最新チップセットの機能と性能を探る

5. メイン・メモリ アクセス性能

 

デジタルアドバンテージ 島田広道
2000/10/06

 前ページに引き続き、Intel 815/815Eチップセットのメモリ・サブ・システムの機能や性能について探ってみよう。

PC100メモリとPC133メモリを混在して運用できるか?

 Intel 815/815EチップセットとPC133メモリを搭載したPCを購入した場合、メモリを増設するのにPC100メモリは使い回せないのだろうか? もし可能なら、既存のPC100メモリが活用できるし、PC133メモリを新規に購入するコストを抑えられる(性能については、後述の実験を参照)。前ページで触れたSPD(Serial Presence Detect)によるメモリの自動認識があれば、PC100メモリとPC133メモリを同一のPCに混在させても、自動的にメイン・メモリのクロックを100MHzに設定して動作させる*1、ということが理論上は可能に見える。PC133メモリは100MHzのクロックでも基本的に動作するハズだからだ。

*1 それぞれのメモリ・モジュールを、異なるクロック周波数で駆動することはできない。

 そこで、実際にPC100メモリとPC133メモリを混在させる実験を行ってみた。テスト用マザーボードは前出のASUSTeK Computer社製CUSL2-Mで、プロセッサとメモリの両方とも、クロック周波数などが自動認識されるモードに設定した。

 その結果は、予想どおり、遅い方のPC100に合わせて100MHzのクロックが選ばれた。つまりPC100メモリもPC133メモリも100MHzのクロックで駆動され、正常に動作したわけだ。FSBも133MHzのままで、プロセッサのクロック周波数は下がらなかった(つまり正常だった)。なお、DIPスイッチやBIOSセットアップで手動設定を試みたところ、PC100メモリが混在していても、仕様を超える133MHzのクロックで駆動できてしまった(いわゆるオーバークロックである)。もちろん、このままPCを運用するとメモリが動作不良を起こす可能性がある。手動設定には十分な注意が必要ということだ。

 ただし以上の実験結果は、必ずしもすべてのIntel 815/815Eチップセット搭載PCに適用できるわけではない点に注意されたい。また、異なる速度のメモリ・モジュールを混在させると、微妙な信号タイミングや電気的特性の違いからトラブルを招く可能性もないわけではない。PC100メモリの動作は保証していても、PC100メモリとPC133メモリの混在は保証しないマザーボードもある。それでも、こうしたリスクを知りながら、既存のPC100メモリを活用できる可能性がある、ということは知っておいてもよいだろう。

PC100とPC133の性能差は?

 FSBが133MHzのPentium IIIを搭載したPCで、PC100メモリを利用する場合、気になるのは標準のPC133に対してどれくらい性能が低下するか、という点である。理論的にPC100メモリでは、最大で133対100というクロック比分だけ性能が低下する可能性がある。しかし実環境での性能差が無視できるほど小さければ、わざわざPC133を買い足さなくても、既存のPC100メモリを使い回す価値が増すわけだ(両者の混在が基本的に可能なのは、前述のとおりだ)。

 そこで、アプリケーション・レベルのベンチマーク・テストにより、実際にPC100メモリとPC133メモリの性能差を測定してみた。ベンチマーク・プログラムにはSYSmark 2000を利用している(SYSmark 2000ベンチマーク・テストの詳細は「特集:x86最速プロセッサ Pentium III-1.13GHzの実像に迫る」を参照)。そのほかのテスト環境の詳細については、こちらを参照していただきたい。

PC100とPC133の性能比較

同一のマシンで、FSBを133MHzに固定したまま、メモリを交換してそのクロック周波数を変更し、ベンチマーク・テストを実行した。アプリケーション・レベルでは、それほど両者に大きな差がないことが分かる。

 テスト用PCのプロセッサには、比較的クロック周波数の高いPentium III-866MHz(FSBは133MHz)を採用し、かつ内蔵グラフィックスを選んだので、メモリに対する負荷は比較的高いはずである。テスト前には、メモリの性能差が顕著に表れるのではないかと予想していた。しかし、上のグラフのとおり、PC100とPC133の性能差はせいぜい3%以下に収まっている。クロック周波数の差である33%に比べると、かなり低い値である。ちなみに、AGPグラフィックス・カードを搭載した場合、メイン・メモリへの負荷が下がるためか、性能差は2%弱とさらに下がった。いずれにせよ、ビジネス・アプリケーションを利用する場合、PC100とPC133の性能差は、体感できるほどはないと言える。

 このような結果になった理由の1つは、現在流通しているPC100メモリとPC133メモリの性能差が、クロック周波数の差ほど大きくないことだ。メモリ・チップは、読み出しを要求してから実際にデータがチップから出力されるまでの時間(レイテンシ)が、スペックで定められている。もちろん、ほかのスペックが同一なら、レイテンシの値が小さいほど高速なメモリと言える。さて、通常、PC100のレイテンシが2クロック分、つまり100MHz÷2=50MHz=20nsである。一方、PC133のレイテンシは一般的に3クロック、つまり133MHz÷3=44.3MHz=22.5nsである。つまりレイテンシだけは、PC100の方がわずかに短く、性能が高いのだ。データを連続して転送するときの速度は、PC133の方がクロック比分だけ速いのだが、レイテンシでは若干PC100に劣るため、ベンチマーク・テストでそれほど差が開かないのだ。

 PCベンダによる動作保証がないのが難点だが、PC100メモリが使える(正しく動く)Intel 815/815Eチップセット搭載PCなら、メモリ増設時にPC133を新規に購入せず、PC100メモリを流用してコストを抑えるという手もあるだろう。

 次のページでは、Intel 815Eチップセットでポート数が増設されたUSBについて調べてみよう。

関連記事
x86最速プロセッサ Pentium III-1.13GHzの実像に迫る
マザーボード・ベンダのリンク集

関連リンク
SYSmark 2000の概要


 INDEX
  [実験]最新チップセットの機能と性能を探る
    1. Intel 815/815Eチップセットの概要
    2. Intel 815/815Eのグラフィックス機能
    3. 内蔵グラフィックスの性能を探る
    4. Intel 815/815Eで使えるメモリの種類
  5. メイン・メモリ アクセス性能
    6. 増えたUSBポートの活用方法
    7. 注意すべきそのほかのポイント
    8. 実験時のテスト環境について
 
「PC Insiderの実験」


System Insider フォーラム 新着記事
  • Intelと互換プロセッサとの戦いの歴史を振り返る (2017/6/28)
     Intelのx86が誕生して約40年たつという。x86プロセッサは、互換プロセッサとの戦いでもあった。その歴史を簡単に振り返ってみよう
  • 第204回 人工知能がFPGAに恋する理由 (2017/5/25)
     最近、人工知能(AI)のアクセラレータとしてFPGAを活用する動きがある。なぜCPUやGPUに加えて、FPGAが人工知能に活用されるのだろうか。その理由は?
  • IoT実用化への号砲は鳴った (2017/4/27)
     スタートの号砲が鳴ったようだ。多くのベンダーからIoTを使った実証実験の発表が相次いでいる。あと半年もすれば、実用化へのゴールも見えてくるのだろうか?
  • スパコンの新しい潮流は人工知能にあり? (2017/3/29)
     スパコン関連の発表が続いている。多くが「人工知能」をターゲットにしているようだ。人工知能向けのスパコンとはどのようなものなのか、最近の発表から見ていこう
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

System Insider 記事ランキング

本日 月間