第5回 RFIDプラットフォームの相互接続運用に向けて


林 慶士
株式会社NTTデータ
第一公共システム事業本部
公共統括部
課長代理

河西 謙治
ビジネスイノベーション本部
ビジネス推進部
課長
2006年10月12日


 地域生活コミュニティ実証実験

 本実験は、複数地域の異なる施設システムが平常時からそれぞれ異なるセキュリティポリシーにのっとって運営されていると仮定し、災害時に情報連携を行う場合における仕組みの有用性を検証する目的で行われた。

実験日:2005年12月18日(日)
実験場所:はーとぴあ清水(静岡県静岡市清水区宮代町)

実験概要:

仮想的なボランティア施設・避難施設をそれぞれ異なる施設システムとして、システム間でリアルタイムな状況把握が可能になる救援物資管理の仕組みを検証

検証項目:
1.ボランティアセンターでの物資仕分け、避難所への物資配送、在庫管理
2.避難所での物資在庫管理、物資情報管理
図4 地域生活コミュニティ実証実験概要図(画像をクリックすると拡大します)

 具体的には、仕分けされた物資(水、カップめん、毛布など)が格納されたダンボールに、物資登録票とアクティブ型の電子タグを取り付ける(図5)。これを仮想ボランティアセンター内での物資登録場所でシステムに登録する。

図5 ダンボールに物資登録票とアクティブタグを貼付

 登録された電子タグ付きダンボールは物資保管場所に持ち込まれ、内容別に分けられたエリアに配置される(図6)。救援物資はこうして仮想避難所からの配送依頼が届くまでダンボール単位で保管され、その保管状態が天井に設置されたリーダで定期的かつ自動で収集される。

図6 物資保管場所

 配送依頼によって仮想避難所に届けられた救援物資の情報は、同様にリーダで収集され、避難施設システムに取り込まれる。各システム間での物資情報確認には、図2に示す構成が適用されており、連携先の情報を意識することなく、シームレスかつ安全な物資情報の流通が可能となる。

 実験での検証は、技術と利活用の両面で行った。技術面ではデータ処理時間やシステム構成について実用上問題ないことを確認できたが、プラットフォーム間での認証処理時間と各システムでのセキュリティレベルの関係については、災害時運用の観点でさらに継続検証していく必要があることが分かった。

 また、利活用の有効性については、実験参加者へのアンケートという形で調べたが、電子タグの適用によって、現在手作業で行われている物資登録や在庫管理の時間短縮への期待が多かった。ただし、こちらについても災害時運用の際の課題(避難所での簡易なリーダ設置、配送中のタグ紛失への対応など)については、実験を通してさらに検証していく必要があることが分かった。

 RFID2.0への期待と課題

 RFIDの大規模普及のための課題には、前回記載したICタグそのものに起因することに加え、今回紹介したような、複数のプラットフォーム間における、ID体系/スキーマ/信頼性/セキュリティポリシー/認証方法の差異を利用者が意識することなく吸収する技術開発の必要性も挙げられる。

 今回紹介した取り組みは、ここ数年間で実施されてきた実証実験と比較しても、4カ年という長期的な視野に立って、RFIDが高度に利活用される際に求められる基盤技術を確立するという先導的かつ重要度の高い取り組みであり、このような先導的な技術開発への取り組みを通じて、RFID2.0実現の加速に寄与することを期待するものである。

 なお、2006年度については、数百のプラットフォームが存在する状況での相互翻訳技術、プラットフォーム認証技術の実装技術に取り組み、その検証をこれまでと同様に、実証実験の中で実施していく予定である。

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Index
RFIDプラットフォームの相互接続運用に向けて
  Page1
「電子タグの高度利活用技術に関する研究開発」とは
  Page2
異種プラットフォーム記述方式の相互翻訳技術
異種プラットフォーム認証技術
 
Page3
地域生活コミュニティ実証実験
RFID2.0への期待と課題


Profile
林 慶士(はやし たかし)

株式会社NTTデータ
第一公共システム事業本部
公共統括部
課長代理

1989年NTTデータ入社。入社以来、音声・文字などのメディア処理技術の実用化研究・開発に従事。現在は、電子タグを適用した実証実験の企画、ビジネス開発を担当。

Profile
河西 謙治(かわにし けんじ)

株式会社NTTデータ
ビジネスイノベーション本部
ビジネス推進部
課長

戦略コンサルティング、新規ビジネス企画、全社事業戦略策定を経て2003年度よりRFIDビジネスに従事。NTTデータのRFID組織の立ち上げおよびサービス体系を策定。

現在は同分野におけるリレーションシップビルダーとして対外的情報発信を担当。

RFID2.0時代に備えるRFID入門 連載インデックス


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