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パワハラのリスクを回避しつつ、伝えるべきことを伝える方法仕事が「つまんない」ままでいいの?(116)(1/3 ページ)

パワハラ、モラハラ的な言動は気を付けたいもの。しかし、パワハラ、モラハラを意識し過ぎるがあまりにコミュニケーションの難しさを感じているのなら、本末転倒です。指摘すべきところは指摘できないと、人や組織の成長は望めません。

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 ここ数日の間に、さまざまな企業や組織で起こっているパワハラ、モラハラの情報を目にしました。個別具体的な事例には言及しませんが、役職者からの叱責(しっせき)や人格否定の言葉によって働く意欲がそがれたケース、心身に不調を来して休職に追い込まれたケース、命を落としたケースまでありました。

 「女性活躍・ハラスメント規制法」が施行されたのが2020年6月。4年が経過しましたが、職場におけるパワハラ、モラハラ被害に苦しむ人は後を絶ちません。

 なぜ、パワハラ、モラハラ被害に苦しむ人が後を絶たないのか? それは、仕事にはつきものである「指示、命令、禁止」といった指導をする際に、自分たちが若いころに「前の世代からされてきた関わり方」を、上司たちが無自覚のまましてしまうからなのでしょう。

 上司自身が前の世代から叱責されて育ってきた。場合によっては、何かしらの成功体験がある。だから、それが悪いことだと気付かないし、自覚できない。その結果、自分も同じように振る舞ってしまう……。そういう意味では、パワハラ、モラハラ的な関わり方をしてしまう人たちも「前の世代からの被害者」といえるのかもしれません。

 だからといって、パワハラ、モラハラ的な言動が肯定される理由にはなりません。

 僕もエンジニア時代に、パワハラ、モラハラ的な上司の言動に苦しんだことがあります。それまで「楽しい」と思っていた仕事が、上司の言動によって楽しいと感じられなくなってしまった。当然、仕事のパフォーマンスも落ちました。

 僕たちは意識や感情のある人間であり、機械ではありません。強制的に働かせられるよりも、一人一人の個性が尊重され、それぞれの強みが生かせる職場の方が、そして、仕事が「楽しい」と感じられた方が、仕事に前向きに取り組めますし、やる気も出ます。その結果として、組織の成果も出やすくなるのではないか……と、僕は心底思っています。

パワハラを気にするあまりに距離感をつかめない人たち

 他方、「自分の関わり方が、パワハラ、モラハラになっていないか」と心配で、若手社員とうまく距離感がつかめずに悩んでいる上司もいます。

 僕は、パワハラ、モラハラ的な言動をする上司の下で働いた経験や、その中で組織作りをしてきた経験から、現在は組織作りやコミュニケーションに関する企業研修や講演に携わっています。仕事柄、さまざまな企業の人事や組織作りに関わっている方々と話をするケースがあります。

 その中で近年、「自分の言動がパワハラ、モラハラになっていないかどうかが気になる」「メンバーとのうまい距離感がつかめない」といった課題を持っている管理職やリーダーが多くいるという話を伺うことがありました。

 これだけ「パワハラ、モラハラはダメだ」と言われれば、さすがに自覚はできるようになった。頭では「パワハラ、モラハラはダメだ」と理解はしている。「言ってはいけないこと」も何となく分かる。でも「どのように関わったらいいのか」が分からない。中には「面倒だから、深く関わらない方がいい」と、関係構築を諦めてしまう人もいるようです。

 以前、ある会社で働く30代中盤の方が、次のように言っていました。

 「いまは周囲との関わり方が難しいので、ぶっちゃけ『関わらない方が楽』と思うこともあります。でも、それが組織にとって本当にいいことなのか? というと、決してそうは思えないんです」

 確かに、以前と比較するとコミュニケーションが難しい。しかし、周囲との関係を気にするがあまりに、フィードバックや指導など、本来伝えるべきことが伝えられない状況は、人や組織が成長する機会を奪ってしまいます。

 伝えにくいことでも、伝えるべきことは伝えなければならないときがある。でも、パワハラ、モラハラといわれるのは怖い。この相反する課題に対し、どのように対処すればいいのでしょうか。

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