最新チップセットの機能と性能を探る 7. 注意すべきそのほかのポイントデジタルアドバンテージ 島田広道 |
最後に、Intel 815Eチップセット搭載PCを管理・運用するうえで、これまで触れなかった注意すべき点を以下にまとめよう。
CNRスロットの使い道
CNR(Communication and Network Riser)とは、Intelが提唱する拡張カード規格の一種で、Intel 815/815Eチップセットと同時にデビューした新しいものだ。イーサネットやHomePNAなどのネットワークのほか、オーディオ、モデムといった機能のうち、デジタル回路の部分はマザーボードに実装し、アナログ部分を拡張カードに実装するというものだ。従来のAMR(Audio/Modem Riser)を置き換える後継の規格と見なされている。多くのIntel 815/815E搭載PCには、このCNRスロットが装備されている。
CNRスロットの例(赤線枠内) |
これはASUSTeK Computer社のCUSL2-Mというマザーボードに実装されているCNRスロット。 |
CNRの目的は、PCベンダが単一のマザーボードと各種CNRカードを組み合わせることで、製造コストを抑えつつPCのラインアップを用意できるようにすることだ。Intel 815Eチップセットを搭載したマザーボードの場合、例えばネットワーク機能が必要なPCには、イーサネット対応のCNRカードを装着して出荷し、ネットワークが不要ならCNRスロットを空きのまま出荷できる。このときマザーボードは1種類でよい。PCIカードでネットワーク機能を実装するのに比べると、CNRカードは物理層チップ(PHYチップ)とコネクタぐらいしか搭載しないので製造コストは安く、またイーサネット・コントローラはチップセットに内蔵されているため、チップセットのコストさえ安価ならPCIカードよりずっと安価に実装できる。
このように、CNRはPCベンダ向けに考案された機能であり、エンド・ユーザーの利便性を直接意識したものではない。Intelも、PCIなどの汎用的な拡張スロットとは異なり、CNRスロットはエンド・ユーザーによる拡張手段ではない、としている。PCIカードのようにCNRカードが市販製品としてリテール市場に流通することはほとんどないと思われる。実際、10BASE-T/100BASE-TX イーサネットの物理層チップ(PHYチップ)を搭載したIntel製CNRカード(Intel PRO/100VE)は、基本的に5個または20個パックでPCベンダやSI(システム・インテグレータ)、大企業の情報部門だけに販売されている(海外のPCショップから通販で入手することは可能なようだが)。
将来性という点でも不安要素がないわけではない。AMDのAthlon/Duronプロセッサを用いたプラットフォームでは、CNRではなく未だAMRが利用されている。そしてその後継として、Intelと対抗するAMD陣営はACR(Advanced Communication Riser)という別の規格を推進しているのだ。将来CNRがACRを抑えて普及するかどうかは、まだ未知数である。
結論としては、CNRをPCIのように汎用的な拡張バス規格としてとらえるべきではない。購入するPCに空きのCNRスロットがあったとしても、後からそこに安価なCNRカードを装着してコストを抑えつつ機能を拡張できる、とは考えない方が無難だ。
既存の拡張カードとの互換性
新しいチップセットが登場したとき、エンド・ユーザーのレベルで必ず問題になるのが、PCIカードなどの拡張カードとの互換性だ。当然だが、既存のPCIカードは新しいチップセットでテストされていない。そのため、微妙な仕様の差から互換性がきちんととれず、拡張カードが正しく動かないことがある。Intel 815/815Eチップセットが登場したのは2000年6月とまだ間もないことから、インターネット上ではこうした互換性問題の報告が散見される。具体的には、PCI対応のキャプチャ・カードが正しく動かない、という例があるようだ。
新発売の拡張カードでも、開発スケジュールやベンダの体制によっては、Intel 815/815Eチップセットでの動作確認がなされていない可能性もある。特にビジネス用途で購入するにあたっては、事前にIntel 815/815Eチップセットで正しく動作することを、拡張カードのベンダに確認するようにしたい。
OSとの互換性
最新のWindows MeはIntel 815/815Eチップセットを認識するが、Windows 2000とそれ以前のWindows 9xは認識しない。そのため、新規にこれらのOSをIntel 815/815Eチップセット搭載PCにインストールする場合は、PCベンダあるいはIntelが提供しているINFファイルのアップデート・プログラムを、OSのインストール後に適用する必要がある。さもないと、不具合が生じる場合がある。
またICH2(I/O Controller Hub 2)に内蔵されているIDEインターフェイスやイーサネット・コントローラを利用するには、基本的にPCベンダまたはIntelから提供されている最新のドライバをインストールした方がよいだろう。ICH2はICHに対して上位互換性があり、ICHにしか対応していない古いバージョンのドライバでも、ICH2でそこそこ動作する場合もある。しかし、それではICH2で追加・拡張された機能が利用できない可能性があるので、最新ドライバの使用が望ましい。
次のページでは、本記事で使用したベンチマーク・テスト用PCやベンチマーク・プログラム、およびテスト時の環境などの詳細を記す。
関連リンク | |
CNR(Communication and Network Riser)の情報が掲載されているページ | |
ACR(Advanced Communication Riser)の規格策定を行っている団体のホームページ | |
Intel製チップセットのドライバやユーティリティが掲載されているページ |
「PC Insiderの実験」 |
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