忙しい管理職、若手メンバーとの「対話の時間」をどう確保する?:仕事が「つまんない」ままでいいの?(128)(3/3 ページ)
「時間がない」と諦めるのは早過ぎるかも。若手との対話は、離職防止、チーム強化、そして多忙な管理職を救う「先行投資」となるかもしれません。
何から始める?
一方で現状を振り返ると「時間がない」という事実があります。では、何を、どのように始めたらいいのでしょうか?
まずは対話を始めることです。その際、時間がないからと対話の時間を「時間外に設ける」のはお勧めしません。メンバーとの対話も業務です。時間外にやるのは、メンバーにとっても負担でしかありません。
いっそ、管理職個人の仕事を時間外に行い、メンバーとの対話を時間内に行う方がいいでしょう。最初は「負担だな」と思うかもしれません。ですが、回数を重ね、メンバー一人一人が自発的になっていくと、いずれ負担も回収されます。先行投資だと理解するといいでしょう。また、いままで分からなかったメンバーの様子が分かるようになっていくと、支援する仕事が楽しくなると思います。その楽しさが、管理職の仕事に対する動機付けにもなります。
なお、一言で対話といっても、傾聴や質問をはじめ、若干のスキルは必要です。機会があれば、傾聴の本などを読んでから実践してみるといいでしょう。
メンバーは管理職との対話をどう思っているのか?
忙しい管理職が、若手メンバーと対話をする上での2つ目の論点「若手は、管理職と対話をすることをどう思っているのか?」を、考えてみましょう。
実情は、管理職と若手との関係性による部分が大きいでしょう。ですが、冒頭の「上司が話を聞いてくれないから、諦めて離職する」といった現場の声からすれば、「上司に話を聞いてほしい」「上司と良好な関係で仕事をしたい」と思っている若手も多いのではないでしょうか。
あなたもそうであるように、人は何かしらの課題や悩みを抱えているとき、誰かに助けてほしいし、相談に乗ってもらいたいものです。そこで必要なのは「報連相(報告、連絡、相談)」ではありません。ざっくばらんな話ができる「対話(雑談、相談)」です。
こう考えると、「若手の時間を奪ってしまうのではないか?」は、無用の心配なのかもしれません。
管理職は「一人で頑張らなくていい」
ここまで読んで「本当?」「そんなにうまくいくわけない」と思う方もいると思います。忙しいのならなおさらです。
でも、「忙しい」の一言で思考をやめ、対話を諦めてしまうことの方が可能性を失ってしまうようにも思います。
また、僕の周囲を見まわしてみると、「○○さん、めちゃくちゃ忙しいんだろうな〜」と思う人ほど、メンバーとの対話を大切にしているようです。それは「1人で仕事をしている」のではなく、「チームで仕事をしている」ことを知っているからなのではないかと思います。
1人でできる仕事には時間や能力の制約がありますが、チームでする仕事は、人数以上の仕事に化けます。それを知っているから、本当に忙しい人ほど、対話を大切にしているのかもしれません。また、メンバーと対話をすることによって、管理職自身が癒されることもあります。
「忙しい」の一言で、若いメンバーとの対話を諦めないでください。チームで仕事をする楽しさを知ってください。仕事の大変さやよろこびをチームで分かち合えば「1人で頑張らなくていいんだ!」という感覚を実感できるはずです。
筆者プロフィール
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント(翔泳社)」「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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