第2回
RFIDミドルウェアを知り、使いこなす
吉田 光伸
日本オラクル株式会社
システム製品統括本部
アドバンストソリューション本部
RFIDビジネス推進部
部長
2006年8月16日
フィルタリング層の役割と必要性
「フィルタリングはなぜ必要なの?」という質問もよく寄せられます。ここではRFIDとバーコードの違いをよく理解しておく必要があります。
RFIDはバーコードと違い、リーダ/ライタから電波が定期的にポーリングされ、RFIDチップがその電波を受けて起動し、変電波を経由してリーダ/ライタに情報が送られる仕組みです。
一般的に電波は数ミリ秒単位でリーダ/ライタから放出されており、その都度RFIDチップから同一の情報が送られてきます。つまり、リーダ/ライタの前にかざされたRFIDタグからは同じ情報(IDなど)が数秒間に何百回も返ってきてしまうのです。
そのまますべての情報をRFIDミドルウェアで取得して、バックエンドシステム側に送る必要があるでしょうか。
往々にしてバックエンドシステムが欲しい情報は、リーダ/ライタの前をどのタグが通過したか、もしくはどのタグがリーダ/ライタの前から消えたかといったビジネスイベント情報なのです。数百個の同一IDはバックエンドシステムには不要です。フィルタリング層はユースケースに応じて、取得したデータを適正な形にするロジックなのです。
例えば、ゲートシステムにおいて、RFIDタグが取り付けられた10枚のパレットを入庫した際に、ミドルウェア側に送られてくるデータは、それぞれのパレットに添付されたRFIDタグのID×数百〜数千(電波のポーリング間隔による)といった膨大なイベントデータになります。
フィルタリングロジックを付け加えることにより、それぞれのRFIDタグの1つ目のID情報だけをバックエンドに送信し、ほかの同一イベントはフィルタリング(間引く)できます。これによりバックエンドシステムのトランザクション削減だけでなく、ネットワークトラフィックの削減にもつながります。
このほかにも棚用(スマートシェルフ)のフィルタリングロジック、読み取り率を上げるために複数アンテナを使った際のフィルタリングロジックなどさまざまなものがあります。また、トランザクション削減という意味ではありませんが、パレットとその上に積載される個品情報のひも付けのためのビジネスロジックに似たフィルタリングロジックもあります。
エンドユーザーのシステムにおける業務イメージを理解し、どのフィルタリングロジックが必要なのか、また、エンドユーザーのフィルタリングロジックの仕様が複雑な場合は、それを開発可能なフレームワークがミドルウェア側で存在するのかといった見極めが重要になります。
ディスパッチャー層の役割と必要性
ディスパッチャー層(データ配信レイヤ)とは、RFIDミドルウェアと既存システム、新規アプリケーションとのインターフェイスに当たります。ドライバ層で取得したRFIDのタグ情報を、フィルタリング層でフィルタリング、適正化、正規化した後、既存システム、新規アプリケーションに渡していくための橋渡し役です。
どういった形でデータを渡していくのかはシステムごとに異なります。例えば、RFIDミドルウェアの後ろにデータベースを用意しておき、取得したRFIDタグのID情報を直接データベースに書き込むケースもあるでしょうし、すでに稼働しているWebアプリケーションに対してSOAPもしくはJMSなどでメッセージングしていくこともあるでしょう。
また、近年ではEPCglobalネットワークを活用した実証実験も増えてきています。倉庫側、工場側にRFIDミドルウェアを設置し、読み取ったEPCのデータをインターネット経由でEPC Information Services(EPC IS)に接続してデータを登録するケースもあります。自分の構築するシステムがどのようなケースなのかを把握し、それに対応するディスパッチャーを保有するミドルウェアを選択することが重要です。
もう1つ重要なポイントとして、データを渡すだけでなく、バックエンドシステムがデータを受け付けられない状態であっても、キューなどを使ってRFIDミドルウェア側でデータを保証する仕組みがあるかどうかも挙げられます。もちろん、どういったプロトコルをサポートしているか、どういったフローでデータが送信されるのかも確認しましょう。
この部分は往々にして開発が必要なことが多いので、テンプレートもしくは開発フレームワークの有無を確認することも重要です。
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Index | |
RFIDミドルウェアを知り、使いこなす | |
Page1 なぜRFIDミドルウェアが必要なのか ドライバ層の役割と必要性 |
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Page2 フィルタリング層の役割と必要性 ディスパッチャー層の役割と必要性 |
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Page3 RFIDミドルウェア選定に役立つチェック項目 |
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