第2回
RFIDミドルウェアを知り、使いこなす
吉田 光伸
日本オラクル株式会社
システム製品統括本部
アドバンストソリューション本部
RFIDビジネス推進部
部長
2006年8月16日
RFIDの技術的な理解は進んだ。これからは、RFIDを使ってどのようなシステムを構築していくべきかが問われる。RFIDシステム構築エンジニアに必要なスキルと知識を解説する(編集部)
第1回「RFIDエンジニアが抱える課題から生まれてきたもの」では、RFIDシステムにおいて考慮すべき課題と、ミドルウェア誕生の経緯、その必要性に関して説明しました。今回は具体的にRFIDミドルウェアにはどういった機能があり、システム構築においてどういったメリットを享受できるかを明らかにしたいと思います。
なぜRFIDミドルウェアが必要なのか
よくお客さまから「RFIDミドルウェアって何なの?」「RFIDシステム構築に必要なものなの?」といった質問が寄せられます(ソフトウェアベンダにとっては非常に悲しい質問ですが……)。
一般的なシステムインテグレーションにおいて、確かにミドルウェアはなくてもシステム構築は可能です。すべてのシステムをフルスクラッチで開発すればよいだけの話です。
ただし、そのためには膨大な工数がかかり、がちがちに作り込まれて完成したシステムは柔軟性が欠如します。また、RFIDの場合、現在、仕様が策定中のものもあり、標準化仕様(EPCglobal)に準拠するための随時バージョンアップなどなど、あらゆる作業がずっしりとエンジニアの肩にのしかかってきます。
実証実験の場合は、「取りあえず手作りで対応してもいいじゃないか」という意見もありますが、実証実験とは本番運用を前提に構築するものであり、実験用に開発したシステムを捨てるのはあまりにももったいない話です。
最初からハードウェアレイヤとソフトウェアレイヤのつなぎの部分にRFIDミドルウェアを選択しておけば、本番用の機器が変更されても、あるいは実験と本番でアプリケーションの仕様が変更されても、そのままスムーズに本番環境への移行、つまりスケーラビリティの確保が可能となります。システムのTCO(総所有コスト)を考えれば、RFIDミドルウェアを採用した方が圧倒的に有利になります。
さまざまな見解はあると思いますが、RFIDミドルウェアを利用するということは最終的に時間をお金で買うということに近いニュアンスでとらえていただいて結構かと思います。ソフトウェアベンダが上記の課題をカバーした形でソフトウェアを提供しているわけです。そういったツールを活用した方がはるかに効率的で、効果的なRFIDシステムを構築可能になります。
前回、RFIDミドルウェアの一般的な機能に関しては説明いたしましたが、さまざまなベンダからミドルウェアが提供されており、システムエンジニアの間では何を選んでよいのか分からず非常に混乱しているという話をよく聞きます。そこで、より具体的にRFIDミドルウェアの機能の説明を行います。下記のRFIDミドルウェアの概念図をご覧ください。
RFIDミドルウェア概念図(画像をクリックすると拡大します) |
ドライバ層の役割と必要性
ドライバ層とは第1回で説明したハードウェア抽象化レイヤのことです。システムエンジニアは、RFIDデバイスのコマンド仕様、コマンドのシーケンス、動作の癖などを熟知せずとも、RFIDミドルウェア側で提供されているドライバプログラム(デバイスドライバ)を選択することにより、RFIDデバイスを動作させ、リーダからの情報をミドルウェア側に吸い上げることが可能になります。
例えば、日本オラクルではRFIDミドルウェア製品として「Oracle Sensor Edge Server」を2005年より出荷しています。次の画面は、管理画面からRFIDリーダのデバイスドライバを選択している様子です。このようなLook and Feelのユーザーインターフェイスで設定項目の中でデバイスを選択することにより、スクラッチ開発なしでハードウェアレイヤとのインテグレーションを完成させ、RFID情報のキャプチャリングが可能になります。
Orcle Sensor Edge Server管理画面で接続するRFIDデバイスのドライバを選択 |
余談ですが、日本市場は米国と違って、RFIDリーダ/ライタのデファクトスタンダードがまだまだ決まっておらず、群雄割拠の時代です。米国ではAlien、Symbol、Samsys、IntermecのデバイスのいずれかでほとんどのRFIDシステムが構築されているという4強の様相があります(近年、その均衡が崩れてきていますが……)。
しかし、われわれの経験に基づけば、日本のユーザーのRFIDシステムに利用されるRFIDリーダ/ライタのメーカーはまちまちです。とはいえ、このような状況に適用するために、RFIDミドルウェア側で世界中のすべてのデバイスに対応することは不可能です。
従って、ミドルウェア側で提供されるデバイスドライバだけではなく、自分でデバイスドライバを容易に開発することができる開発フレームワークも今後非常に重要になってきます。
また、近年のRFIDシステムはただRFIDタグを読むだけでなく、RFIDラベルの発行(RFIDラベルプリンタ)や、リーダ/ライタでRFIDタグを読み取った後にビジネスロジックと照合して、OKであればパトライトの青を光らせる、もしくはメッセージボードにOKの文字を表示するといった多様なセンサー群との連携も多く発生しています。エンドユーザーの要求にもよりますが、このような業務フロー、センサー対応に関してもベンダに確認することが大事です。
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Index | |
RFIDミドルウェアを知り、使いこなす | |
Page1 なぜRFIDミドルウェアが必要なのか ドライバ層の役割と必要性 |
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Page2 フィルタリング層の役割と必要性 ディスパッチャー層の役割と必要性 |
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Page3 RFIDミドルウェア選定に役立つチェック項目 |
RFIDシステム構築エンジニアへの道 連載インデックス |
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