最新チップセットの機能と性能を探る 4. Intel 815/815Eで使えるメモリの種類デジタルアドバンテージ 島田広道 |
Intel 815/815Eチップセットは、Intel製チップセットで初めてPC133メモリをサポートしたものだ。ここでは、Intel 815/815Eチップセット搭載PCで利用できるメイン・メモリやその運用方法などに注目してみる。
使用可能なメイン・メモリはPC100/PC133
Intel 815/815Eチップセットで利用できるメイン・メモリは、PC100(クロック100MHz)またはPC133(クロック133MHz)に対応したSDRAMチップを搭載しているDIMMである。クロック66MHzのPC66メモリはサポートされないし、またSDRAM以外のメモリ・チップもサポートされない。PC66といえば、Celeronと旧来のIntel 440LX/440BXチップセットなどとの組み合わせでは、FSBとメモリ・クロックともに66MHzとなり、PC66メモリを利用できた時期があった。しかし現在では、Intel 815/815EチップセットだけではなくCeleronとよくセットで用いられるIntel 810チップセットのシリーズでも、メモリ・クロックは100MHzとなるので、PC100メモリが必要とされる点は注意が必要だ。
PC100とPC133という2種類のメモリを利用できるように設計されているのは、Pentium IIIにFSBが100MHzのモデルと133MHzのモデルがあるからだろう。例えば1GHz駆動のPentium IIIには、FSBが133MHzのPentium III-1.0B GHz(「B」はFSBが133MHzであることを意味する)と100MHzのPentium III-1.0GHzの2種類が存在する(同じことは800MHzと600MHzのPentium IIIにも言える)。メモリもFSBと同クロックで駆動できた方がよいので、Intel 815/815EはPC100とPC133の両方に対応しているのだろう。では、なぜ766MHz以下のCeleronのFSBが66MHzなのに、PC66はサポートされないのだろうか? おそらく、メイン・メモリにはプロセッサだけではなく内蔵グラフィックスもアクセスするため、PC66の転送レートでは性能が足りない可能性が高い。そこで100MHz以上、つまりPC100以上に制限されたものと推測される。
PC100メモリ(左)とPC133メモリ(右) |
|
どちらもSDRAMチップを搭載したDIMMの一種である。見かけ上はほとんど同じで、シールに記載されたスペックや、SDRAMチップに刻印された型番でしか区別できない。間違えないように注意したい。 |
クロック周波数の組み合わせ
一般的に2つのハードウェア回路の間でデータを転送する場合、両者のクロックがまったく同じ、つまり「クロックが同期」しているとき、速度のロスを最小にできる。つまり性能を上げやすい。これはPCでも同じで、FSBとメイン・メモリのクロック周波数が同期している方が、(回路設計上は)より高い性能を発揮するといわれる。Intel 815/815Eチップセットも、FSBとメイン・メモリのクロックを同期させて稼働できる。FSBが133MHzならメイン・メモリも133MHzで、またFSBが100MHzならメイン・メモリも100MHzで駆動できる。
それだけではなく、Intel 815/815Eチップセットは両者のクロックが同期しないモードも備えている。それはFSBが133MHzでメイン・メモリが100MHzというモードだ*1。これを利用すれば、FSBが133MHzのPentium IIIとPC100メモリを組み合わせて利用できる。まとめると、Intel 815/815EチップセットがサポートするFSBとメイン・メモリのクロック周波数の組み合わせは、下表のとおりだ。
FSBクロック周波数 | 対象プロセッサ | メイン・メモリのクロック周波数 | 対象メイン・メモリ |
66MHz | 766MHz以下のCeleron | 100MHz | PC100メモリ |
100MHz | FSBが100MHzのPentium III、800MHz以上のCeleron(予定) | 100MHz | PC100メモリ |
133MHz | FSBが133MHzのPentium III | 100MHz | PC100メモリ |
133MHz | FSBが133MHzのPentium III | 133MHz | PC133メモリ |
Intel 815/815Eチップセットがサポートするクロック周波数の組み合わせ |
*1 Celeronのために、FSBが66MHzでメイン・メモリが100MHzというモードも用意されているが、ここでは詳細に触れない。 |
FSBとメイン・メモリのクロック周波数を変更する方法は、今回テストに用いた3製品においても、まったく異なっていた。そもそも、クロック周波数は完全に自動設定で、ユーザーによる変更を許さない製品もある。特に大手PCベンダの製品はそうした傾向が強いようだ。またPC100メモリでの動作を保証せず、PC133メモリのみをサポートしているPCも多い。
クロック周波数の設定方法
クロック周波数の組み合わせを変更できるPCでは、一般的にBIOSセットアップやマザーボード上のDIPスイッチでその設定を変更するよう設計されている。たとえばASUSTeK Computer社のCUSL2-Mというマザーボードでは、以下のように両方の設定方法が提供されている*1。
クロック周波数を変更するDIPスイッチ(左)とBIOSセットアップ画面(右) |
|
左のDIPスイッチを用いると、BIOSセットアップでの設定を無視して強制的にクロックを変更できる。逆にDIPスイッチで自動設定にすると、プロセッサやメモリの種類に合わせて全自動でクロックが決定されるようにしたり、BIOSセットアップからクロック周波数を手動で選択したりできる。 |
*1 リテール向けに単体販売されているCUSL2-Mで確認した。 |
上記でメイン・メモリのクロック周波数を「自動設定」すると書いたが、Intel 815/815Eチップセットはどのようにしてメモリの種類を確認しているのだろうか? 実はPC100メモリもPC133メモリも、サポートするクロック周波数や信号タイミングなどのスペック情報を収めたEEPROMを搭載している。チップセットはこのEEPROMから情報を引き出して、メモリ・モジュールのスペックを知り、自動的に適切な設定を行えるのだ。ちなみに、このEEPROMのしくみはSPD(Serial Presence Detect)と呼ばれ、PC100/PC133の規格で標準仕様が定められている。
次のページでは、PC100メモリとPC133メモリが混在可能かどうか、また両者の性能差はどれほどか、実験して確かめてみる。
更新履歴 |
|
|
INDEX | ||
[実験]最新チップセットの機能と性能を探る | ||
1. Intel 815/815Eチップセットの概要 | ||
2. Intel 815/815Eのグラフィックス機能 | ||
3. 内蔵グラフィックスの性能を探る | ||
4. Intel 815/815Eで使えるメモリの種類 | ||
5. メイン・メモリ アクセス性能 | ||
6. 増えたUSBポートの活用方法 | ||
7. 注意すべきそのほかのポイント | ||
8. 実験時のテスト環境について | ||
「PC Insiderの実験」 |
- Intelと互換プロセッサとの戦いの歴史を振り返る (2017/6/28)
Intelのx86が誕生して約40年たつという。x86プロセッサは、互換プロセッサとの戦いでもあった。その歴史を簡単に振り返ってみよう - 第204回 人工知能がFPGAに恋する理由 (2017/5/25)
最近、人工知能(AI)のアクセラレータとしてFPGAを活用する動きがある。なぜCPUやGPUに加えて、FPGAが人工知能に活用されるのだろうか。その理由は? - IoT実用化への号砲は鳴った (2017/4/27)
スタートの号砲が鳴ったようだ。多くのベンダーからIoTを使った実証実験の発表が相次いでいる。あと半年もすれば、実用化へのゴールも見えてくるのだろうか? - スパコンの新しい潮流は人工知能にあり? (2017/3/29)
スパコン関連の発表が続いている。多くが「人工知能」をターゲットにしているようだ。人工知能向けのスパコンとはどのようなものなのか、最近の発表から見ていこう
|
|