第2回 RFIDミドルウェアの機能と今後の方向性


高橋 成文
株式会社NTTデータ
技術開発本部
SIアーキテクチャ開発センタ
部長
2006年6月28日
WebがWeb2.0へとシフトするのと同様に、RFIDもRFID2.0へと進化する可能性を秘めている。標準化されたRFIDの仕様や開発事例を引きながらRFID2.0のポテンシャルを探る(編集部)

 サービスを支えるミドルウェア機能

 モノ・人に付帯するRFIDが地理的に移動し、その過程で保存される履歴情報が最適化や効率化、安全・安心サービスなどに活用される。このため、多くのサービスは、移動するモノ・人を捕捉したい場所にRFIDリーダ(または、リーダ/ライタ)を設置し、捕捉情報を収集・管理し、アプリケーションに情報を提供するRFIDネットワークを構成する必要に迫られる。

 このRFIDネットワークを構成する際に、ハードウェアの違いの吸収や、アプリケーションの開発、運用を容易にする仕組みを提供するソフトウェアをRFIDミドルウェアと呼ぶ。今回は、第1回「進むRFID標準化と実証実験」で述べたRFID1.0(RFID黎明期)、1.5(RFID普及期)、2.0(RFID革新期)への進化の定義を用いて、ミドルウェア機能の進化について述べたいと思う。

・RFID1.0時代のミドルウェア

 企業内に閉じて最適化や効率化を実現するためのアプリケーション構築に必要な機能が準備される。利用されるRFIDやリーダは単一ハードウェアの場合が多く、ネットワークはLANや独自ネットワークがベースとなる。

・RFID1.5時代のミドルウェア

 あらかじめ合意した複数の企業が最適化や効率化のために共同でアプリケーションを構築するために必要な機能が準備される。利用されるRFIDは単一だが、リーダは各社の事情で異なるハードウェアが採用される場合がある。情報の収集・管理に共同センターを持ち、複数企業が情報を共有することができる。ネットワークはインターネットがベースとなる。

・RFID2.0時代のミドルウェア

 現在、さまざまなRFIDミドルウェアが開発されているが、これらを陵駕する革新的なミドルウェアとなろう。本機能の検討については章を改め議論を進めたい。

 図1は、RFID2.0への進化とミドルウェア機能の関係を示している。RFID1.0時代は、ネットワークセキュリティや異なるハードウェアの差異吸収など考える必要がなかったが、RFID1.5 に至り、オープン環境の利用、異なるハードウェアの利用、運用性などを考慮した機能の追加が必要となってくる。その先にRFID2.0が展開されるわけだが、ここでどのようなパラダイムシフトが起きるのだろうか。

図1 ミドルウェアの高度化

 以降は、RFID1.5実現までに必要なミドルウェア機能の例とRFID2.0で求められるミドルウェア機能の考察について、NTTデータの取り組みを例に紹介してみたい。

 RFID1.5が求めるミドルウェア機能

 実証実験などを経て実サービスを開始するに当たり、RFIDミドルウェアとして具備すべき機能をNTTデータのRFIDミドルウェア開発例を基に解説する。想定するサービスによっては機能の過不足が指摘されるかもしれないが、ミドルウェア開発の1つの事例紹介ということで理解してほしい。

 RFIDシステムの基本構成とミドルウェア機能の関係を図2に示す。ここでは、システムの構成を6つのレイヤに分別して機能を展開している。

図2 RFIDシステムとミドルウェア機能(画像をクリックすると拡大します)

 例えば、リーダによって読み取られたIDは、リーダ制御レイヤにあるリーダ制御部で読み取りイベントとして生成される。このとき、リーダ制御部のミドルウェアでは、IDのフィルタリング、キューイング、フロー制御、ID補完など必要な処理を行いアプリケーションに送信する。次に、セキュリティレイヤ(リーダ側)では、IDの暗号化やデータ検証、セキュア通信により、セキュアな環境を提供する。

 アプリケーションは、IDにひも付く情報の参照や業務処理結果を格納する場所を特定するためにアドレス解決を行い、目的とするデータベースにアクセスを行う。IDにひも付く情報の参照や登録を行う際は、セキュリティレイヤ(データベース側)のアクセス制御部、セキュリティ制御部のミドルウェアを利用し、アクセス制御やデータ検証、セキュア通信、トランザクション管理を行い、オープンネットワークでのセキュリティ管理を行っている。

 最後に、データベースへのアクセスでは、データ管理レイヤのデータ管理部で簡易なAPIでデータベースアクセスができるようにデータ登録、検索などの機能がミドルウェアとして提供される。

 紹介したミドルウェア機能のほかにも、ユーザー認証が組み込まれたミドルウェアや生産管理、物流管理、商品管理向け機能が強化されたミドルウェア、RFID以外の各種デバイス(カメラ、センサー、ICカードなど)に対応するミドルウェア、データ同期可能なミドルウェアなど、多くのミドルウェアが開発されている。

 
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Index
RFIDミドルウェアの機能と今後の方向性
Page1
サービスを支えるミドルウェア機能
RFID1.5が求めるミドルウェア機能
  Page2
RFID2.0時代のミドルウェアの考察
次世代に向けた「IDコマース基盤」の開発
  Page3
センサープラットフォームの将来像


RFID2.0時代に備えるRFID入門 連載インデックス


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