いますぐ使える国際化ドメイン名の理論と実践
〜アプリケーションとネットワークのIDNへの対応

米谷嘉朗
JPNIC IDN-TF/NTTソフトウェア
2003/2/11

 2.アプリケーションでの対応方法
   (利用者の対応)

 IDNは、アプリケーションの対応を必要とします。これはつまり、利用者が日本語ドメイン名のWebサイトにアクセスする際には、IDN対応のブラウザを使わなければならない、ということです。残念ながら、ブラウザのみならず、現時点でIDN対応のアプリケーションは1つも存在していません。従って、利用者は将来のどこかの時点で、IDN対応のアプリケーションをインストールしなければなりません。

 さて、その将来のどこかの時点はいつになるでしょうか。また、アプリケーションインストールの手間はどのくらいになるでしょう。

 実は、IDNの利用が最も期待されているブラウザに限っていえば、いつかはいますぐであり、手間もかかりません。それは、既存のブラウザにIDN対応の機能を追加するプラグインなどの補助ソフトウェアが存在しているからです。

 ブラウザと補助ソフトウェアの組み合わせについては、日本語ドメイン名協会のWebサイトに詳しいので詳細を参照してください。

 一方、システム管理者やネットワークオペレータが、pingやwhoisなどのコマンドからIDNのサイトにアクセスする場合はどうするでしょうか。もちろん、将来的にはそれらコマンドをIDN対応のものに入れ替えていくことになりますが、現時点ではPunycodeに変換したIDNをコマンドラインに引数を渡す方法を取ることになります。ここではUNIX利用者を前提としますが、IDNをPunycodeに変換する方法としては、JPNICが配布している国際化ドメイン名ツールキット(idnkit)に含まれるidnconvやrunidnを利用するのが便利です。idnkitは日本で開発されているので、十分な量の日本語のドキュメントがそろっており、簡単に導入できるでしょう。

 idnkitをインストールする際のTipsについて、簡単に触れておきます。

  1. runidnを有効にするには
    configureオプションに--enable-runidnを追加する。
  2. RACEへの変換を可能にするには
    configureオプションに--enable-extra-aceを追加する。
    idnconvを使う際は、コマンドラインオプションに-o RACEを追加する。
  3. idnkit-1.0pr[12]で正式なACE Prefixを生成させるには
    configureオプションに--with-punycode-prefix="x?--"を追加する。
  4. *BSD系でインストールするには
    GNU libiconvを事前にpackagesなどからインストールしておき、 configureオプションに--with-libiconv=/usr/localなどを追加する。

idnkitがインストールされていれば、

csh系: alias idn 'eval `echo \!*|idnconv`'
sh系: idn() eval `echo "$@"|idnconv`

といった設定を初期設定ファイルで行っておくと、日本語ドメイン名を引数にするコマンドは、idnを前置し、

% idn ping 日本語ドメイン名試験.jp
% idn whois -h whois.nic.ad.jp 日本語ドメイン名協会.jp
% idn nslookup ジェーピーニック.jp

のように使用できます。

◆IDN-Admin

 前ページのコラム「国際化ドメイン名と日本語ドメイン名」で、日本語ドメイン名はレジストリの定義によるサービスであると述べた。では、自分が管理しているドメインに日本語ドメイン名を登録したいと考えたとき、どのような定義をすればよいだろうか。

 IDN-Admin-guideline(draft-jseng-idn-admin-02.txt)は、DNSゾーン管理者向けの、IDN管理ガイドラインを示している。IDNそのものは言語や文化といった、地域化(Localization)のための仕組みは持たないが、IDNを利用する側から見れば、自分の慣れ親しんだ言語で書かれたドメイン名であり、そこには多分に文化的背景が含まれる。同じ漢字を使う日本語と中国語でも、文化や地域の差により、その使用法は大きく異なる。IDN-Admin-guidelineは、IDNを言語と関連付けること、言語の定義はその言語で使用可能な文字テーブルで定義すること、異体字など等価な文字は他者に登録されないよう予約されることを提案している。

 このガイドラインは、主にTLD(Top Level Domain)の管理者が参照することを目的としたものだが、すべてのゾーン管理者に適用可能であり、自身の管理するゾーンに登録できる文字を定義することで、無用な混乱や紛争が回避できる。文字の定義は、既存のものを流用するのがよいだろう。

 なお、IDN-Admin-guidelineに沿った文字テーブルの定義は、現在は日本語のもの(draft-yoneya-idn-jpchar-01.txt)しか存在していないが、間もなく中国語のもの、年内には韓国語のものが提案される見込みである。



ページ目次
1 IDN技術の仕組み
2 アプリケーションでの対応方法(利用者の対応)
3 IDN対応のネットワークにする方法(管理者の対応)

関連リンク
  集中連載:DNSの仕組みと運用

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