインフラ支出は前年同期比2.9%増、非クラウドインフラ支出は8.2%減となった。
IDCは2024年1月11日(米国時間)、2023年第3四半期における世界の企業インフラ支出動向を発表した。
この発表では、企業インフラは、クラウドコンピュートおよびストレージインフラ(以下、クラウドインフラ)と、非クラウドインフラに分類されており、クラウドインフラは、専用クラウドインフラと共有クラウドインフラに分類されている。
IDCは専用クラウドと共有クラウドを以下のように定義している。
- 専用クラウド:1つの企業または企業グループ内で共有されるクラウドを指す。クラウドサービスプロバイダーの施設に展開される場合と、顧客の施設に展開される場合がある
- 共有クラウド:パブリッククラウドサービス(企業のデータセンターに展開されたITインフラの拡張や置き換えのために設計されたさまざまなサービスなど)や、各種デジタルサービス(メディア/コンテンツ配信、共有、検索、ソーシャルメディア、電子商取引など)に使われるクラウドを指す。相互に無関係な企業や消費者の間で共有される
クラウドインフラ支出と非クラウドインフラ支出
2023年第3四半期のクラウドインフラ支出は前年同期比2.9%増の254億ドルとなり、非クラウドインフラ支出は同8.2%減の149億ドルとなった。企業インフラ支出全体は403億ドル。クラウドインフラは需要数量が23.9%減少したが、平均販売価格(ASP)が上昇した。ハイパースケーラー向けのGPUサーバ出荷が通常より多かったことが主因だ。
「クラウドインフラ支出は、より複雑なワークロードへの対応と、新たなAIプロジェクトのサポートを目的とした堅牢(けんろう)な構成へとシフトし続けている」と、IDCのリサーチディレクターを務めるジュアン・パブロ・セミナラ氏は説明した。「経済的、社会政治的な課題を前に警戒感は残るものの、2024年の支出見通しは非常に明るい。クラウド支出は年間を通じて2桁のペースで回復する見込みだ」
共有クラウドインフラ支出と専用クラウドインフラ支出
2023年第3四半期の共有クラウドインフラ支出は185億ドルとなり、前年同期比で7.2%増えた。企業インフラ支出全体に占める割合は、専用クラウドインフラ支出や非クラウドインフラ支出を上回る45.9%に達した。専用クラウドインフラ支出は、前年同期比7.2%減の69億ドルとなった。
2023年通年の推計
IDCの推計によると、2023年通年のクラウドインフラ支出は前年比で9.7%増えて1006億ドルに達し、非クラウドインフラ支出は同7.7%減の587億ドルとなったもようだ。クラウドインフラ支出のうち共有クラウドインフラ支出は前年比13.9%増の722億ドルとなり、専用クラウドインフラ支出は同0.3%増の283億ドルにとどまったと推計されている。
2023年通年の非クラウドインフラ支出が前年比で減少したとみられるのは、市場が逆風に直面していることを反映している。一方、クラウド支出は、新規および既存のミッションクリティカルなワークロード需要に支えられ、好調を維持した。こうしたワークロードでは、パフォーマンス重視のハイエンドシステムが必要とされることが多い。
サービスプロバイダーのインフラ支出
IDCは、サービスプロバイダーと非サービスプロバイダーによるインフラ支出も追跡している。サービスプロバイダーのカテゴリーには、クラウドサービスプロバイダー、デジタルサービスプロバイダー、通信サービスプロバイダー、ハイパースケーラー、マネージドサービスプロバイダーが含まれる。
2023年第3四半期におけるサービスプロバイダーのインフラ支出は249億ドルとなり、前年同期比で1.7%伸び、企業インフラ支出全体の61.7%を占めた。非サービスプロバイダー(企業、政府機関など)のインフラ支出は同6.3%減の154億ドルにとどまった。IDCは、サービスプロバイダーによる2023年通年のインフラ支出が985億ドルに達し、前年比で8.3%増えたと推計している。
地域別のクラウドインフラ支出
2023年第3四半期のクラウドインフラ支出が前年同期比で減少した地域は、カナダ(26.7%減)、中東欧(20.8%減。ロシア、ウクライナ戦争の影響)、西欧(15.4%減。エネルギー価格高騰と厳しいマクロ経済環境の影響)、中東/アフリカ(2.0%減)、中南米(0.7%減)。
2023年第3四半期のクラウドインフラ支出が前年同期比で増えた地域は、日本(16.0%増)、中国(15.5%増)、アジア太平洋地域(日本と中国を除く。10.0%増)、米国(0.9%増)だった。
2022〜2027年の見通し
IDCは、2022〜2027年における世界のクラウドインフラ支出が年平均10.6%のペースで伸び、2027年には1520億ドルに達し、企業インフラ支出全体の68.8%を占めると予測している。
IDCによると、共有クラウドインフラ支出は、2022〜2027年の年平均成長率(CAGR)が11.1%で、2027年には総額1071億ドルに達し、クラウドインフラ支出の70.5%を占める見通しだ。専用クラウドインフラ支出はCAGRが9.7%で、2027年には総額449億ドルに達すると推計されている。
非クラウドインフラ支出はCAGRが1.6%増にとどまり、2027年には総額689億ドルに達すると予想されている。
サービスプロバイダーによるインフラ支出は年平均10.4%のペースで増え、2027年には1489億ドルに達する見通しだ。
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