特集基礎から学ぶIAサーバ 2002年度版
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ガートナー ジャパン データクエスト部門の発表資料によれば、IAサーバ(Intel Architecure Server、「PCサーバ」とも呼ばれる)の2001年国内出荷台数は38万8735台で、前年比23.1%増だという(ガートナー ジャパンのプレスリリース)。また2002年も、IAサーバの台数ベースの成長率は15%を維持するという好調な予測がなされている(「ITマーケット・トレンド:第10回 2002年の国内サーバ市場を展望する」参照)。このように現在、メインフレームやRISC/UNIXサーバに比べて、IAサーバのシェアは拡大の一途をたどっている。サーバの市場別に見ると、ワークグループ/エントリ・クラス/フロントエンド・サーバ市場はIAサーバの独壇場であり、部門サーバやアプリケーション・サーバと利用されるミッドレンジ・クラスでもIAサーバの勢力が強まっている。ハイエンド市場はこれから、という段階だ。
IAサーバのシェアが増大傾向にある最大の要因は、そのコスト競争力の高さだ。IAサーバでは原則として、サーバ・マシンを構成する各種パーツやOS、アプリケーションなどを、複数のメーカーから選択できるようになっている(これは「水平分散型」あるいは「水平分業」のビジネス・モデルと呼ばれる)。そのため、各メーカー間の競争でコストが下がりやすい。また、汎用的なパーツが利用されるため、もともとのコストが安いという理由も挙げられる。
性能面でも、各メーカーが競って技術開発して製品に投入することで年々向上している。こうして開発された数々の独自技術は、優れたものが競合の中から勝ち抜き、業界標準となってやがてIAサーバ全体の標準技術となる。IAサーバの開発の歴史では、独自技術の開発とその標準化という繰り返しともいえる。
一方、RISC/UNIXサーバでは1社がハードウェアからソフトウェアまで大部分を独自に開発している場合が多い(「垂直統合型」のビジネス・モデル*1)。アーキテクチャも独自なので競争は起こりにくく、価格は高めになりがちだ。その反面、1社だけですべてをコントロールできるため、他社に依存する部分が非常に少なく、例えば可用性を保証しやすいといったメリットがある。IAサーバにはまったく逆のことが当てはまるため、低価格より信頼性の高さを重視するエンタープライズ(ハイエンド)市場では、RISC/UNIXサーバの勢力が強く、IAサーバはそれほど食い込んではいないのが現状だ。
*1 垂直統合型と水平分業型というビジネス・モデルについては、「特集:Itaniumの登場でハイエンド・サーバ市場が変わる? 2.垂直統合型と水平分散型のビジネス・モデル」を参照していただきたい)。 |
しかし最近では、RISC/UNIXサーバを攻略すべく、信頼性やスケーラビリティを高めるための技術がIAサーバに次々と投入されている。またエンタープライズ・サーバ向けプロセッサ「Itanium」ファミリでは、第2世代の開発コード「McKinley(マッキンリー)」で呼ばれるプロセッサがまもなく登場予定で、既存のItaniumの2倍近い性能向上が見込まれている。その一方で、インターネット向けサービスのために、ブレード・サーバと呼ばれる従来とはまったく異なる形態のサーバも登場している。そのほかにも、2002年にはサーバを構成するコンポーネント・レベルでも多くの進歩が見られるだろう。このようにIAサーバではさまざまな変化が生じており、システム管理者が知っておくべきIAサーバの知識も変わってきている。
クライアントPCと違って長年使用するサーバ・マシンは、新規導入やリプレース時のハードウェア選定に失敗したりすると、多大な投資が無駄になる。選定にかかわるシステム管理者や導入担当者の責任は重大だ。こうした選定に失敗しないためには、最新の動向を反映したIAサーバの知識を得る必要がある。そこで本稿では、2002年現在のIAサーバについて、その成り立ちと技術トレンドを把握し、各社製品の差別化ポイントとなっている要因などについて、最新の情報とともにお届けする。
関連記事 | |
第10回 2002年の国内サーバ市場を展望する | |
Itaniumの登場でハイエンド・サーバ市場が変わる? 2.垂直統合型と水平分散型のビジネス・モデル |
関連リンク | |
プレスリリース:2001年(1〜12月)の国内サーバ市場動向 |
「System Insiderの特集」 |
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