IT人材、AIで減るどころか「むしろ増える」 ただし外部採用より育成優先、なぜなのか?:「世界とは逆」の技術人材動向
Linux Foundationが技術系人材の採用や育成について調査したレポートによれば、日本ではAI導入を背景にして技術系人材の雇用が増える傾向にある。一方でAIを本格的に運用したり、人材を育成したりする上での課題感が目立ってきている状況も分かった。
AI(人工知能)の影響を受け、世界レベルで見れば人員削減の動きが報じられているが、日本での状況は大きく異なるようだ。その傾向は、Linux Foundation Japanが2026年7月29日に公開した、日本の技術系人材市場を分析した調査レポート「2026年 日本の技術系人材の現状レポート」(State of Tech Talent Japan)で浮き彫りになっている。
調査はLinux Foundation ResearchとLinux Foundation Educationが毎年実施しているもので、今回は技術系人材の採用、育成、管理を担当する400人の専門家を対象としている。
「IT人材はむしろ増加」「採用より育成重視」――なぜなのか?
世界では、AIの導入に伴って人員が減らされる動きが目立っているが、日本ではAIがIT人材の雇用創出を大きく後押ししている。一方で人材拡充の方針では、外部からの採用よりも育成が優先されている。これも世界の傾向とは異なる点で、調査ではその背景なども分析されている。
「世界とは逆」 日本におけるIT人材の拡充方針
日本企業では、AIの導入に伴って採用を拡大する傾向がある。日本企業の純雇用増加率は2025年に50%近くで、2026年に54%、2027年に35%と予測されている。世界全体では2025年に20%、2026年に26%、2027年に18%であるため、それぞれ大きく上回っている。
エントリーレベルの技術職でも46%の純雇用増加が見込まれ、キャリアの初期段階にある人材にも機会がある。
反対に、AI導入で人員削減が進むと予想する日本企業の割合は、2025年の16%から2027年には3%へと大幅に減少。世界では2025年の13%から2027年には22%へと増加するため、世界全体とは対照的な傾向だと言える。
AI人材の採用は増える一方、「本番運用」の体制に課題
一方、AIの導入を進めても、そこから価値を引き出すための体制が整っていない課題が浮き彫りになっている。AIを本番環境に導入し、運用するためのインフラや人材、運用体制が十分ではない。
AI/機械学習の専任人材を配置している日本企業は13%にとどまる。これは世界平均の53%を大きく下回った。AIだけではなく、DevOps(開発と運用の統合)、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)、SRE(サイト信頼性エンジニアリング)といった、システムを継続的に開発、運用する分野でも、専任人材を配置している日本企業は18%にとどまる。
こうした不十分な体制は、AIを本番環境で運用する段階の課題として表れている。日本企業の52%が「AIの運用・監視に関する能力不足」、49%が「AIのセキュリティおよびリスク管理に関する能力不足」を課題として挙げた。29%は、「インフラ関連スキルの不足」をAI活用における最大の障壁としている。
外部採用より「既存人材の育成」 その差は9倍以上
こうした技術人材の不足に対して、日本企業は外部から人材を採用するよりも、既存社員を育成することで対応しようとしている。日本企業では必要なスキルを確保する際、外部から経験者を採用するよりも、既存社員の育成によって必要なスキルを身に付けてもらうことを優先する傾向が強い。両者を選択する傾向には、9倍以上の開きがあったという。
背景には、採用してから戦力化するまでの時間と、必ずしも人材が定着しないという問題がある。新たな技術スタッフを採用して育成する場合、既存社員をアップスキリングする場合と比べて、必要な時間が約81%長かった。また新規採用者の46%は、6カ月以内に離職しているという。
回答者の54%は、技術系人材不足に対応するための戦略として、未経験の専門人材を採用し、アップスキリングの機会を提供することを挙げている。
即戦力の採用よりもアップスキリングが好まれる理由としては以下が挙げられた。
- 人材の定着
- 生産性向上までの期間短縮
- 仕事の質の向上
- 事業や業務への理解の深さ
Linux Foundation日本代表の福安徳晃氏は「日本のAI関連人材の採用拡大率が世界平均を大きく上回るという前向きな兆候が見られた」点を強調。その上で、ソブリンAI(AI基盤を国内で管理し、運用の自律性を確保する考え方)をはじめインフラやデータに関する主権の確立が重要課題になる中、「技術基盤を主体的に管理するために必要な専門人材の確保は急務だ」としている。
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