Insider's Eye秒読みに入ったWindows Server 2003 ―― 次世代Windowsサーバの名称から戦略的に「.NET」を省略。最終決定された製品名からRC2版の変更ポイントまで ―― |
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デジタルアドバンテージ |
すでに@ITのニュースでも報道されているとおり、マイクロソフトは、2003年4月にも米国版が発売予定となっている次世代のWindowsサーバ製品の名称を土壇場で変更した(この件に関する1月11日付けの@IT News)。それまでは、「.NET」時代を担う基幹OSとしての立場を強調して、「Windows .NET Server」と呼んでいたのだが、これを「戦略的に省略」して「Windows Server 2003」にするのだという。
この件に関する正式なニュース・リリースは発表されず、一部のマスコミ関係者にだけメールで知らされた。このメールによれば、名称変更は「ブランド戦略を検討した結果」とのことだ。
・Windows .NET Server 2003の名称変更について(マイクロソフト)
このページで説明されているとおり、製品名から「.NET」が省略される代わりに、「.NET Connected」というロゴを作り、Windows Server 2003は「.NET Connected」ロゴ対応の製品として発売されることになるという。これから発売されるWindows Server以外の製品(例えばOffice 11やVisual Studio .NETの新版、Exchange Serverの新版など)にもこのルールは適用されるだろうか?(Windows Server 2003に関連して、マイクロソフトが2003年に発表を予定している製品や技術については別稿「Insider's Eye:企業コンピューティングに向け攻勢をかける2003年のマイクロソフト」を参照) 製品発売間際に名称を変更するあたり、かなりギリギリの判断あってのことと想像されるが、真相は闇の中だ。いずれにせよ、次期Windowsサーバに関するマイクロソフトのWebページからは、「.NET」の名前が削除され、さらにURLも変更された(古いページにリンクしている人は、URLを更新する必要がある)。
すでに本フォーラムの記事でご紹介しているように、Windows Server 2003の米国での発売は2003年4月と発表されている。しかし日本語版がいつ発売になるのかは、いまも発表されていない。しかし、くだんの通知メールの中に、Windows Server 2003の発売時期に関するコメントもあった。これによれば、「日本語版は英語版の発売日(をベース)にパッケージ梱包、デリバリーの時間をプラスして出荷されることになります」とのことである。この文面からすれば、それほど長い期間ではなさそうだ。
Web EditionはMultilingual User Interface版にて対応
さらに通知メールには、Windows Server 2003の正式名称が決定された旨の記載があった。最終的には、日本語版Windows Server 2003の正式名称は以下のようになる。
32bit版の名称 |
Windows Server 2003, Standard Edition 日本語版 |
Windows Server 2003, Enterprise Edition 日本語版 |
Windows Server 2003, Datacenter Edition 日本語版 |
Windows Server 2003, Web Edition MUI*版 |
64bit版の名称 |
64ビット バージョン Windows Server 2003, Enterprise Edition 日本語版 |
64ビット バージョン Windows Server 2003, Datacenter Edition 日本語版 |
Windows Server 2003ファミリの名称 |
* MUIはMultilingual User Interfaceの略。 |
製品構成については、これまでに公表されていたものと変わりはない。32bit版としては、SOHOや部門のワークグループ環境などの小規模なビジネス・インフラをターゲットとするStandard Edition、中〜大規模のエンタープライズ環境をターゲットとするEnterprise Edition、エンタープライズ環境におけるデータベース・サーバなどのミッション・クリティカル・システムをターゲットとするDatacenter Editionに加え、単機能Webサーバとしての利用を想定したWeb Editionが用意される。このWeb Editionは、従来のWindows 2000にはなかったカテゴリのサーバ製品である。
ただしこのWeb Editionは、ほかの製品とは異なり、正式な日本語化ではなく、MUI版として提供される。MUIはMultilingual User Interfaceの略で、MUI Packと呼ばれるソフトウェアを英語版に追加した製品である。MUI Packは、英語以外の言語用のリソース・ファイルをセットにしたもので、英語版に組み込むことで、各国語版として機能するようになる。Webサーバで必要かどうかは分からないが、MUI Packを追加したWindows製品一般でいえば、ユーザーごとに異なる言語設定を選択できるようになる(1台のコンピュータを、複数のユーザーがそれぞれ異なる言語設定で使うことも可能)。そもそもMUI Packは、各国に支社を持つ国際企業などで、特定の国によらないインストール・イメージを提供するためのものである。いま述べたとおり、ユーザーが好みの言語設定を選択することも可能だし、管理者は、Active Directoryの組織単位(OU)ごとに、言語設定をグループ・ポリシーを使って切り替えることも可能である。
Web EditionがMUI版として提供される理由は不明だ(わざわざ独立した各国語版を作成し、今後もサポートを続けていくという手間を省くためであろうか)。しかしこのようにMUI版はベースが英語版なので、セキュリティ・ホールなどが発見されたときにも、英語版のHotFixを素早く適用できるというメリットはあるかもしれない。
Windows Server 2003 RC2の早期導入プログラムが開始
過去の例から考えて、たとえWindows Server 2003が2003年春に発売されたとしても、企業ユーザーが本格的な導入を開始するのは、早くても年末か、2004年以降になるだろう。サーバOSを更新するとなれば、システム全体を見直す必要に迫られるし、やっかいな既存データやプログラムの移行計画を練らなければならない。しかし優れた計画を練るには、まずは新OSの評価が必要だ。
このためマイクロソフトは、いち早く企業ユーザーにWindows Server 2003を評価してもらうために、RC2版による早期評価プログラムを開始している。
・Windows Server 2003早期評価プログラムの解説ページ
この早期評価プログラムに登録・参加すれば、マイクロソフトのサイトから無償でWindows Server 2003日本語版RC2をダウンロードできるようになる(別に実費負担によるCD配布サービスもある)。参加資格は特になく、だれでも応募できるので、Windows Server 2003に興味があるユーザーは、申し込んで手元で評価してみるとよい。
RC1から比較したRC2版での機能変更点
Windows Server 2003 RC2をインストールしても、ビルド番号(RC1では3663だが、RC2では3718)が変わる点を除けば、以前のRC1から何が変わったのかは簡単には分からない。しかし内部的には、バグの修正に加え、幾つかの機能変更が行われている。RC1からRC2への主要な変更点をまとめると次のようになる。
- Active Directoryオブジェクト・クォータ機能の追加。これにより、個別のユーザーやコンピュータ、セキュリティ・グループごとに、ディレクトリ・パーティションのクォータを指定できるようになる。
- Active Directoryのフォレスト信頼におけるSIDフィルタリングの無効化。
- サーバの構成を自動化する「サーバの役割管理」ツール(RC1では「サーバの管理」と呼ばれていた)における、POP 3メール・サーバの設定機能強化。ドメイン名指定とユーザー認証のタイプが指定可能になった。
- 同じく「サーバの役割管理」でのターミナル・サービス・ライセンス・サーバの検出。
- グループ・ポリシーによるIISのインストール防止。
- ログオン監査におけるIPアドレスの記録機能。
- ターミナル・サーバに対するクライアントからサーバへの一方向の暗号化モードの追加。
- レジストリ・リークAPIの追加。レジストリ情報の漏えいの検出や、ハイブを強制的にアンロードするなどのAPI。
- 64bit版のWindows Server 2003 Datacenter Editionにおける512Gbytesメモリ・サポート(従来は最大128Gbytes)。
- ASP .NETモバイル・コントロールの追加(従来はモバイル・インターネット・ツールキットと呼ばれていたもの。これがASP .NETモバイル・コントロールという名称に変更され、.NET Framework 1.1に統合された)。
- 信頼関係のあるActive Directoryフォレスト間でのSSLクライアント認証マッピング・サポート。
- アプリケーションが独自のイベント・スキーマやIDでセキュリティ・ログへの書き込みを可能にする監査API。
- Standard Editionにおける単一DFSルートのサポート。
またこれ以外にも、Windows Server 2003のセキュリティ機能に関する詳細も公表された。
・Windows Server 2003のセキュリティ機能に関するニュース・リリース[英文]
詳細は次の機会に譲るが、これによれば、PKIの大幅な強化、暗号化パスワードによる認証を可能にするPEAP(Protected Extensible Authentication Protocol)サポート、ロール・ベースの認証を可能にする認証マネージャのサポートなどが行われるとしている。
イベント・ログにおけるIPアドレスの記録
最後に、RC2の変更点の中から、管理者として気になる監査ログにおけるIPアドレスの記録機能について少し詳しく見てみよう。
Windows Server 2003 RC2のイベント・ログでは、ログオンの監査などにおいて、クライアント・マシンのIPアドレス情報が記録されるようになった。従来のログでは、クライアントのIPアドレスなどの情報が含まれておらず、単に失敗したときに使用されたユーザー名ぐらいしか残っていなかった。だがクライアント・マシンの情報がより正確に分かるようになり、トラブル・シューティング作業などで役に立つことになるだろう。
「Insider's Eye」 |
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