攻めのデータ分析に効果的な「DWH」の基本と導入時の注意点を学ぼう:ビジネスパーソンのためのIT用語基礎解説
IT用語の基礎の基礎を、初学者や非エンジニアにも分かりやすく解説する本連載、第23回は「DWH」です。ITエンジニアの学習、エンジニアと協業する業務部門の仲間や経営層への解説にご活用ください。
1 DWHとは
DWH(Data Ware House)は、企業内のさまざまな業務システムや外部のデータソースから収集した大量のデータを統合し、効率的に保存、管理、分析できるように設計されたデータ管理システムです。
通常のデータベースは日々の業務処理に使われるデータを保存し、素早い追加や更新に適していますが、DWHは大量の過去データを集め、分析やレポート作成を目的としているため、情報の分析に適しています。
DWHは企業内の異なるシステムに存在するデータを統合することで、全社的なデータ分析を可能にします。過去のデータを基にしたトレンド分析や予測分析により、企業の事業計画や意思決定を支える重要な技術として、近年注目度が上がっています。
2 DWHの基本構成
DWHは以下のような構成で利用されます。
上記の構成では、まず業務システムから生成されたデータをデータレイク(※1)に集積します。データレイクにはさまざまな形式のデータをそのまま保存し、ETL(Extract, Transform, Load)プロセスによってデータを抽出、クレンジングし、分析に適した形式に変換後、DWHにロードします。
DWHはETLプロセスを通じてロードされたデータを保存し、統合します。DWHでは、データマート(※2)と呼ばれる特定の部門や用途に特化した形にデータをまとめ、さまざまなニーズに対して迅速に応答します。
BI(ビジネスインテリジェンス)(※3)では、DWHに保存されているデータを取り出し、分析やレポート作成を行います。BIツールを使って、データの可視化やダッシュボードを作成し、意思決定のための洞察を提供します。
3 DWH導入のメリット
DWHを導入すると、以下のようなメリットが得られます。
3.1 データ分析の効率化
DWHは、大量のデータを効率的に集計、分析するために最適化されています。そのため、BIツールによるレポート作成や分析が迅速に行えます。また、複雑なデータ検索やデータマイニング(※4)をサポートし、大量のデータを効率良く活用できます。
3.2 ビジネスインテリジェンスの向上
DWHはBIツールと併せて利用することで企業のビジネスインテリジェンスの向上に寄与します。
部門ごとに異なるデータソースを統合、クレンジングし、かつ長期間のデータを時系列に保持することで、過去のトレンドのを分析して将来を予測し、データに基づいた意思決定をサポートします。
例えばコンビニエンスストアなどの小売業であれば、どの時期にどの商品がどれだけ売れたかなどの情報を過去のデータから分析し傾向を把握することで、将来のトレンドを予測し、需要と供給を最適化できます。
DWHを導入することでこれらのメリットを享受でき、無駄のない経営や生産性の向上につなげられます。
4 DWH導入における注意点
DWHを導入する上での注意点は以下の通りです。
4.1 DWH導入の妥当性評価
まず、ビジネスの目的を達成する上でDWHの導入が妥当かどうかを検討します。
数TB(テラバイト)からPB(ペタバイト)など大量のデータを扱うケースや、複数のシステムのデータに対し複雑な分析処理を迅速に行う必要がある場合などは、DWHの導入による効果が期待できます。
一方で、データ量が少なくシンプルな分析で十分な場合や、ビジネスの規模が小さい場合などでは、導入や維持にかかるコストを鑑みてDWHよりも他の手法を導入する方が適切な可能性もあります。
4.2 データの品質管理
データの品質は、DWHの信頼性と効果に直結します。データが正確で一貫性がなければ、分析結果が誤ったものになり、意思決定に悪影響を与えます。
データの正確性、完全性、信頼性を保つためには、日々のメンテナンスが必要です。データクレンジング機能や、異常を察知するためのモニタリング機能などは特に重視して確認することが大切です。
4.3 スケーラビリティ
DWHを長期的に運用していく上では、企業の成長やデータ量の増加に対応できるスケーラビリティの確保が必要です。初期導入時だけでなく、将来の拡張性を考慮し、システムが柔軟に対応できるように設計します。スケーラビリティやコスト効率、メンテナンスの観点から、近年ではクラウドベースのDWHが採用されるケースが増えています。
5 今後の展望
日本でデータ利活用ができている企業の割合は、諸外国と比較して低い状態にあります。
DWHは、クラウドの進化、データレイクとの統合(レイクハウス)(※5)、AI(人工知能)の活用など、多くの技術トレンドに支えられながら、より高機能で使いやすく進化し続けています。
企業では、DWHなどのデータ分析基盤を整えることと並行して、データ利活用のメリットを企業内に浸透できると、「データの民主化」が促進されます。ユーザーが自らデータ分析できるようになることで、データ駆動型の文化が育まれ、企業の競争力強化につながるものと思います。
一方で、さまざまなユーザーがデータへアクセスできるようになるとセキュリティの懸念が生じるため、厳格なアクセス制御などの対策も併せて考えていくことが、今後より重要となります。
古閑俊廣
BFT インフラエンジニア
主に金融系、公共系情報システムの設計、構築、運用、チームマネジメントを経験。
現在はこれまでのエンジニア経験を生かし、ITインフラ教育サービス「BFT道場」を運営。
「現場で使える技術」をテーマに、インフラエンジニアの育成に力を注いでいる。
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