【トレンド解説】ギネス認定ルータの出現でコア・ルータ業界に異変
次世代ルータ開発に向けて進む業界再編(前編)
鈴木淳也(Junya Suzuki)
2004/7/9
■プロケットとカスピアン
2003年に製品を発表するまで、この2社は「謎のネットワーク・ベンダ」としてごく一部のみにその存在を知られたスタートアップ企業だった。この2社が一部で非常に有名だった理由が2つある。
1つは、両社の創業メンバーだ。プロケットの創業メンバーの1人であるトニー・リー氏は、シスコのルータ製品開発に携わった後、ジュニパーに移って同社躍進のきっかけとなったコア・ルータを開発している。シスコとジュニパー両社のコア・ルータの詳細や弱点などを知り尽くした人物が新しいルータ開発に携わっているのである。そしてカスピアンの創業者ローレンス・ロバーツ氏は、インターネットの原型であるARPAnetを設計した人物である。
理由の2つ目は、投資家からの注目度だ。両社はいまだ製品が未発表であった2003年より前の段階から、数年間にわたって数億ドルもの融資を受けているのだ。特にプロケットだけを見れば、その総金額は2億7200万ドルにも達しており、同業者での注目度はNo.1だったといえる。製品が未発表で、その内容さえ不透明な企業が一部のネットワークの専門家や投資家から大きな注目を浴び、巨額の投資を受けることができたのも、強力な創業メンバーの顔触れと、今後大きな伸びが期待されるハイエンド向けルータに主軸を置いた戦略という2点がポイントだったのだろう。
次世代ルータを開発するという共通の目標はあるものの、両社の次世代ルータ実現のためのアプローチは大きく異なる。プロケットの戦略はジュニパーの方針に非常に近く、ハードウェアによる徹底的な高速化とソフトウェアのモジュール化を推し進めるものである。ハイエンドからローエンドまでチップの共通化を行うことで、高速なルータを安価に提供するのが狙いである。
一方のカスピアンは、ネットワーク上を流れる情報を一連の流れと見る「フローベース」という新しい概念を導入している。これは、従来までエッジ・ルータが担っていたサービス・レベルの保証をコア・ルータに持ち込んだもので、サービス・レベル維持のためにパケット処理速度をひたすらアップするのではなく、限られた帯域内でトラフィック全体のパフォーマンス配分をコントロールするというものだ。これにより、特定のトラフィックに帯域を占有されることなく、例えばVoIPなどのリアルタイム性を要求されるアプリケーションの動作を保証する。
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