Database Watch 9月版 Page 1/2

ORACLE MASTERをごっそりマイクロソフト陣営へ


加山恵美
2007/9/13

 オラクルのOracle Database 11gのリリースが間近に迫ってきました。今月は日本オラクルからの発表をお伝えします。加えてマイクロソフトの新バージョン「2008」の話題もあります。今後は商用製品群の新バージョンの話題が続きそうです。

次は「2008」、Microsoft SQL Server

 マイクロソフトは2007年8月21〜24日に開催したTech・Ed 2007 Yokohamaにて、Microsoft Windows Server 2008、Microsoft SQL Server 2008、Microsoft Visual Studio 2008に関する発表を行いました。次は「2008」を冠した製品群が登場します。

 その姿が本格的にお目見えするのは来年です。2008年4月15日からマイクロソフトが業界各社とともに開催するイベント「the Microsoft Conference 2008(MSC 2008)」にて、これらの製品群の日本語版が発表となります。

 まだまだ遠い先のようですが、その姿は徐々に明らかになりつつあります。8月21日から公開されたMicrosoft SQL Server 2008専用サイトには、同製品の特徴が示されています。それによるとMicrosoft SQL Server 2008はSQL Server 2005をベースとし、より安全性、信頼性、可用性、管理性、拡張性の高い統合データプラットフォームであることがうたわれています。

 しかしエンジニアなら新製品を「この目で確かめてみたい」ですよね。現時点ではMicrosoft SQL Server 2008サイトにて、「SQL Server 2008 July CTP」(英語の評価版)やドキュメントが公開されています。日本語版は次のCTP、つまり「SQL Server 2008 CTP 10月版」にて提供開始となる予定です。

SQL Serverは2008でどう進化するか

 もう少し詳しくMicrosoft SQL Server 2008の特徴を見ていきましょう。管理面ではポリシーベースの運用管理の自動化機能、パフォーマンス・チューニング、サイジングのための新しいツールが提供されます。Tech・Ed基調講演ではポリシーベースの運用管理のデモがありました。あらかじめポリシーを設定しておけば、もしポリシーに準拠していないテーブルを作成するスクリプトを実行しようとすると「ポリシーに違反している」とエラーになります。こうしたポリシーベースの運用管理は内部統制を実践する技術となるでしょう。

 アプリケーション開発面ではMicrosoft SQL Server 2008は.NET FrameworkやVisual Studioとの統合が進み、生産性の向上が期待できます。またLINQ(Language Integrated Query:統合言語クエリ)という新しい言語をサポートし、データの実態やSQL言語を意識することなくアプリケーション開発ができるようになります。扱えるデータの幅も広がります。リレーショナルデータ以外のさまざまなデータ、例えばFileStream型、ロケーションをベースとしたデータ型、空間データ型などを格納・検索し、アプリケーションから利用できる技術が搭載されることになります。

 それからもう1つ、マイクロソフトが特に力を入れているのはBI(ビジネス・インテリジェンス)市場の強化です。そのためMicrosoft SQL Server 2008ではデータパーティションやデータ圧縮など大規模データウェアハウスの実現と生産性向上が見込まれています。加えてマイクロソフトはBIを大規模なものだけではなく、社員が普段Excelを使ってデータを分析することも含まれると考えています。そのため2007 Office Systemと完全統合し、全社員がBIを使える基盤を提供するとしています。マイクロソフトの狙うBI市場とは、巨大企業の大規模から個人レベルの小規模まで幅広いものとなっています。

オラクルのエンジニアもいらっしゃい

 さらに9月4日にはMicrosoft SQL Serverのビジネス戦略に関して発表がありました。SQL Serverは1999年の7.0リリース以降、日本市場での出荷数は年平均で約20%の成長率で推移してきたとしていますが、これを加速させて「今後3年間で売上倍増」を目指します。まずは今会計年度の成長戦略として、

  • エンタープライズ市場
  • BI市場
  • 次世代業務プラットフォーム

への取り組み強化を掲げています。

 中でもエンジニアに大いに関係ありそうなエンタープライズ市場に着目しましょう。マイクロソフトはこの市場に攻め入るため、段階別に対策を打ち出しています。「4つのトゲ」です(参考「DB戦争:マイクロソフトがオラクルに仕掛ける4つのトゲ」)。

 準備段階では「ORACLE MASTERリクルートキャンペーン」と銘打ち、オラクルの有資格者にマイクロソフトの認定資格取得を呼びかけ、SQL Serverの分かるエンジニア増を狙います。ORACLE MASTERのSilverとBronze保有者には1日間の「SQL Server 2005早わかりセミナー」無料招待と教科書の無料進呈でMCTS取得者数800人増を狙い、PlatinumとGold保有者には3日間の「SQL Server 2005ブートキャンプ」無料招待とMCP試験のバウチャーチケット無料進呈でMCITP取得者数300人増を狙います。ORACLE MASTER保有者の方々、オラクルとマイクロソフトの二刀流になってはどうですか?

今回の戦略に際し、社内の士気を高めるために作成された入れ墨シール。スティーブ・バルマー氏もこれを貼って気勢を上げたのだという。

 採用段階では競合他社のプラットフォームからの移行で最大50%の販売価格割引キャンペーンを行います。設計段階ではMCS SQL Serverコンサルタントの倍増計画があります。ここも技術者育成の強化となっています。マイクロソフトの学びの場として、

など幅広くトレーニングを提供してエンジニアの技術力を底上げする狙いです。エンジニアとしてもスキルアップの支援をこれほどまで手厚くしてくれるならばありがたいことかもしれませんね。

 導入段階では移行ツールの提供があります。マイクロソフトは9月4日からSQL Server Migration Assistant for Oracle V3.1(英語サイト)の無償提供を始めました。こうしてマイクロソフトはあらゆる段階に打って出ようとしています。かなり攻めの姿勢ですが、こうしたエキサイティングな施策で「業界を活性化させていきたい」という前向きな狙いがあるようです。

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 Index
連載 Database Watch 9月版
ORACLE MASTERをごっそりマイクロソフト陣営へ
Page 1
・次は「2008」、Microsoft SQL Server
・SQL Serverは2008でどう進化するか
・オラクルのエンジニアもいらっしゃい
  Page 2
・「リアル」がウリのOracle Database 11g
・IBM DB2も来年には次バージョンを投入


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