近未来の空港システムを探る―RFIDで旅行は手ぶらに


柏木 恵子
2007年2月23日


 企業間情報連携のためのID連携基盤への取り組み

 NTTデータと富士通、日本電気、日立製作所、東芝テックの5社は、IDをキーとしてさまざまな情報システムや機器をシームレスに連携する「IDコマース基盤」の仕様を共同で策定してきた。

 今回の実証実験では、日本航空の協力を得て、IDコマース基盤を航空手荷物業務に適用する。異なる管理IDを使用している宅配会社と空港配送会社、航空会社が、IDコマース基盤を利用して同一の手荷物に付けられた複数のIDを相互に連携し、自動認識させるものだ。これにより、航空手荷物管理業務の効率化が期待できる。

 なお、この実験ではID連携の検証に特化するため、RFIDタグではなくバーコードが採用された。しかし、IDコマース基盤はコードキャリアがバーコードでもRFIDタグでも同じように動作するように設計されている。

 利用者を増やしたくても増やせないジレンマ

 これまでは、手ぶら旅行の荷物が宅配会社から空港に届くと、航空会社の担当者が宅配会社の管理IDを端末から手入力して航空会社のデータベースから予約番号などを検索していた。この情報と、宅配伝票の氏名や行き先などを突き合わせ、航空会社で使う荷物タグを発行する。その荷物の重量のチェックは、はかりの表示を担当者が目視で確認する。

 つまり、一般のチェックインカウンターで行っているのとほぼ同じ作業を行っているのである。このままでは、手ぶら旅行の利用者が増えるにつれ、処理が間に合わなくなる可能性がある。実際、担当者によれば「処理がボトルネックになるため、利用者を増やせなかった」と本末転倒な状況に陥っていた。成田空港発のJAL国際便が1日に取り扱う機内預け荷物は1万個以上だが、手ぶらサービスの取り扱いは1日当たり100個超にすぎなかった。

 IDコマース基盤を利用した今回の実証実験では、バーコードリーダと重量計がシステム端末に接続されている。はかりに荷物を載せ、宅配伝票のバーコードを読み込むと重量と航空会社の旅行者情報が含まれた荷物タグが発行される。目視やコードの手入力による検索といった作業がなくなるので、処理スピードが速くなるとともに間違いも起こりにくくなるのである。

左)はかりに載せた荷物に付けられている宅配伝票を読み取り
右)空港宅配会社、航空会社のシステムと連携して荷物タグが出力される


 トラッキングサービスや自動チェックインも便利に

 また、宅配会社の管理IDと航空会社の管理IDをシームレスにつなぐことにより、荷物のトラッキングの精度が高くなる。これまで、航空会社が提供するサービスでは、荷物が空港に到着した後のトラッキングしかできず、自宅から空港までの間は宅配会社のサービスを利用する必要があった。利用者にとっては一貫した「手ぶら旅行」サービスのはずなのに、煩わしい思いを強いられる。

 しかし、両社のシステムを連携したことで、空港に着くまでの荷物の状態も航空会社のシステムから確認できるようになる。航空会社は、旅客向けに予約の確認やフライト情報などをPCや携帯電話で確認できるサービスを行っているが、加えて手荷物のチェックイン情報も確認できるようになるなど、利用者の利便性の向上も期待できる。

 さらに、日本航空では2006年5月から自動チェックイン機で、バッゲージクレームタグ(機内預け荷物の引取証)を受け取れるようになっている。手ぶら旅行を利用する旅行者は、空港に着いたら自動チェックイン機でチェックインし、その場で手荷物のチェックイン情報を確認してクレームタグを受け取ることができる。チェックインカウンターに並んで手荷物の検査を受ける場合に比べてはるかにスムーズになる。

自動チェックイン機でバッケージクレームタグも発行される

◆ ◇ ◆

 空港ではこのほかにも、無線ICタグを利用した空港内の道案内システム(埼玉大学がASTRECと共同で公開実験)や、RFIDなどによる固有番号(ucode)を付けた場所についてユビキタス・コミュニケータでucodeを取得することにより情報を提供する「ユビキタス空港情報提供サービス」(YRPユビキタス・ネットワーキング研究所などが国土交通省の自律移動支援プロジェクトの一環として実施)など、さまざまな取り組みが行われている。次世代の空港の姿がおぼろげながら見えてきた。

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Index
近未来の空港システムを探る―RFIDで旅行は手ぶらに
  Page1
手荷物にRFIDタグを付けた「手ぶら旅行」
実証実験を通じて具体的な課題が明確に
 
Page2
企業間情報連携のためのID連携基盤への取り組み
利用者を増やしたくても増やせないジレンマ
トラッキングサービスや自動チェックインも便利に


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