Society 5.0に必要不可欠な「IoT」の課題や可能性を知っておこう:ビジネスパーソンのためのIT用語基礎解説
IT用語の基礎の基礎を、初学者や非エンジニアにも分かりやすく解説する本連載、第18回は「IoT」です。ITエンジニアの学習、エンジニアと協業する業務部門の仲間や経営層への解説にご活用ください。
1 IoTとは
IoT(Internet of Things)は、家電製品や自動車など従来インターネットに接続されていなかったものを、ネットワークに接続することで情報システムと相互に情報交換を行う仕組みです。
日本語では「モノのインターネット」と訳されます。IoTの普及により、家電製品を外出先から遠隔操作したり、さまざまな機器の稼働データを情報システム上で分析したりすることで新たなサービスや価値を創造できるようになり、人の生活は大きく変化しました。通信インフラや機器の高性能化を背景に、IoTデバイスの数は年々増加しています。
2 IoTの構成要素
IoTは以下の要素により構成されます。
2.1 デバイス
IoTを構成するデバイスには、画像や温度、照度、CO2などさまざまな情報を検知するセンサーが組み込まれ、それらセンサーから得たデータをネットワーク経由でサーバに送ります。また、サーバ側で処理、分析された結果を基に、アクチュエーター(※1)を介してデバイスを動作させます。
2.2 ネットワーク
IoTデバイスをネットワークに接続する方式は、「機器からWi-Fiなどを使用して直接インターネットに接続する方式」と、「ゲートウェイと呼ばれる装置を介してネットワークに接続する方式」の2通りに大きく分けられます。セキュリティ対策が施されたゲートウェイを使用することで、IoTデバイスへの攻撃を防止する効果が期待できます。
2.3 サーバ、クラウドサービス
IoTデバイスから送られてきたデータは、オンプレミスのサーバ、またはクラウドサービスで処理、分析します。
システム構成としては、オンプレミスで独自にシステムを構成する、もしくはパブリッククラウドの事業者が提供するサービスを利用することが一般的です。実現する機能によ
りますが、IoTシステムは膨大なデータ量を扱うケースが多いため、拡張性に優れ、さまざまな分析機能などを要するクラウドサービスとの相性が良いといえます。
2.4 アプリケーション
ユーザーはアプリケーションを介して、IoTデバイスの操作や可視化されたデータを閲覧できます。
3 IoTがもたらす恩恵
IoTはさまざまな業種で導入されており、多くの企業活動に寄与しています。
図3のような企業だけでなく、IoTを活用した家電の普及が家庭でも進んでいます。スマートフォンから家電の稼働状況を把握して電源をオン/オフする、スマートフォンをかざすだけで鍵を開閉するスマートロックなど、日常生活にさまざまな変化をもたらしています。
4 IoTの課題
IoTには以下のような課題があります。
4.1 セキュリティ
インターネットなどのネットワークに接続されている以上、IoTデバイスもPCやスマートフォンなどと同様に、セキュリティ上の脅威にさらされています。
セキュリティ対策がなされていないIoTデバイスがマルウェアに感染し、膨大な量のデータを情報システムに送信され、サーバがダウンするといった事例も存在します。その他にも、監視カメラのハッキングによるプライバシーの侵害や、医療機器の誤動作などの人命に影響する被害を受ける可能性があります。IoTは人の生活を豊かにする一方、社会インフラの停止など大規模な被害を受けるリスクもはらんでいます。
IoTデバイスのセキュリティ対策は、総務省と経済産業省が共同で開催するIoT推進コンソーシアムにより策定された、IoTセキュリティガイドラインに指針が示されています。
4.2 データ通信量
IoTデバイスの数は世界的に増加を続けており、それに伴うIoTデバイスからの通信負荷やデータ量の増大、電力消費量などが問題となっています。
通信負荷が増加することにより、リアルタイム性が損なわれるなどの問題が生じます。これらの問題の対策としては、IoTデバイス側で処理するデータ量を増やすことでIoTデバイスと情報システム間の通信量を減らす「エッジコンピューティング」が有効とされています。併せて通信インフラの増強やIoTデバイスの高性能化も必要です。
5 IoTの可能性
日本政府が提唱するSociety 5.0(※2)で実現する社会は、「IoTで全ての人がつながり、さまざまな知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出す」とされており、IoTは施策における重要な要素となっています。
このことから、IoT分野は今後もより注力されていくものと思われます。世界的に見てもIoTデバイスは増加の一途をたどっており、IoTで収集したデータをAI(人工知能)で分析して新たな価値創造に役立てるなど、さまざまな技術との組み合わせによる相乗効果で、私たちの生活をより豊かにすることが期待されます。
古閑俊廣
BFT インフラエンジニア
主に金融系、公共系情報システムの設計、構築、運用、チームマネジメントを経験。
現在はこれまでのエンジニア経験を生かし、ITインフラ教育サービス「BFT道場」を運営。
「現場で使える技術」をテーマに、インフラエンジニアの育成に力を注いでいる。
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