「一生コードを書いていたい」と願ったボクが、エンジニアの鎧を脱いだとき:仕事が「つまんない」ままでいいの?(最終回)(2/3 ページ)
「一生コードを書きたい」と願っていた元技術オタクのボク。でもいまは、エンジニアの世界を離れています。技術という鎧を脱いだいま、エンジニア時代の能力はどのように生きているのでしょうか――。
「なりたくなかった管理職」が教えてくれたこと
エンジニアの仕事を離れたボクがいま携わっているのは、組織づくりやコミュニケーションに関わる仕事です。この仕事に深く関わるようになったのは、実は積極的な理由ではありませんでした。
エンジニアだった30代のとき、「プレッシャーで人を動かそうとするマネジメント」に直面し、心が折れそうになった経験があります。エンジニアであることは変わらないのに、「仕事が楽しくない」。そのとき、強く思ったのです。「なぜ大好きな技術を扱っているのに、仕事がこんなにつらいんだろう」と。
その後、年齢的なタイミングもあり、他に適任者がいなかったことから、不本意ながら管理職を引き受けることになりました。当時は「コードを書く時間が奪われる」とネガティブに捉えていましたが、実際にやってみると、予期せぬ発見がありました。
メンバーが楽しく働けるように環境を整え、コミュニケーションの目詰まりを解消していく。すると、チーム全体の温度が上がり、顧客からも感謝されるようになりました。そのとき、自分でも驚くような高揚感を感じたのです。「人の成長を支援する仕事も楽しいじゃないか!」と。
これは、ボクがエンジニアという仕事にこだわり続けていたら、一生味わうことのなかった喜びでした。50代になったいまも、その仕事を続けています。
20代の「ボク」が、想定していなかったこと
正直に言うと、20〜30代のボクは、50代の自分なんてこれっぽっちも想像していませんでした。いや、できなかったという方が正しいかもしれません。それよりも「いまのスキルの延長線上に、ずっと道が続いているはずだ」と漠然と考えていました。
でも実際に30代、40代と人生を経験してみると、若い頃に想像していたよりも、人生は大変でした(笑)。50代のいまは、さらに想定外の連続です。
20代の頃は知りませんでしたよ。「子どもが大学に行くと、こんなにお金がかかるのか!」とか、「親の介護が想定以上に大変!」とか。ここ1〜2年、急速に財布のひもが固くなりました(笑)。経験を重ねることによって生じる「さまざまな制約」や「現実の重み」は、その年齢にならないと実感が持てないものです。
さまざまな想定外のことが起こったときに、自分を助けてくれたのは、最新の技術ではありませんでした。それまでの歩みの中で築いてきた「周囲からの信頼」や「人とのつながり」。そういったことの大切さが、いまになると身に染みて分かります。
「未来は必ずしも想定通りにはならない」――こんな話、当たり前過ぎて何の説法にもなりません。しかし、間違いのない事実です。だからこそ、1つの道だけに固執し過ぎず、視界を少し広げておく。そうするだけで、未来の自分はずいぶん楽になるんじゃないか。そんなふうに、いまのボクは感じています。
自分を縛り付ける「技術という鎧」の重さ
かつてのボクは、技術力という「鎧」をいかに厚くし、それを「いかに脱がないか」ということばかりを考えていました。技術を磨くことは素晴らしい。それは、自分を守る武器にもなります。
でも、50代になったいま、ふと気付けば、技術という鎧を脱いでいる。鎧を脱いだ自分は無価値になるどころか、むしろ身軽になって、他の洋服――例えば、組織を支援したり、人と人をつないだりする役割――を試してみる余裕が生まれている。
「エンジニアとしての可能性」は、大いに大切にする。加えて、それを「唯一の正解」にせずに自分を呪縛しない。その適度な距離感が、変化の激しい時代を歩むための、心の余裕になるのかもしれません。
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