連載:アニメーションで見るパケット君が住む町(4)
スイッチ登場! 市内ジャンクションの交通整理

綱野衛二
Roads to Node
2009/4/13

 

4-3 衝突が起きない道路事情

 こうして考えてみると、スイッチ君がいると「衝突事故」を完全に防止できるんですね?

スイッチ君「そうだね。条件さえ満たせば、絶対に衝突が起きないよね」

 ふむ。その条件とは次のものですね。

  • スイッチ君のジャンクションとビルをつなぐ道路は2車線である
  • スイッチ君のジャンクションとビルが直接つながっている

 1つ目の条件は先ほど説明しました。2つ目の条件はスイッチ君のジャンクションとビルの間に、スイッチ君がいないジャンクションがあった場合、前回あったように事故が発生してしまうからです。スイッチ君に直接つながってさえいれば、スイッチ君が衝突を防いでくれます。

図4-8 衝突事故が起きる配置と起きない配置(赤のボタンで再生・停止ができます。Flash Playerが必要です)

 この条件を満たしていると、衝突事故が起きません。つまり、事故による送り直しがなくなり、効率が上がります。

 ということは、衝突が起きることが前提で作られたイーサ配送君の「道路監視」と「事故確認」のルールは無意味ってことになりませんか?

イーサ配送君「実はそうなんだ。スイッチ君がいて、事故が起きない道路なら、監視も確認も必要ないからね」

 そうなりますよね。

イーサ配送君「いまはスイッチ君のいるジャンクションが普通だから、いまの市内交通は事故が起きないのが普通。監視と確認のルールがあったのは昔の話ってことだね」

 なるほど。

 事故が起きないだけで、市内交通は大きく様変わりします。一番変わるのは、「道路監視」と「事故確認」のルールがなくなったことです。

 ほかにも、事故が起きないおかげで、完全に両面通行が可能になります。

図4-9 両面通行が可能になった道路事情(赤のボタンで再生・停止ができます。Flash Playerが必要です)

スイッチ君「市内の交通が両面通行になるってことは、『行き』と『帰り』が同時にできるってことだから、単純計算で交通量が2倍になるってことだよ」

 交通量が2倍になる上、事故による送り直しもなくなります。

 従来のジャンクションがあった市内道路事情と比べて格段に効率がアップしますね。

スイッチ君「僕が交通事情を劇的に変化させる、って前回最後で言ったよね?」

 まさにそのとおり、スイッチ君がいるといないでは大きく交通事情が変わりますね。

 スイッチ君のジャンクションは市内交通の「要」となる存在だって分かります。

スイッチ君「うん。市内交通の要となるから、ついでにほかにもいろいろ仕事を任されるんだ。大変だよ」

 スイッチ君のジャンクションは市内の交通の中心となるため、道路事情を改善しようとする場合、スイッチ君のジャンクションで仕事をしてもらうといろいろ便利なんですね。

 例えば、違法なトラックが入り込まないようにチェックしたり、市内を「区」に分割したりなどの仕事を一緒にしてもらうんですね。


 スイッチを使ったLANでは、

  • スイッチとPC、ネットワーク機器が直接接続している
  • LANケーブルとしてUTP・光ファイバが使われている

という条件で、衝突が発生しなくなります。

 UTP・光ファイバが条件にある理由ですが、この2種類のケーブルは「送信」「受信」を同時に行える(送信と受信で信号が交ざらない)仕組みになっているからです。

 前回、CSMA/CDというイーサネットのルールを説明しましたが、衝突が全く発生しない状態ならばこのルールは邪魔なだけです。

 CSMA/CDを使用していると、第2回で説明した半二重通信にならざるを得ません。ですが、衝突が起きないスイッチ環境ならば、全二重での通信が可能になります。

 上でスイッチ君が説明していますが、CSMA/CD(ハブを使ったLAN)なら半二重(片面)、スイッチを使ったLANなら全二重(両面)になる、ということです。

 つまり、スイッチ環境は「CSMA/CDを使う必要がない」環境です。

 よくLAN、つまりイーサネットを勉強すると必ず出てくるキーワードがCSMA/CDなのですが、現在は多くがスイッチ環境のLANですので、実際はCSMA/CDはほとんど使われていません。

 ただし、下位互換性の問題もありますので、CSMA/CD「もできる」機器にはなっています。

 全二重通信が可能ならば、送信・受信が同時に可能になるため、理論的に転送量は2倍になります。また衝突が発生せず、CSMA/CDを使わないため、余計なバックオフ時間などがなく、格段に効率が上がることになります。

 スイッチはこのように現在のLANでは欠かせない機器になっており、LANでは必ず使用されています。そのため、このスイッチにほかの機能を持たせて、LANの環境を改善したりすることもあります。

例えば

  • 不正なPCが接続されないように、正規のPCかどうか確認する「認証」機能
  • スイッチによってネットワークを分割する「VLAN(Virtual LAN)」機能

などが代表的です。


ビントサーフ市の交通事情
4-1 スイッチ君とジャンクション
  4-2 ジャンクションの待機場所
  4-3 衝突が起きない道路事情
  4-4 おさらい〜実際のネットワークに当てはめると


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