中間物流におけるRFIDの可能性、
トーヨーカネツソリューションズ
柏木 恵子
2007年8月27日
キーワードはリターナブルとリライタブル
――RFIDを使った見える化とは
岩瀬 現在、NoisyラボにてEPCISを使った物流のトレーサビリティ、見える化のデモをお見せしています。これをバーコードを使ったシステムで実現しようとしても、すべてのバーコードを自動的に読むことができないので不可能でしょう。
ところが、RFIDを使えば人間が意識しなくてもRFIDタグを読むことができます。例えば、従来の入荷検品では梱包を解いて、商品1つ1つのバーコードをハンディスキャナで読んでいました。RFIDを使えば、梱包を解かないままの状態で、そのままどんと通せば読めるようになるでしょう。こうなると物流のビジネスは変わります。
ここで、「RFIDタグがパーフェクトに読めるのか」ということが話題になります。しかし、常に100%の読み取り率である必要はありません。例えば、100%が求められるのは、メーカーから届いた製品を仕分けして、1つのパレットに混載させるパレタイジングがあります。
Noisyラボでは、HPで導入しているのと同様の回転式の作業台を使って、荷物を回すことでRFIDタグに対する電波の死角をなくして100%の読み取りを実現しています。そして、パレットに割り当てたID(SSCC)と個品のIDをひも付けてしまえば、後はどれか1つのRFIDタグを読み取るだけで、業務に支障は生じません。そういうことを、ラボで実感していただきたいと思っています。
――RFIDを物流現場で使うことの課題は
岩瀬 中間物流業者が商品自体にRFIDタグを張り付けることはできないでしょう。それ故、メーカーが張り付けたRFIDタグを利用させてもらうことになります。
一方、通い箱やクレートといった物流容器やパレットに対してならばRFIDタグで管理できます。これらは再利用可能といいますか、リターナブルな資産になりますのでコスト面でも負担は軽くなるでしょう。昨今のトレンドとして環境への取り組みも注目されていますので、「リターナブル」は重要なキーワードになります。
となると、「通い箱がリターナブルなのに、RFIDタグが使い捨て」というのは、うまい話ではありません。そこで弊社がRFIDと並行して取り組んでいるのが「リライタブルラベルシステム」です。「リターナブル」「リライタブル」があってこそのRFIDです。UHF帯のRFIDタグだけだったら、ここまで力を入れていなかったかもしれません。たまたま、RFIDタグとリライタブルラベルの話が同じ時期に出てきたということが大きかったですね。
――リライタブルラベルシステムへの取り組みとは
岩瀬 実は、リライタブル技術についても、何年か前に目を付けて取り組んでいたことがあるのですが、当時はリライトのスピードが遅かったため実用的ではないと判断し、断念した経緯があります。最近になって、「リコーが面白いものを実用化している」と聞いて、実際に見に行きました。「リライタブル技術はここまで進んだのか」と驚きましたね。
弊社のリライタブルラベルシステム「ラベループ」では500回のリライトが可能です。実際には、1000回リライトしてもラベルに書かれたことを読むことができます。さすがにバーコードの可読率は落ちてしまいますが、RFIDチップが付いていますし、文字情報は読めますから、バーコードは副次的なものになっています。
中間物流でのブレークは標準化が鍵
――Noisyラボの見学者の反応は
岩瀬 反響は非常によいのですが、反響だけなところがツライところなのです(笑)。日本を代表する自動車メーカーのいくつかも見に来ていますし、自社で取り扱っているモノを実際に持ち込まれて真摯に検証されている企業もあります。
自社だけ、あるいはグループ内だけの物流システムであればRFIDが導入できるところまで来ています。しかし、企業間をまたがる物流となると……。これを解決するのは、標準化しかないと思っています。きちんとした情報システムを持っているのも大手企業に限られますし、まだ機が熟していないのでしょう。
大手の物流業者の中には、インターネットを使って荷物の追跡ができるサービスを展開されているところもあります。しかし、それは、その企業のWebサイトにアクセスして、その企業が運んでいる荷物しか見られないクローズドなものです。
私がなぜEPCにこだわっているのかといえば、国際物流の中でどこからでも情報インフラとして使えるシステムを標準化しようとしているからです。全体を標準化しないと、個別の情報インフラという枠組みから進めないでしょう。
だからこそ、Noisyラボでは意識的にEPCISを使ったデモを使って、「将来、こういうことができるようになりますよ」とお見せしているのです。誰でもがネットサーフィンをするように、見たいものを見られるようにするというのが、私の夢の1つです。
――そのような世界は、いつ頃実現しそうですか
岩瀬 それは1企業の人間がいう話ではないと思いますが、やはりコストがネックになるでしょうね。例えば、RFIDタグの値段やEPCグローバルネットワークの利用料などは、まだ高いと思っています。
正直なところ、中間物流におけるサプライチェーンマネジメント(SCM)システムの構築は停滞していますが、リターナブル資産管理の実現は早いと思います。
いままでRFIDシステムに対して予算を付けていた企業も、それが難しくなってきているようです。そこで、「環境問題」とか「クリーン」「エコ」といったキーワードに予算を付けていくことになるでしょう。
夢を実現するには、まず小さな成功です。「Start small! But, start now!」ですよ。
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