SECURITY SHOW 2007レポート
もう無関係ではいられない「物理的セキュリティ」
宮田 健
@IT編集部
2007/3/29
セキュリティを確保すべき対象はPCだけではなく、オフィスの中に遍在している。SECURITY SHOW 2007で展示されていたさまざまなセキュリティ対策ソリューションをレポートする(編集部)
セキュリティはデジタルの世界だけで完結しない
セキュリティというと、どうしてもWebアプリケーションにおけるクロスサイトスクリプティングなどの脆弱性や、ウイルスやワームによる攻撃を想像してしまうが、広義のセキュリティはもっと奥が深い。SECURITY SHOW 2007は「街づくり・流通ルネサンス」と題した流通業向けの展示会の一環であるため、展示会場では特殊なカメラによる監視ソリューションや入退場管理などの物理的セキュリティの展示が多かった。
そこで、エンジニアが注目すべき、今後考えていかなくてはならないオフィス全体のセキュリティを考えた展示内容をいくつかピックアップし、紹介しよう。
【参考】 同時開催されたIC CARD WORLD 2007の様子はこちらをご参照ください @IT RFIDフォーラム IC CARD WORLD 2007レポート 非接触IC技術のトレンドは“マルチ”展開 http://www.atmarkit.co.jp/frfid/special/icw2007/icw200701.html |
ID管理の標準化を目指すSSFCのいま
いまどきのオフィスでは、社員が社員証と入場カードを首に下げている姿は珍しくない。後ろから来た人のためにちょっとの間ドアを開けたままにしてあげたり、カードを忘れた人の代わりに自分のカードを取り出したりという光景は日常茶飯事であるが、このように認証された人物以外が入場ゲートを通ってしまう「共連れ」は、オフィスセキュリティを考えるうえでは大きな問題となる。本来入場できてはいけない人までオフィス内に招き入れる可能性があるためだ。
では、共連れを防止するにはどのようなことが考えられるか。1つは入退場の記録と、オフィス内の機器の制御を連携する方法である。入室記録がない場合、オフィス内のPCやコピー機、ロッカーなどを使用できないようにすることで、確実に入室記録をさせる必要性を意識づけるのである。
この場合、入場のためのゲートシステム、PC、コピー機などの認証システム、ロッカーなどの器具などすべてがメーカーの枠を超えて連携できなければならない。このような課題の解決を目指しているのが、「SSFC(Shared Security Formats Cooperation)」仕様である。SSFCはICカードの共通フォーマットであり、2007年3月現在での参加企業は123社を数える。会場ではSSFC参加企業による共同ブースが設置され、ブースで貸し出される1枚のICカードでさまざまな機器の管理が行えることをアピールしていた。
SSFCブース |
【参考】 SSFCの詳細については、下記の連載をご参照ください @IT RFIDフォーラム SSFCが実現する高セキュリティオフィス空間 http://www.atmarkit.co.jp/frfid/rensai/ssfc/ssfc01/ssfc01.html |
オフィスの入退場履歴と連動したPC管理
SSFCに準拠した管理ツールとして、インテリジェント ウェイブが販売する「CWAT」のデモが行われていた。CWATは情報漏えいを防ぐため、ポリシーによる不正操作監視や制御を行うソフトウェアだが、大日本印刷のセキュリティソフトウェア「エンドポイント・セーバー」を連携させることにより、SSFCによる入退場記録と連携したPCの管理が可能となる。
具体的には、PCクライアントを利用する場合、社員が持つICカードをPCに接続したカードリーダーにかざしている間だけPCのロックが外れる。しかしこのICカードに、その部屋に入場したという記録がない場合、正しいカードをかざしてもクライアントPCのロックが解除されないだけではなく、CWATの監視サーバに対して警告が記録される。
さらに、ICカードにて認証された社員の行動をセキュリティポリシーにより制限することも可能で、例えばファイルのコピーが制限されている社員は、USBメモリなどの外部メディアにはファイルをコピーできないだけでなく、監視サーバに対してもログが表示され、正しく監査が行える。
ICカードに入室記録がないとログインが行えないだけでなく、監視サーバにも警告が残る |
忘れてはならない「紙」による情報流出
セキュリティホールを利用して情報を流出させるのと、プリントアウトされた紙をこっそり取得するのではどちらが簡単なのかはいうまでもない。そのため、プリンタや複合機でのセキュリティもオフィス設計においては無視できないポイントである。
富士ゼロックスでは、SSFC対応のICカードを利用した認証システム「IC Card Gate 1.0」を展示していた。金融関連の企業やM&Aを行う企業では、プリントアウトされた紙1枚が大きな意味を持つ場合があり、これが流出することによるリスクは非常に大きい。プリンタはオフィスの共用物であるため、文書の放置や取り間違いを防ぐ方法を考えなくてはならない
そこで、SSFC対応のICカードを利用し、出力時に認証を必要とするシステムが紹介されていた。これはPCからのプリントアウト指示を行ってもプリンタは待機状態となり、キューに出力情報をためておく。その後ICカードを持った社員が、プリンタに取り付けられたカードリーダーで認証が完了した時点で初めてプリントアウトがされるという仕組みになっている。もちろん、SSFCの機能を利用し、入場記録のない社員にはプリンタを利用させないというような連携も可能だ。
プリンタにはICカードリーダが接続されており、出力には認証が必要となるため、文書の放置や取り間違いを防げる |
SSFCを用いることで、入退場の有無や什器の利用状況など、人間の動線を含めたセキュリティポリシーが運用できるようになった。高度なセキュリティが必要なエリアでのソリューションとして有効である。
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もう無関係ではいられない「物理的セキュリティ」 | |
Page1 セキュリティはデジタルの世界だけで完結しない ID管理の標準化を目指すSSFCのいま オフィスの入退場履歴と連動したPC管理 忘れてはならない「紙」による情報流出 |
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Page2 紙の管理とデジタル管理の融合 顔認証はこれからのトレンドになるか 情報を取れる範囲が広がる――情報システム部側の準備は? |
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