特集
ブレード・サーバの真実と未来

5. 2タイプに分かれてきた最新ブレード・サーバ

デジタルアドバンテージ
2002/06/28


 ここでは、前のページまでで紹介した2機種以外の製品の最新動向を解説する。

高密度実装重視型と性能/機能重視型

 初めてブレード・サーバが登場したのは、2001年中ごろのこと。当初は、RLX Technologiesなどのベンチャー企業が手がけていた。そのあとで、Compaq Computerなど大手サーバ・ベンダが参入し、現在に至っている。日本においては、2002年1月に日本電気が、大手サーバ・ベンダの中では最も早い時期に「Express5800/BladeServer」を発表している。Express5800/BladeServerは、サーバ向けプロセッサであるPentium III-Sのデュアルプロセッサ構成をサポートしたサーバ・ブレードを用意し、ハードディスクをサーバ・ブレード上ではなく、エンクロージャ内のハードディスク専用スロットに実装するようになっているなど、前述の2機種とはハードウェア構成が大きく異なっている。3Uサイズのエンクロージャに装着できるサーバ・ブレードは6枚までと、密度より単体での性能や機能、スケーラビリティを重視した設計となっていることがうかがえる。

日本電気のExpress5800/BladeServer

 デルコンピュータが2002年第3四半期に販売を予定している「PowerEdge 1655MC」も、性能重視タイプの製品といえる。3Uサイズのエンクロージャには、最大で6台のサーバ・ブレード(下の写真のように「ブレード」とは表現しがたい厚みだが)しか内蔵できないが、Pentium III-Sによるデュアルプロセッサ構成や、SCSIハードディスクを使ったRAIDシステムに対応している。最大メモリ容量も2Gbytesとほかのブレード・サーバより大きく、一般的なエントリ・サーバと同等以上のスペックを持つ。

デルコンピュータのPowerEdge 1655MC

 これらに対し、富士通が2002年5月末に発表したブレード・サーバ「PRIMERGY BX300」は、どちらかといえば密度重視の製品で、3Uサイズのエンクロージャには最大20枚のサーバ・ブレードを装着できる。ただ、1枚のサーバ・ブレードに最大2台の2.5インチ・ハードディスクを搭載し、ハードウェアRAID 1による耐障害性を確保しているほか、最大メモリ容量は2Gbytesと大きい。イーサネットもギガビット対応だ。また、現在使用している低電圧版モバイルPentium III-Mのデュアルプロセッサ対応版が出荷されれば、すぐにデュアルプロセッサ対応のサーバ・ブレードも提供される予定とのことだ(コンパックも今後、デュアルプロセッサ対応サーバ・ブレードを出荷すると表明している)。このように本機の仕様には、密度と性能/機能のバランスをとろうとしている意図が見える。

富士通のPRIMERGY BX300

 高密度化を強く志向しているのは、2002年6月に発表されたばかりの日立製作所の「HA8000-bd/200」である。多くのベンダが採用した3Uサイズではなく、2Uサイズのエンクロージャに最大16枚のサーバ・ブレードを搭載できるのが特徴だ。42Uのラック当たりの搭載可能サーバ数を比較すると、3Uサイズに20枚のサーバ・ブレードが搭載可能なブレード・サーバが最大280台なのに対し、HA8000-bd/200では最大336台と、2割多く搭載できる。

日立製作所のHA8000-bd/200
 
ベンダ コンパックコンピュータ デルコンピュータ トラストガード
製品名 ProLiant BL e-Class PowerEdge 1655MC TrustGuard
/ HiServer
(HDB 31670)
発表日 2002年2月19日 2002年4月4日(米国) 2002年2月1日
プロセッサ 種類 超低電圧版Pentium III-700MHz Pentium III-S-1.26GHz Pentium III-S/Celeron/VIA C3
最大数 1基 2基 1基
メイン・メモリ 標準容量 512Mbytes 128Mbytes〜
最大容量 1Gbytes 2Gbytes 1Gbytes
ハードディスク タイプ/インターフェイス 2.5インチIDE 3.5インチSCSI 2.5インチIDE
最大台数 1台 2台 1台
単体容量 30Gbytes 18Gbytes〜 20Gbytes(試用機に搭載)
ハードウェアRAID ○(RAID 1)
イーサネット 10/100BASE-TX×2系統 10/100/1000BASE-T×2系統 10/100/1000BASE-T×2系統、10/100BASE-TX×1系統
拡張スロット 64bit PCI×1スロット
エンクロージャ サイズ 3U 3U 3U
装着可能なブレードの最大枚数 20枚 6枚 18枚
42ラックでの最大プロセッサ数 280基 168基 252基
イーサネット・ケーブル集線機能 RJ-21コネクタによる集線/ギガビット・イーサネット・スイッチを内蔵可能 ギガビット・イーサネット・スイッチを内蔵
コンソール切り替え機能 ○(標準装備) ○(標準装備)
管理・監視機能 エンクロージャ(インターコネクトトレイ)に内蔵 専用リモート管理カード エンクロージャに内蔵
表区切り
各ベンダのブレード・サーバの主なスペック(その1)
 
ベンダ 日本電気 日立製作所 富士通
製品名 Express5800
/BladeServer
HA8000-bd
/200
PRIMERGY BX300
発表日 2002年1月17日 2002年6月19日 2002年5月28日
プロセッサ 種類 Celeron-850MHz/Pentium III-S-1.26GHz 超低電圧版モバイルPentium III-M-800MHz 低電圧版モバイルPentium III-M-866MHz
最大数 2基*1 1基 1基*2
メイン・メモリ 標準容量 256Mbytes/512Mbytes 128Mbytes〜 256Mbytes
最大容量 1Gbytes 1Gbytes 2Gbytes
ハードディスク タイプ/インターフェイス 3.5インチIDE 2.5インチIDE 2.5インチIDE
最大台数 2台*3 1台 2台
単体容量 20Gbytes/80Gbytes 20Gbytes/40Gbytes 20Gbytes/40Gbytes
ハードウェアRAID ○(RAID 1)
イーサネット 10/100BASE-TX×3系統 10/100BASE-TX×2系統 10/100/1000BASE-T×2系統
拡張スロット 64bit PCI×1スロット
エンクロージャ サイズ 3U 2U 3U
装着可能なブレードの最大枚数 6枚 16枚 20枚
42ラックでの最大プロセッサ数 168基 336基 280基
イーサネット・ケーブル集線機能 スルーカードでRJ-21コネクタに集線可能 ギガビット・イーサネット・スイッチを内蔵 ギガビット・イーサネット・スイッチを内蔵
コンソール切り替え機能 ○(標準装備)
管理・監視機能 サーバ・ブレードに内蔵 専用リモート管理カード×最大2枚 専用リモート管理カード×最大2枚
表区切り
各ベンダのブレード・サーバの主なスペック(その2)
*1 Celeronモデルは1基まで。Pentium III-Sモデルは2基まで搭載可能
*2 現時点ではプロセッサがデュアル構成に対応していないため、1基のみ。第3四半期以降にデュアルプロセッサ対応品が登場予定
*3 サーバ・ブレードとは別のスロットに装着

 各ベンダのブレード・サーバ製品のうちサーバ・ブレード同士を比較すると、スペックの食い違いが意外に多く、共通する部分が少ないことが分かる。チップセットなどコンポーネントのレベルまで共通化が進んでしまったエントリ・サーバなどとは対照的な状況だ。これは、各ベンダが想定しているブレード・サーバの利用形態が、まだ定まっていないことが大きく影響している。

 前述のように、ブレード・サーバの用途がフロントエンドの層だけなら、高密度実装と低消費電力化を最優先した仕様になっていくはずだ。この場合、プロセッサやハードディスクなどは、高密度実装に適したノートPC向けのものが適しているだろう。スケール・アウトの用途なので、個々のサーバ・ブレードに高い性能は必要ない。またフロントエンドなら、サーバ・ブレードが故障してもサービスを停止させることなくブレードごと交換すれば済むので、サーバ・ブレード自体に高度な耐障害性(RAIDなど)は不要だ。コンパックのProLiant BL e-Classや日立製作所のHA8000-bd/200は、まさにこの方向性を志向している。

 しかし、そのほかのベンダのブレード・サーバを見ると、フロントエンド以外の用途も想定していることがうかがえる。例えばPentium III-Sのデュアルプロセッサ構成に対応する日本電気のExpress5800/BladeServerやDell ComputerのPowerEdge 1655MCは、明らかにアプリケーション・サーバなどで「より重い処理」をこなすのが目的だ。また拡張スロットを持ったトラストガードのHDB31670サーバ・ブレードは、インターネット系だけには限らない用途を想定している。

 いってしまえば、どの程度の用途までブレード・サーバを適用できるのか、ユーザーもベンダもまだはっきりとその範囲を特定し切れていないのが現状といえるだろう。

 次のページでは、「ブレード」がペデスタル(タワー)型とラックマウント型に続く第3のフォームファクタの地位を築けるのか、考察してみる。

  関連記事 
IAサーバ製品カタログ:日本電気製ブレード・サーバ
IAサーバ製品カタログ:日立製作所製ブレード・サーバ
IAサーバ製品カタログ:富士通製ブレード・サーバ
高密度サーバはどこに向かうのか?
基礎から学ぶIAサーバ 2002年度版
ブレード・サーバに見る信頼性と冗長性の関係
Dellが考える高密度サーバの世界
 
  関連リンク 
ProLiant BL e-Classの製品情報ページ
TrustGuard/HiServerの製品情報ページ
PowerEdge 1655MCの製品情報ページ
 
 

 INDEX
  [特集]ブレード・サーバの真実と未来
    1.高密度最優先のブレード・サーバ「ProLiant BL」
    2.OSセットアップまでリモートから行うProLiant BL
    3.2種類のブレードをラインアップするTrustGuard/HiServer
    4.コンソールからフロッピーまで共有可能なTrustGuard/HiServer
  5.2タイプに分かれてきた最新ブレード・サーバ
    6.現在のブレード・サーバが抱える課題とは?
 
 「System Insiderの特集」


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