連載:IEEE無線規格を整理する(8)
〜ワイヤレスネットワークの最新技術と将来展望〜

もうすぐ実現、ケータイ&無線LANのオールIP化
〜3.5世代携帯電話網とIPネットワーク間連携〜


千葉大学大学院  阪田史郎
2006/4/11


 3.オールIP化の動向

 固定電話と同様、音声通話、回線交換、有料をベースに発展してきた携帯電話網と、インターネットと親和性の良いパケットによるデータ通信、無料を基本とする無線LANでは、要求される通信制御機能がまったく異なる。しかし、利用面からは、広域をカバーする携帯電話網と、個々のLANでカバー範囲が数十mながら第3世代(3G)携帯電話網の10〜数十倍の高速通信を可能にする無線LANとは、互いに補完する関係になっていく。両ネットワーク間の相互連携、ローミング、高速ハンドオーバは、当初データ通信が主体となるが、将来携帯電話網においてもパケットによって音声、動画を通信するようになると、IP電話(VoIP)、ビデオストリーミングのサービスで重要となる。

 携帯電話網と無線LANとの相互連携の前に、これとも密接に関連する、携帯電話網とインターネットとの相互連携については、3GPPと3GPP2の双方において、2000年より検討が行われている。例えば、W-CDMAを第3世代携帯電話網の標準とした3GPPにおいては、オールIP化に関して図6のような機能構成を提示している。無線LANをスコープに含めた検討も徐々に進展しつつある。3GPP2では、2007年ころを目指したオールIP化が進められている。

 図7において、SGSNは、IPルータとして、固定および動的アドレスのサポート、QoS制御を含むセッション管理、暗号と認証、モビリティ管理等の機能を提供する。

図7 3GPPで検討中のオールIPのアーキテクチャ

 GGSNは、GPRS(General Packet Radio Service: GSMをベースとしたパケットによるデータ通信用の第2.5世代携帯電話網サービス)ネットワークと外部のインターネットとの間のゲートウェイとして機能し、GPRSのファイアウォール、GGSN間のローミング管理、ポイント・ツー・マルチポイントサービス等を提供する。MGWは、既存の電話回線を終端し、音声をパケット化、あるいはIPパケットを音声に変換して電話回線に送出する。

 次回は、携帯電話網と無線LANとの相互連携のための6つの段階的シナリオについて具体的に説明する。

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目次:IEEEを整理する(8)
  <page1> 1. 3.5G携帯電話網/3.5G携帯電話網の方向性
  <page2> 2. 第3携帯電話網の新しい動き: TD-CDMA /(1) 上りと下りの速度の割合を自由に調節できる/(2) パワーコントロールが容易/
<page3> 3.オールIP化の動向



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