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GitHubで人気の言語ランキング「PythonがTypeScriptに抜かれた」ことの意味「AI、コード、人」 @IT編集部員の2026年展望

近年は「プログラミング言語人気ランキング1位はPython」という記事ばかりお届けしていましたが、2025年10月に大きな変化が起こりました。この変化の背景には何があったのか、幾つかの記事を振り返りながら、今後についても考えます。

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 2025年はプログラミング言語にとって大きな転換点になった年――もしかしたら、数年後にそう言われるかもしれません。

 2025年10月に「GitHub」を使用する開発者の動向を調査した年次レポート「Octoverse 2025」が公開されました。レポートは、2024年9月1日〜2025年8月31日に取得されたGitHubのユーザーおよびプロダクトデータに基づいており、「TypeScript」がコントリビューター数において、2025年1月に初めて「JavaScript」を抜いて2位となり、2025年8月には「Python」も抜いて首位に立ったことを明らかにしました。コントリビューター数が多いプログラミング言語は「コードを最も多く保有するGitHubで開発が最も活発な言語」と言えます。

 Pythonは、コントリビューター数で10年トップだった「JavaScript」を2024年4月に抜いて1位になってからコントリビューター数を増やし続け、2025年の7月まで1年以上首位をキープしていたにもかかわらず、TypeScriptがそれを上回ったのです。


GitHub上で最も使用される言語の推移(2023年2月〜2025年8月)(提供:GitHub

 これが意味することは何か、プログラミング言語やツールなど開発者の周辺で何が起こっているのか。2025年を振り返り、2026年はどうなるかを展望します。

「GitHubコントリビューター数1位」の意味は?

 GitHubは「Octoverse 2025」の結果を踏まえ、AI(人工知能)がプログラミング言語の選択や企業の開発体制に与える影響について、公式ブログで見解を示しました。

 GitHubのR&D部門「GitHub Next」の責任者でリサーチ担当シニアディレクターのイダン・ガジット氏は、単に「TypeScriptがPythonに勝った」という話ではなく、AIが内部から言語トレンドを形成し始めた結果だと説明しています。

 同氏の見解は以下の通りです。

 かつての技術トレンドがクラウドやコンテナなど「コードをどこで動かすか」に焦点を当てていたのに対し、現在は「どの言語や構成要素でコードを書くか」という選択の重みが増している。

 開発者が言語を切り替える主な動機は、思想的な理由ではなく、生産性やリスク低減といった実利にある。AI時代においては、「どの言語を選べば、AIツールがどれだけ支援してくれるか」が新たな判断軸になる。

 特に静的型付き言語は、AIとの相性が良いとされる。型情報という「ガードレール」があることで、AIが生成したコードの正しさをコンパイラや型チェックで素早く検証でき、生成AI特有のハルシネーション(幻覚)が発生する余地を狭められるからだ。

 AIモデルは「正しさ」に関する情報が明示されているコードほど性能を発揮しやすい。その結果、AIツールを活用する開発者ほど、新規プロジェクトで静的型付き言語を選ぶ傾向が強まり、個人の好みよりも「AIとの適合性」が優先されるフィードバックループが生じている。

 一方で、Pythonも依然として機械学習やデータサイエンスの分野で支配的な地位にある。豊富なフレームワークやライブラリというエコシステムが確立されており、「車輪の再発明」を避ける意味でも合理的だからだ。つまり、AI支援を受けやすいTypeScriptと、AI開発そのものに不可欠なPythonが、それぞれの適所でシェアを伸ばしている状況といえる。

 まとめると、AIによるコード生成が広く普及した2025年は、ハルシネーションの課題があることから、静的型付きがデフォルトのTypeScriptが、オプションで静的型付けをするPythonよりも求められたという見解です。

共に「開発者のために」――PythonとTypeScriptの違い

 GitHubは、Pythonの作者、グイド・ヴァンロッサム氏にインタビューもしています。

 Pythonについて「オプションの静的型付けよりも(TypeScriptのように)厳格な型付けにする必要があるのではないか」と聞いたところ、同氏は「AIを楽させるために慌てて大きく変え始める必要はない」と即答しています。Pythonの型付けは完璧ではないものの「十分」であり、「逆に、AIの方が人間に適応するだろう」と推測しているのです。

 「むしろ問題は言語仕様より学習データにある。多くのチュートリアルや入門記事は静的型付けを教えておらず、型アノテーション(ヒント)が付いたPythonコードが学習データとして少ないので、LLM(大規模言語モデル)が十分に理解できていない。型アノテーションを付けるように指示すると、AIはそのやり方を調べて正しく付けてくれる」(ヴァンロッサム氏)


グイド・ヴァンロッサム氏(Python作者)(GitHubのYouTubeチャンネルから引用)

 同氏は、あくまで開発者優先という思想の下でPythonを設計しており、AIの方が人間が読みやすい言語や開発者を取り巻く環境に適応するだろうという立場です。

 一方で、TypeScript開発者アンダース・ヘルスバーグ氏にも話を聞いています。


Microsoftのアンダース・ヘルスバーグ氏(TypeScriptのリードアーキテクト)(GitHubのYouTubeチャンネルから引用)

 「なぜ、AI全盛の時代にTypeScriptが首位に立ったのか」を聞くと、ヘルスバーグ氏はその理由として、大規模開発における型の重要性が、AIコーディングにおいても有利に働いている点を挙げています。

 「AIに50万行のコード変換を頼めばハルシネーションを起こすかもしれないが、型があれば決定論的かつ検証可能な結果が得られる。型は形式的なルールではなく、AIと人間がコードの正否を検証するための信頼できる指標だ。TypeScriptの持つ静的な型情報は、AIエージェントがコードの構造を理解し、安全にリファクタリングするための信頼できる情報源となる。TypeScriptは常に変化し続けている。その根底にあるのは、開発者が意図を明確に表現できるように支援することだ」(ヘルスバーグ氏)

 ここで両者の違いが明確になります。Pythonは開発者(人間)にとっての読みやすさを重視。型アノテーションを指定したコードを生成するようにAIに伝えることで開発者の意図も表現できる。一方、TypeScriptは、もともと動的型付けで自由だったJavaScriptに大規模開発に対応するために厳格な静的型付けを導入した言語であり、それも開発者が意図を明確に表現できるように支援するためです。どちらも「開発者のために」設計された言語ですが、インタビュー記事には、その根底にある思想が紹介されています。

人間としては「書くのが苦痛」だが“最適”な言語はAIに書かせる

 GitHubは、Octoverse 2025の結果でもう一つ「特筆すべき」としている点を挙げています。シェルスクリプト、特に「Bash」を使ったAI生成プロジェクトが前年比206%増と急伸したことです。

 GitHubのガジット氏は、Bashを「ソフトウェアのダクトテープ(見栄えは洗練されていないが、システムをつなぎ合わせる万能なツール)」と表現し、「多くの開発者にとってBashの記述は苦痛を伴う作業だったが、AIエージェントに面倒な部分を任せられるようになったことで状況が一変した」と指摘します。

 「『その言語が好きかどうか』という感情的なハードルが下がり、『その作業に最適な道具だから使う』という本来の基準で言語を選べるようになった。AIは、単に生産性を高めるだけでなく、これまで敬遠されていた言語を実用的な選択肢へと復権させていることを示唆している」(GitHub)

 ガジット氏は、今後の言語やツールの選定基準は、構文の書きやすさではなく、エコシステムの厚みやデバッグのしやすさ、「AIと人間が共有できるメリットの大きさ(レバレッジ)」に移っていくと結論付けています。

 開発者にとっては、特定の技術への忠誠心よりも、このレバレッジを最大化するスタック選びが重要になるということです。

今後、プログラミング言語には何が求められるのか

 このように、AIは、コーディングの速度だけでなく、どのプログラミング言語が選ばれるかにも影響を及ぼしました。Octoverse 2025の結果は、AIコーディングアシスタントの急速な普及と、言語の選好の変化には相関関係が見られることを象徴しています。

 2026年も、AIコーディングを採用する企業が増えることが予想されます。エディタやコーディングエージェントといったツールはもちろん、生成するコードの言語を選定する基準にも引き続き影響を及ぼしそうです。

 生成コードのハルシネーションをどれだけ抑制できるかは、言語自体の型付けシステムによって開発者の意図をどれだけ伝えられるかにも左右されますが、ヴァンロッサム氏の言うように、プロンプトやコンテキストの伝え方、仕組みなどAIツール側の進化によって変わるかもしれません。

 いずれにせよ、開発者にはコードを書くことよりも、意図をAIに入力し、生成されたコードが意図通りかどうかを検証する機会が増えていくことでしょう。検証時はコードの読みやすさが大きく影響するので、AIコーディングによって言語の選定基準として、“書きやすさ”よりも“読みやすさ”の方が重視される傾向が強まるとしても、言語自体への理解が必要なのは変わらないはずです。

 ノーコード開発やバイブコーディングによって市民開発が普及することで、開発されたソフトウェアの源泉となるコードの価値が一般的には分かりにくくなります。一方で、ソフトウェアの品質がビジネスに大きく関わる現在、コードを書く機会はAIの活用を受けて減るかもしれませんが、言語への理解は開発者にとって重要であり続けます。

 今後も、開発者にとって欠かせない情報として、言語自体への理解を促進できる記事はもちろん、プログラミング言語には何が求められるようになるのか、どう変わっていくのかも追いかけたいと思います。本年もよろしくお願いいたします。

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