オープンソースEJBサーバのデファクトを目指すJBoss 3
森脇大悟
2003/10/16
本記事は2003年に執筆されたものです。EJB、JBoss全般の最新情報は@IT Java Solutuionのカテゴリ「EJB(エンタープライズJavaBeans)」をご参照ください。 |
本稿ではJavaのアプリケーションサーバであるJBossを紹介する。JBossはフリーでありながら商用製品に劣らない機能を持ち、多くの開発者やユーザーに支持されている使いやすいアプリケーションサーバである。さらに、JBossのアーキテクチャは先進的であり、その動向が広く注目されている。また、プロダクトはフリーでありながら、提供元となる会社が存在し、JBossに関連したコンサルティングサービスなどが提供されているのもユニークだ。
JBossの提供元企業「JBoss Group LLC」 |
JBoss自体の解説の前に、その提供元となるJBoss Group LLC(JBG)について説明しよう。前述のように、プロダクトはフリーでありながら、それを開発・サポートする会社が存在するのがTomcatなどのオープンソースとは異なる特徴である。JBGはフリーソフトウェアを事業の中核に置く、ユニークなビジネスモデルを持つ企業だ。有償のサポートを提供しているので、JBossはフリーソフトウェアと商用製品の2つの顔を持つともいえる。なお、後述するようにJBossのライセンスはLGPLなので、商用利用であってもプロダクトの利用はフリーである。
JBGは、2001年にJBossの開発者であるMarc Fleury氏が興した会社だ。米国ジョージア州アトランタに本社があり、ロサンゼルスやデンバー、シカゴ、サンディエゴに拠点がある。欧州では、スイスに欧州本社があり、オランダやイギリス・スウェーデン・ローマ・イタリアに拠点がある。日本に拠点はない。事業内容は、JBossに関連したサポートやコンサルティング、トレーニング、ドキュメントの販売が主となっている。
JBossグループのホームページ |
現在、JBossの月間のダウンロード数は20万を数え、フリーソフトウェアの中でも人気の高いものである。開発に積極的に携わっている人間は80人程度で、そのうち10人程度がJBGの社員である。
JBossのサポートとコンサルティングを事業に |
まず、サポートやコンサルティングであるが、メールや電話、オンサイトで提供している。例えば、JBoss上で動作するシステムの開発に対するサービスがある。さらに、JBoss自体に手を加えて独自のサーバを開発しようとする際にもそれらのサービスがある。サービスの内容により料金はさまざまであるが、例えば、「50時間1万ドル〜」や「1週間1万ドル〜」といった値が付けられている。サポートを行うコンサルタントはJBossの開発者でもあるので、非常に的確なサポートを受けることができるだろう。ちなみに、コンサルタントは、労働時間の半分をJBossの開発に、もう半分をサービスに当てているそうだ。
次に、ドキュメント販売であるが、JBGが書くJBossのマニュアルの多くが有料となっている。オンラインからPDFのドキュメントを購入でき、定期的に更新される。ドキュメントは数種類あり、開発者向けの全般的なものやクラスタリングといったテーマを絞ったものなどがある。値段はそれぞれ10〜30ドル程度となっている。ただし、99ドルの年間購読もあり、これだとすべてのドキュメントを1年間読むことが可能だ(ドキュメントは頻繁に更新されるので、JBossを使う場合は気兼ねなく読める年間購読をお勧めする)。年間購読した場合、月に1度程度の割合で更新のお知らせメールが届くので、メールに書かれたURLからドキュメント一式をダウンロードする。
JBGの顧客には、フォーチュン1000社に名を連ねる企業など、大企業も多い。マクドナルド、モトローラ、HP、MCI-WorldCom、Playboy.com、EA Games(Sims Online)、アメリカ政府機関、金融機関(銀行やヘッジファンド)などである。
このように、JBGの後ろ盾があるのがJBossの特徴である。そのため、フリーソフトウェアとしてだけでなく、商用製品としての利用もされている。また、JBGの社員技術者が本業としてJBoss開発をリードしているので、安定したプロダクトリリースが可能となっている。もちろんフリーソフトウェアなので、多くの一般の技術者も開発者だ。JBossではフリーソフトウェアとビジネスとが両立しており、プロダクトとユーザーとの間で好循環をもたらしている。
繰り返すが、JBGのサービスを受けるかどうかはユーザーの自由である。JBossというプロダクトそのものはフリーソフトウェアであり、ソースコードも含めてユーザーが自由に扱える。その一方で、ユーザーが望めばJBGから公式サービスを受けることができ、特に法人ユーザーにとっては心強い。個人・法人を問わず利用しやすいのがJBossだ。
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JBoss誕生の経緯 |
では、JBossの紹介に入ろう。まず、簡単に歴史を振り返ってみる。JBossは、1999年にEJBコンテナとしての開発が始まった。初めはEJBossという名前だったが、EJBの商標とまぎらわしいので、現在のJBossという名前に変更されている。JBoss 2でEJB 1.1に対応し、J2EEのアプリケーションサーバとしての機能を備えるようになった。
JBossが広く認知されるようになったのは、2002年、JBoss 2.4が『JavaWorld』誌のBest Application Server賞を受賞したことが契機となっている。JBoss 3でJ2EE 1.3に対応し、現在の最新バージョンはJBoss 3.2.1である。JBossはJavaで書かれているので、JDK 1.3以上が動く環境であれば動作する。
JBossのライセンスはGNU Lesser General Public License(LGPL)であり、実行もソースコードの利用もフリーである。また、JBossのコードを使ったプログラムを作ったとしても、JBossのコードをライブラリとして利用している限りそれは派生物とは見なされず、ソースコードの公開義務はない。
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