Webアプリケーションのユーザーインターフェイス[6]

「戻る」で入力データが消えてしまうフォームはいらない
「寛容性とユーザーコントロール」


ソシオメディア 上野 学
2005/12/22


 対話型システムの設計原則

 前回「入力情報を預かる責任を果たせる画面デザインとは?」は、あらゆる経験則の土台となる価値観として、「ユーザーを尊重する」というユーザー中心の姿勢について述べました。今回からは、Webアプリケーションのユーザーインターフェイス(UI)・デザインを行ううえで有効な経験則を、少し具体的に考えていきたいと思います。

 その前にまず、連載の第1回「ユーザーにとっては“ユーザーインターフェイス”こそが製品そのもの」で触れた HCI(Human-Computer Interaction)の分野でよく挙げられる、コンピュータを用いた対話型システムの設計原則を紹介しておきます。ここでいう「対話型システム」とは、ユーザーとシステムが対話をしながら作業を進めていく仕組みのことで、GUIを持つシステムはすべてこれに含まれます(対話型ではないシステムとは、メインフレームなどの、指定された処理をバッチ方式で行うものです)。

   対話型システムの設計原則  

  • 可逆性と制御権の確保:試行錯誤を容易にし、ユーザーを応答者ではなく主体的な操作者として扱う。
  • フィードバックの提供:すべての操作に対する状態と変化の提示。
  • エラーの回避:早期のエラー検出による致命的エラーの回避。
  • 一貫性:操作手順の統一、用語の統一、視覚表現の統一、オブジェクトの振る舞いの統一。
  • 短期記憶負担の低減:情報量や選択肢を制限し、その場で十分に判断できるようにする。
  • ショートカットの用意:キーボード、マクロ機能、スキップ。
  • 業務への適合:ワークフローやタスクの特性に適合させる。
  • 個人への適合:個人の目的やスキル特性に適合させる。
  • 学習支援:オンラインチュートリアル、ヘルプ。

 こういった経験則は、80年代におけるGUIの普及に伴って行われた多くの HCI 研究の成果から導き出されたものです。そして現代のWebアプリケーション設計においても、十分に利用できる考え方です。ただし、Webアプリケーションのデザインを考えるうえでは、従来のデスクトップアプリケーションのデザインとは違った視点や価値観も必要になります。1つにはWebアプリケーションが、ローカルのコンピュータ環境ではなくネットワーク上での利用と運用を前提としていること。そしてもう1つは、製品というよりもサービスとしてユーザーに提供される傾向にあることです。

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 INDEX

Webアプリケーションのユーザーインターフェイス(6)
Page1<対話型システムの設計原則/対話型システムの設計原則/経験則その1:「ユーザーを尊重する」>
  Page2<WebアプリケーションのUIデザイン/メリット(リアルタイムのデータにアクセスできる/公開が容易)/どこからでも利用できる/デメリット(不十分なインタラクション表現/やりとりが煩わしい/見た目に関する一貫性の欠如)>
  Page3<経験則その2:寛容性とユーザーコントロール/できるだけすべての操作を可逆的にする>
  Page4<ユーザーが自分のペースで作業できるようにする/コントロールを作業の流れに合わせて配置するユーザーの意思を優先する>
  Page5<UIからゲーム性を排除し、簡単なマウス操作で利用できるようにする/ユーザーを信頼する>

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