最新チップセットの機能と性能を探る

1. Intel 815/815Eチップセットの概要

 

デジタルアドバンテージ 島田広道
2000/10/06

 まずは、IntelがラインアップしているデスクトップPC向けチップセットが、現時点でどのような状況にあるのか確認しておこう。

Intel 815/815Eチップセットの位置付け

 2000年後半の現在、Intel 815/815Eチップセットの登場により、Intelのチップセット・ラインアップは以前よりもシンプルになった(下表)。

セグメント プロセッサ チップセット 対応するメイン・メモリ
ハイエンド(PCワークステーションを含む) Pentium 4 Intel 850 Direct RDRAM(PC600/PC700/PC800メモリ)
Pentium III Intel 840/820/820E Direct RDRAM(PC600/PC700/PC800メモリ)
メインストリーム Pentium III/Celeron Intel 815/815E 133MHz駆動のSDRAMPC133メモリ)
ローエンド(低価格PC) Celeron Intel 810 100MHz駆動のSDRAM(PC100メモリ)
IntelのデスクトップPC向けチップセットの位置付け(2000年後半)

 もともとはIntel 820/820Eチップセットがハイエンドからメインストリームまでカバーする予定だったが、「ニュース解説:動き始めたDDR SDRAMと対抗するRambus」でも触れているように、技術的なトラブルが続いたりDirect RDRAMの価格が下がらなかったりしたせいで、その可能性はほぼなくなった。それどころか、ハイエンド・セグメントもIntel 820/820Eのさらに上位チップのIntel 840が、PCワークステーション・セグメントから下りてきてカバーしているのが現状だ。

 一方、Intel 815/815Eチップセットは順調にメインストリームPCでの採用が広がっており、立派にIntel 820/820Eの代わりを果たしている。これはIntel 810チップセットにはないグラフィックスのアップグレード機能や高速なPC133メモリのサポートといった機能が、PCベンダに受け入れられた結果といえるだろう。Intel 810チップセットは、一時期Pentium IIIと組み合わせてメインストリームPCの一部をカバーしていたのだが、Intel 815/815Eチップセットの登場によって、現在はCeleronと組み合わせて、完全に低価格PC向けに変わった感がある。

Intel 815/815Eチップセットの構成と機能

 Intel 815/815Eチップセットは、以下の写真のように、3つのチップで構成される。

Intel 815/815Eチップセットの構成

左からGMCH(Graphics and Memory Controller Hub)、ICH2(I/O Controller Hub 2)、FWH(FirmWare Hub)。これはIntel 815Eの例で、Intel 815ではICH2の代わりににICHが用いられる。

 GMCH(Graphics and Memory Controller Hub)は、グラフィックス機能を内蔵するほか、メイン・メモリもコントロールする。またプロセッサとのインターフェイスもこのチップが担当する。ICH(I/O Controller Hub)またはICH2は、各種のI/Oデバイスやインターフェイスを内蔵するほか、PCIバスもコントロールする。シリアル・ポートパラレル・ポートなどレガシー・デバイスのコントロールは、ICH/ICH2に接続されるスーパーI/Oチップが担当する。FWH(FirmWare Hub)は、BIOSPOSTのプログラム・コードを格納するフラッシュ・メモリとして利用される。

 これまで「Intel 815/815Eチップセット」と表記してきたとおり、「815」と呼ばれるチップセットには、「815」と「815E」という2種類の製品が存在する。815はIntel 810チップセットでも使われているICH(I/O Controller Hub)を使用するのに対し、815EはICH2(I/O Controller Hub 2)というチップを使用する。そのほかに両者の違いはなく、GMCH(Graphics and Memory Controller Hub)とFWH(FirmWare Hub)の両チップとも同じものが使用される。

 Intel 815EチップセットのICH2には、ICHに比べると、新しい機能が追加されている。具体的には、まずICH2には10BASE-T100BASE-TX対応のイーサネット・コントローラが内蔵されている。外付けの物理層チップ(PHYチップ)によっては、アナログ電話の屋内配線を利用して家庭内LANを実現できるHomePNAもサポートできる。次に、IDEインターフェイスはUltra ATA/100をサポートしている(ICHはUltra ATA/66まで)。USBのポート数も4ポートに増えている(ICHは2ポートまで)ほか、同じく内蔵のサウンド機能も、PCM出力のチャンネル数が6本に増えている(ICHは2本)。

 このようにICHとICH2、つまり815と815Eの差は大きい。その割にPCベンダやマザーボード・ベンダへの販売価格はそれほど違わないのか、現在販売されているPCやマザーボードのほとんどがIntel 815Eチップセットを採用している。そのため本記事でも、実験にはIntel 815Eチップセット搭載PCを使用した。

 Intel 815/815Eチップセットの主な機能を以下に記す。

プロセッサ・インターフェイス プロセッサの種類 Pentium III/Celeron
FSBのクロック周波数 66MHz/100MHz/133MHz
スロット/ソケット Socket 370
メモリ・コントローラ 対応メモリ PC100/PC133メモリ(100MHz/133MHz駆動のSDRAM DIMM
最大メモリ容量 512Mbytes
ECCサポート なし
DIMMの実装枚数 133MHz駆動時:ダブル・サイドDIMM×2、シングル・サイドDIMM×3
100MHz駆動時:ダブル・サイドDIMM×3
内蔵グラフィックス アクセラレーション 2D/3Dグラフィックス
最大解像度*1 1600×1200ドット、256色、リフレッシュ・レート85Hz
最大同時発色数*1 1280×1025ドット、1677万色、リフレッシュ・レート85Hz
インターフェイス アナログRGB出力、デジタルCRT出力、TV用デジタル出力
グラフィックス・メモリ メイン・メモリを共用。ほかに4Mbytesのディスプレイ・キャッシュを追加可能
内蔵RAMDAC 最大ドットクロック230MHz
AGPインターフェイス 対応規格 AGP 2.0(AGP 4xや1.5V振幅の信号などに対応)
接続可能なカード数 1枚
内蔵IDEインターフェイス ポート数 2ポート(最大4デバイスまで接続可能)
対応規格 815:Ultra ATA/66、815E:Ultra ATA/100
内蔵ネットワーク・コントローラ(815Eのみ) 対応ネットワーク 10BASE-T/100BASE-TXイーサネット、HomePNA(1Mbits/s)
データリンク層 内蔵コントローラでサポート
物理層 PHYチップを外付けする必要あり(このチップでネットワーク媒体を選択する)
内蔵オーディオ・コントローラ 対応規格 AC(オーディオ・コーデック)’97 2.1
モデム アナログ・モデムをソフトウェアでサポート可能
PCM出力チャンネル数 815:2チャンネル、815E:6チャンネル
内蔵USBホスト・コントローラ コントローラ数 815:1つ、815E:2つ
最大ポート数 815:2ポート、815E:4ポート
対応規格 USB 1.1
PCIバス コントローラ ICH/ICH2に内蔵
バスマスタ数 最大6デバイス
対応規格 PCI 2.2(32bitバス/33MHzクロック)
そのほか レガシーI/O スーパーI/Oチップを外付けして対応
Intel 815/815Eチップセットの主な機能
*1 アナログRGB出力の場合。デジタルCRTインターフェイスを利用する場合は、最大1024×768ドットに下がる。

 次のページからは、Intel 815/815E搭載PCが備えている重要な機能や注目の機能について、実験をしながら、そのメリットを実際に確かめていく。

関連記事

動き始めたDDR SDRAMと対抗するRambus
インテル・サイトのリンク集

関連リンク
チップセットのホームページ
 
 
 INDEX
  [実験]最新チップセットの機能と性能を探る
  1. Intel 815/815Eチップセットの概要
    2. Intel 815/815Eのグラフィックス機能
    3. 内蔵グラフィックスの性能を探る
    4. Intel 815/815Eで使えるメモリの種類
    5. メイン・メモリ アクセス性能
    6. 増えたUSBポートの活用方法
    7. 注意すべきそのほかのポイント
    8. 実験時のテスト環境について
 
「PC Insiderの実験」


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