【トレンド解説】ギネス認定ルータの出現でコア・ルータ業界に異変
次世代ルータ開発に向けて進む業界再編(前編)
鈴木淳也(Junya Suzuki)
2004/7/9
■シスコの次世代ルータ「CRS-1」
写真 ギネスで認定されたばかりのシスコ「CRS-1」 |
業界シェアではNo.1の地位にあるものの、技術競争ではやや後れを取っていたシスコだが、業界内では同社が「HFR(Huge Fast Router)」と呼ばれる次世代コア・ルータの開発をひそかに行っているという噂が流れていた。それによれば、テラビット級のバックプレーンを持ち、ルータ製品では初となる40Gbits/sのインターフェイスをサポートするという。かん口令が敷かれる中、すでに数年にわたって、同社の次期主力製品開発に力を注いでいるというのだ。シスコはHFRに関する情報には固く口をつぐんでいたが、今年5月末にいよいよ製品発表が行われることになった。
6月25日に、同社の20周年記念会で発表されたこのルータ新製品は「CRS-1(Carrier Routing System-1)」と呼ばれ、これまで同社が採用しなかった(というより、採用できなかった)新しいアーキテクチャを備えたものであった。例えば、ルータ同士を接続してクラスタ化する機能のほか、ソフトウェア部品がモジュラー化された次世代IOS(同社のほとんどの製品に入っているネットワークOS)などはCRS-1で初めて採用されたものであり、これまではライバル企業がシスコ製品と比較してのセールスポイントとして挙げていたものだ。CRS-1の登場をもって、シスコも、ジュニパーらライバル企業が繰り広げる次世代ルータ開発競争に参入したのだ。
CRS-1の業界内での評価はさまざまである。クラスタ構成時に最大で92Tbpsのバックプレーンを備え、40Gbits/sのOC-768インターフェイスをサポートするというのは、業界でも初だ。シャーシ当たり640Gbits/sの処理能力で、その半分のサイズの筐体を持つジュニパーのTシリーズと比較してちょうど倍の性能に当たる。
つまり、容積当たりの性能はライバルと同等ということで、今後数年を戦う基本プラットフォームとしてはやや力不足という意見もある。この分野のルータは、一度製品が登場すると4〜5年間はプラットフォームに大きな変化がなくなる。ジュニパーが同製品を発表したのが2年前であるから、いまでこそ追い抜いているものの、近い将来に抜き返される可能性も十分にある。筐体がラック・サイズと巨大で、性能的にも大規模用途以外に流用できないという、小回りのなさも指摘されている。
いずれにせよ、発表後すぐに導入が進むタイプの製品でもないため、CRS-1の総合評価を行うにはまだ1〜2年の期間が必要だ。すでに一部のキャリアでは試作機を導入してのテストが行われているものの、本格的な普及にはまだ時間がかかるだろう。
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