第5回 読者調査結果
読者に聞いた「不況でも買いたいハードウェア」

小柴 豊
アットマーク・アイティ マーケティングサービス担当
2001/12/13

 2001年10月31日、電子情報技術産業協会(JEITA)の発表した「わが国におけるパーソナルコンピュータの平成13年度上半期出荷実績」によると、平成13年度上半期の国内PC本体出荷台数は、前年度比90%の506万6000台、また第2四半期だけで見ると同79%の227万3000台にまで落ち込んだという。不況の坂を転げ落ちる不安感が漂うPC業界であるが、果たしてユーザー・サイドの意識に変化はあるのだろうか? PC Insiderで実施した「第5回 読者調査」から、2001年末/年度末のハードウェア製品購入意向を検証してみよう。

パワー・ユーザー需要は不況に強い? 

 そもそも昨今の経済状況は、ユーザーのハードウェア関連製品導入意欲にどの程度影響(購入延期/中止など)しているのだろうか? 読者個人および勤務先の双方における状況を聞いた結果がグラフ1である。これから分かるように、勤務先では「大変影響を受けている」「ある程度は影響を受けている」の2つを合わせて、55%が景気の影響を認めている。それに対して読者個人では、「(あまり+まったく)影響は受けていない」との回答が70%を超えており、勤務先に比べて不況の影が薄いことが注目される。

グラフ1 ハードウェア製品導入における景気の影響(N=212)

 ちなみに前述のJEITAの発表では、「ビジネス系需要は、企業の情報化投資や電子商取引の普及により堅調に推移したものの、コンシューマ系は個人消費低迷長期化の影響を受けることになった」と分析されており、グラフ1とは正反対の分析が行われている。確かにここ数年市場を盛り上げてきた「インターネット入門者層」によるPC需要は、景気の影響で落ち込んだ(あるいは一巡した?)のかもしれない。同層をターゲットにした雑誌の販売部数も、軒並み減少している。しかし個人市場の中でも、当フォーラムにアクセスするようなパワー・ユーザー層の需要は、現在程度の不況で萎えるほどヤワではないといえそうだ。PC関連ハードウェア・ベンダにおいては、いまこそニーズを反映した製品開発やCRM*1などのマーケティング手法により、こうしたパワー・ユーザーの根強い需要に応えていくべきではないだろうか。

*1 Customer Relationship Management:顧客関係管理とも呼ばれ、顧客を中心に情報を統合管理することで、メーケティング活動や製品開発などに利用する経営手法。

PC本体:Pentium 4搭載PCとWindows XPにより需要が高まる

 続いて、読者個人および勤務先において「今後6カ月以内に購入が見込まれるハードウェア製品」を、カテゴリごとに紹介していこう。まずはPC本体の結果を示したのがグラフ2である。個人/勤務先とも「Pentium 4搭載デスクトップPC」の購入意向が高いほか、勤務先では個人に比べて「オールインワン・ノートPC」および「Pentium III搭載デスクトップPC」のポイントが高いのが特徴だ。

グラフ2 個人と勤務先のハードウェア導入意向:PC(複数回答 N=212)

読者のコメント〜Pentium 4搭載デスクトップPCの購入理由〜

  • Windows XPに備えてのマシンのスペック・アップ(個人)
  • DDR SDRAM対応チップセットがリリースされる予定だから(個人)
  • Java開発がメインとなりつつある。高スペックが必要(勤務先)

サーバ:低価格PCサーバ、この価格なら実験/勉強用にも

 次にサーバ製品について見ると、勤務先で「低価格PCサーバ(20万円以下)」の購入意向が30%を超えている点が注目される(グラフ3)。また低価格PCサーバは個人においても10%弱が購入意向を示しており、今後多方面での普及が予想されそうだ。

グラフ3 個人と勤務先のハードウェア導入意向:サーバ(複数回答 N=212)

読者のコメント〜低価格PCサーバの購入理由〜

  • ネットワークの設定変更・動作試験・実験に用いるため(勤務先)
  • 現在オールインワン・サーバになっているので機能を分散したい(勤務先)
  • Webアプリ開発・メンテナンスの技術取得のため(個人)

外部記憶装置:基本はハードディスク、個人ではDVD+RWも人気

 外部記憶装置のカテゴリでは、個人/勤務先とも「ハードディスク」のポイントが最高となった(グラフ4)。低価格/大容量化が進んでいるうえ、IEEE 1394やUSB接続など気軽に増設できるインターフェイスを備えた製品が増えていることも人気の理由だろう。ハードディスク以外では、勤務先で「RAIDシステム」、個人で「DVD+RWドライブ」の購入意向がそれぞれ高い特徴がある。

グラフ4 個人と勤務先のハードウェア導入意向:外部記憶装置(複数回答 N=212)

通信/ネットワーク関連装置:ポイントは「ブロードバンド+無線LAN」

 続いては通信/ネットワーク関連装置を見てみよう(グラフ5)。ADSLなどのブロードバンド環境が普及しはじめた2001年を象徴するように、個人では「ブロードバンド・ルータ」購入意向が約30%に達した。またIEEE 802.11b対応PCや街頭ホットスポットの登場が話題になる中、個人/勤務先問わず「無線LANアクセス・ポイント/無線LANカード」への需要が高まっているようだ。

グラフ5 個人と勤務先のハードウェア導入意向:通信/ネットワーク関連装置(複数回答 N=212)

読者のコメント〜ネットワーク関連装置の購入理由〜

  • ISDN回線からADSLに乗り換えるため。(個人:BBルータ)
  • 冬寒くなるので、こたつでインターネットするために(個人:無線LAN)
  • 離れた部署とのネットワーク接続(勤務先:無線LAN)
  • 無線LAN+PDA+バーコード・リーダの組み合わせで物流管理システムを開発予定(勤務先:無線LAN)

そのほか周辺機器

 そのほかの周辺機器の中では、ディスプレイ類で個人/勤務先とも「液晶ディスプレイ」の導入意向が「CRTディスプレイ」を大きく上回っている点が注目される(グラフ6)。液晶の価格低下が、ストレートに需要増に反映されているようだ。記事の終わり

グラフ6 個人と勤務先のハードウェア導入意向:そのほかの周辺機器(複数回答 N=212)
 

  調査概要
調査方法
PC InsiderサイトからリンクしたWebアンケート
調査期間
2001年10月9日〜11月5日
有効回答数
212件

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第2回 データで読むItanium/アプライアンス・サーバの受容性
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第4回 ―ブロードバンドが当たり前?―読者の自宅/SOHOのインターネット事情
 
「PC Insiderの読者調査結果」



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