Insider's Eye

秒読みに入ったWindows Server 2003

―― 次世代Windowsサーバの名称から戦略的に「.NET」を省略。最終決定された製品名からRC2版の変更ポイントまで ――

デジタルアドバンテージ
2003/01/25


 すでに@ITのニュースでも報道されているとおり、マイクロソフトは、2003年4月にも米国版が発売予定となっている次世代のWindowsサーバ製品の名称を土壇場で変更した(この件に関する1月11日付けの@IT News)。それまでは、「.NET」時代を担う基幹OSとしての立場を強調して、「Windows .NET Server」と呼んでいたのだが、これを「戦略的に省略」して「Windows Server 2003」にするのだという。

 この件に関する正式なニュース・リリースは発表されず、一部のマスコミ関係者にだけメールで知らされた。このメールによれば、名称変更は「ブランド戦略を検討した結果」とのことだ。

Windows .NET Server 2003の名称変更について(マイクロソフト)

 このページで説明されているとおり、製品名から「.NET」が省略される代わりに、「.NET Connected」というロゴを作り、Windows Server 2003は「.NET Connected」ロゴ対応の製品として発売されることになるという。これから発売されるWindows Server以外の製品(例えばOffice 11やVisual Studio .NETの新版、Exchange Serverの新版など)にもこのルールは適用されるだろうか?(Windows Server 2003に関連して、マイクロソフトが2003年に発表を予定している製品や技術については別稿「Insider's Eye:企業コンピューティングに向け攻勢をかける2003年のマイクロソフト」を参照) 製品発売間際に名称を変更するあたり、かなりギリギリの判断あってのことと想像されるが、真相は闇の中だ。いずれにせよ、次期Windowsサーバに関するマイクロソフトのWebページからは、「.NET」の名前が削除され、さらにURLも変更された(古いページにリンクしている人は、URLを更新する必要がある)。

 すでに本フォーラムの記事でご紹介しているように、Windows Server 2003の米国での発売は2003年4月と発表されている。しかし日本語版がいつ発売になるのかは、いまも発表されていない。しかし、くだんの通知メールの中に、Windows Server 2003の発売時期に関するコメントもあった。これによれば、「日本語版は英語版の発売日(をベース)にパッケージ梱包、デリバリーの時間をプラスして出荷されることになります」とのことである。この文面からすれば、それほど長い期間ではなさそうだ。

Web EditionはMultilingual User Interface版にて対応

 さらに通知メールには、Windows Server 2003の正式名称が決定された旨の記載があった。最終的には、日本語版Windows Server 2003の正式名称は以下のようになる。

32bit版の名称
Windows Server 2003, Standard Edition 日本語版
Windows Server 2003, Enterprise Edition 日本語版
Windows Server 2003, Datacenter Edition 日本語版
Windows Server 2003, Web Edition MUI*
64bit版の名称
64ビット バージョン Windows Server 2003, Enterprise Edition 日本語版
64ビット バージョン Windows Server 2003, Datacenter Edition 日本語版
Windows Server 2003ファミリの名称
* MUIはMultilingual User Interfaceの略。

 製品構成については、これまでに公表されていたものと変わりはない。32bit版としては、SOHOや部門のワークグループ環境などの小規模なビジネス・インフラをターゲットとするStandard Edition、中〜大規模のエンタープライズ環境をターゲットとするEnterprise Edition、エンタープライズ環境におけるデータベース・サーバなどのミッション・クリティカル・システムをターゲットとするDatacenter Editionに加え、単機能Webサーバとしての利用を想定したWeb Editionが用意される。このWeb Editionは、従来のWindows 2000にはなかったカテゴリのサーバ製品である。

 ただしこのWeb Editionは、ほかの製品とは異なり、正式な日本語化ではなく、MUI版として提供される。MUIはMultilingual User Interfaceの略で、MUI Packと呼ばれるソフトウェアを英語版に追加した製品である。MUI Packは、英語以外の言語用のリソース・ファイルをセットにしたもので、英語版に組み込むことで、各国語版として機能するようになる。Webサーバで必要かどうかは分からないが、MUI Packを追加したWindows製品一般でいえば、ユーザーごとに異なる言語設定を選択できるようになる(1台のコンピュータを、複数のユーザーがそれぞれ異なる言語設定で使うことも可能)。そもそもMUI Packは、各国に支社を持つ国際企業などで、特定の国によらないインストール・イメージを提供するためのものである。いま述べたとおり、ユーザーが好みの言語設定を選択することも可能だし、管理者は、Active Directoryの組織単位(OU)ごとに、言語設定をグループ・ポリシーを使って切り替えることも可能である。

 Web EditionがMUI版として提供される理由は不明だ(わざわざ独立した各国語版を作成し、今後もサポートを続けていくという手間を省くためであろうか)。しかしこのようにMUI版はベースが英語版なので、セキュリティ・ホールなどが発見されたときにも、英語版のHotFixを素早く適用できるというメリットはあるかもしれない。

Windows Server 2003 RC2の早期導入プログラムが開始

 過去の例から考えて、たとえWindows Server 2003が2003年春に発売されたとしても、企業ユーザーが本格的な導入を開始するのは、早くても年末か、2004年以降になるだろう。サーバOSを更新するとなれば、システム全体を見直す必要に迫られるし、やっかいな既存データやプログラムの移行計画を練らなければならない。しかし優れた計画を練るには、まずは新OSの評価が必要だ。

 このためマイクロソフトは、いち早く企業ユーザーにWindows Server 2003を評価してもらうために、RC2版による早期評価プログラムを開始している。

Windows Server 2003早期評価プログラムの解説ページ

 この早期評価プログラムに登録・参加すれば、マイクロソフトのサイトから無償でWindows Server 2003日本語版RC2をダウンロードできるようになる(別に実費負担によるCD配布サービスもある)。参加資格は特になく、だれでも応募できるので、Windows Server 2003に興味があるユーザーは、申し込んで手元で評価してみるとよい。

RC1から比較したRC2版での機能変更点

 Windows Server 2003 RC2をインストールしても、ビルド番号(RC1では3663だが、RC2では3718)が変わる点を除けば、以前のRC1から何が変わったのかは簡単には分からない。しかし内部的には、バグの修正に加え、幾つかの機能変更が行われている。RC1からRC2への主要な変更点をまとめると次のようになる。

  • Active Directoryオブジェクト・クォータ機能の追加。これにより、個別のユーザーやコンピュータ、セキュリティ・グループごとに、ディレクトリ・パーティションのクォータを指定できるようになる。
  • Active Directoryのフォレスト信頼におけるSIDフィルタリングの無効化。
  • サーバの構成を自動化する「サーバの役割管理」ツール(RC1では「サーバの管理」と呼ばれていた)における、POP 3メール・サーバの設定機能強化。ドメイン名指定とユーザー認証のタイプが指定可能になった。
  • 同じく「サーバの役割管理」でのターミナル・サービス・ライセンス・サーバの検出。
  • グループ・ポリシーによるIISのインストール防止。
  • ログオン監査におけるIPアドレスの記録機能。
  • ターミナル・サーバに対するクライアントからサーバへの一方向の暗号化モードの追加。
  • レジストリ・リークAPIの追加。レジストリ情報の漏えいの検出や、ハイブを強制的にアンロードするなどのAPI。
  • 64bit版のWindows Server 2003 Datacenter Editionにおける512Gbytesメモリ・サポート(従来は最大128Gbytes)。
  • ASP .NETモバイル・コントロールの追加(従来はモバイル・インターネット・ツールキットと呼ばれていたもの。これがASP .NETモバイル・コントロールという名称に変更され、.NET Framework 1.1に統合された)。
  • 信頼関係のあるActive Directoryフォレスト間でのSSLクライアント認証マッピング・サポート。
  • アプリケーションが独自のイベント・スキーマやIDでセキュリティ・ログへの書き込みを可能にする監査API。
  • Standard Editionにおける単一DFSルートのサポート。

 またこれ以外にも、Windows Server 2003のセキュリティ機能に関する詳細も公表された。

Windows Server 2003のセキュリティ機能に関するニュース・リリース[英文]

 詳細は次の機会に譲るが、これによれば、PKIの大幅な強化、暗号化パスワードによる認証を可能にするPEAP(Protected Extensible Authentication Protocol)サポート、ロール・ベースの認証を可能にする認証マネージャのサポートなどが行われるとしている。

イベント・ログにおけるIPアドレスの記録

 最後に、RC2の変更点の中から、管理者として気になる監査ログにおけるIPアドレスの記録機能について少し詳しく見てみよう。

 Windows Server 2003 RC2のイベント・ログでは、ログオンの監査などにおいて、クライアント・マシンのIPアドレス情報が記録されるようになった。従来のログでは、クライアントのIPアドレスなどの情報が含まれておらず、単に失敗したときに使用されたユーザー名ぐらいしか残っていなかった。だがクライアント・マシンの情報がより正確に分かるようになり、トラブル・シューティング作業などで役に立つことになるだろう。End of Article

イベント・ログに記録されたIPアドレス
Windows Server 2003 RC2のイベント・ログでは、アカウントのログオン・イベントなどで、新たにクライアント・マシンのIPアドレス情報が記録されるようになった。これにより、トラブル・シューティングにおけるクライアント・マシンの特定作業などが迅速に行える。
  ログオンの失敗の監視で記録されたイベント・ログには、イベントの原因となったクライアント側のIPアドレスが記録されている。このクライアント・マシンからログオンしようとして失敗したことが分かる。
 
 「Insider's Eye」


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