Insider's Eyeマイクロソフト、Windows Server 2003日本語版を正式発表―― Visual Studio .NET 2003、64bit版SQL Server 2000も同時発表 ―― |
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デジタルアドバンテージ 2003/05/21 |
2003年5月15日、マイクロソフトは、次期Windowsサーバ製品として開発を進めていたWindows Server 2003の発売日と価格を正式に発表した。
Windows Server 2003 Enterprise Edition(左)とStandard Edition(右) |
今回発表されたWindows Server 2003日本語対応版製品は次のとおり。
OS | ターゲット |
Windows Server 2003, Web Edition MUI(Multilingual User Interface)版 | 単機能Webアプリケーション・サーバ。Active Directoryサーバ機能などを持たない。MUIは、英語版に多国語対応キットを追加したものであることを表す |
Windows Server 2003, Standard Edition | SOHOや部門のワークグループ環境などの小規模なビジネス・インフラ向け |
Windows Server 2003, Enterprise Edition | 中〜大規模のエンタープライズ環境向け |
64bit版 Windows Server 2003, Enterprise Edition | 64bitプロセッサ搭載システムを用いる大規模エンタープライズ環境向け |
このほか、データ・センター向けのWindows Server 2003 Datacenter Editionがあるが、こちらはOEMベンダからシステムごと提供されるので、今回のマイクロソフトの発表には含まれていない。また最小構成のWeb Editionは、英語版OSにMUI(Multilingual User Interface)と呼ばれるローカライズ・キットを追加した特殊なバージョンで、販売方法も企業向けボリューム・ライセンス・プログラムのSelect、またはサービス・プロバイダ向けのService Provider License Agreementのみの提供でパッケージは発売されない。
ライセンス製品の発売は6月2日(月)より、パッケージ製品は6月25日(水)より順次発売が開始される。
Windows Server 2003のライセンス体系
Windows Server 2003のライセンス価格体系は、Windows 2000 Serverのそれから大きな変更はないようだ。例えば発表によれば、Enterprise Edition(25CAL付き)のパッケージ版は71万9000円、Standard Edition(5CAL付き)は17万6000円だとしている(いずれも推定小売価格)。価格体系や推定小売価格の詳細については、以下のマイクロソフトのWebページを参照されたい。
マイクロソフトは、今回の発表に先立ち、2003年3月1日から5月31日までの期間限定として、Windows Server 2003へのアップグレード権利を含む企業向けのサーバ・ライセンス/ソフトウェア・アシュアランスを低価格で販売するという優待キャンペーンを実施している。
基本的には、一定期間(2年間など)のうちにソフトウェアがバージョンアップしたときには、それらにアップグレードできる権利を持つ「ソフトウェア・アシュアランス」を低価格で販売するものと考えればよい。すぐにWindows Server 2003の導入を行うつもりならあまりメリットはないが、将来のWindows Server 2003へのバージョンアップを見据えながら、とりあえずは実績のあるWindows 2000 Serverを導入する、というような場合には利用価値があるだろう。
なおWindows Server 2003からは、クライアントのコンピュータを単位とするクライアント・アクセス・ライセンス(CAL)だけでなく、ユーザーを単位とするCALが新たに選択可能になった。このため1人のユーザーが複数の情報機器を利用してWindowsサーバにアクセスするような企業では、新しいユーザー単位のCALを利用することで、ソフトウェアにかかる経費を節減できる可能性がある。
もう1点、ランセンス関連で注意すべきは、ターミナル・サービスCAL(TS CAL)である。これはWindows 2000 ServerやWindows Server 2003に標準的に組み込まれているターミナル・サービスを利用するためのクライアント・ライセンスだ。基本的にこのTS CALは、Windowsサーバに接続する(ファイル・サービスなどを利用する)ための通常のCALとは別のもので、ターミナル・サービスを利用するには別途購入する必要がある。ただしこれまで、Windows 2000 ProfessionalやWindows XP Professionalには、Windows 2000 Serverのターミナル・サービスに接続するためのTS CALが提供されており、追加料金なしでこれを利用できた。あるいは企業向けのWindowsデスクトップに関する一括導入ライセンスの一部でも、Windows 2000 Serverターミナル・サービス向けのTS CALが付与されていた。
これに対しWindows Server 2003のターミナル・サービスに接続するには、クライアントOSの種別に限らず、基本的にすべてのクライアントでTS CALを購入する必要がある。従って、これまでは追加投資なしでクライアントを利用できるWindows 2000 Serverのターミナル・サービスを利用してきた企業が、サーバをWindows Server 2003にバージョンアップする場合には、サーバ向けの投資だけでなく、TS CALにも投資が必要になる。
統合開発環境の最新版、64bit対応のデータベース・システムも同時発表
Windows Server 2003の発表と同時に、以下の関連製品も発表された。
ソフトウェア | 内容 |
Visual Studio .NET Version 2003 | Windows Server 2003に搭載される.NET Framework 1.1に完全対応した統合開発環境。VB 6.0からのアップグレード機能の強化、Java言語開発機能の追加、モバイル・デバイス・サポート強化、IPv6対応などが加えられている |
SQL Server 2000(64bit) | 32bit版のSQL Server 2000をベースとして64bit対応を行ったもの。64bitプロセッサによってもたらされる広大なメモリ空間(リリース時点では最大512Gbytes)などを利用して、32bit版では不可能だった大規模なデータベース処理を可能にする |
Windows Server 2003と同時発表された統合開発環境Visual Studio 2003の各パッケージ |
左から「Enterprise Architect」「Enterprise Developer」「Professional」。 |
Visual Studio .NET 2003(以下VS.NET 2003)については、2003年6月30日までにユーザー登録を行った前VS.NET 2002ユーザー(Professional以上)に対しては、「特別アップグレード」として、相当するエディションのVS.NET 2003 CD-ROMが無償提供される。つまり無料で最新版にアップグレードできるわけだ。VS.NET 2002を購入したが、まだユーザー登録を行っていないなら、急いでユーザー登録しておこう。
ただしこの「特別アップグレード」は、前バージョンで最も安価な単体言語パッケージ(「Visual Basic」「Visual C++」「Visual C#」の各Standardパッケージ)には適用されない。これらのパッケージ・ユーザーのバージョンアップを促すため、限定3万本という制限付きで、統合開発環境であるVisual Studio .NET Professional 2003に安価(3万9800円)にアップグレードできる「ステップ・アップグレード」パッケージが用意された。
VS.NET 2003もWindows Server 2003と同じく、ライセンス販売は6月2日より、パッケージ販売は6月25日よりそれぞれ開始される。
64bit版Windows Server 2003の性能を生かすミドルウェアとして、最初に64bit対応が行われたのがデータベース・システムのSQL Server 2000である。これによりマイクロソフトは、従来UNIXソリューションの後塵を拝していたとされるハイエンド・データベース市場で巻き返しを図る考えだ。すでに米Microsoftと米HPは、Intel Itanium 2を搭載したハイエンド・サーバであるHP Superdomeと64bit版Windows Server 2003 Datacenter Edition、SQL Server 2000(64bit)の組み合わせによって、65万8277トランザクション/分(TPC-C OLTP)という世界最速のトランザクション性能を達成したと発表している(この件に関するマイクロソフトのニュースリリース。ただしこの記録は、発表後の5月9日付けで、IBMのAIX+DB2のシステムに塗り替えられてた)。
このSQL Server 2000(64bit)では、64bit環境向けに最適化を施したデータベース・エンジンとOLAPエンジンが含まれる。ターゲットとなる64bitマイクロプロセッサは、現時点ではIntel Itanium 2のみであるが、将来的にはAMDの64bitプロセッサであるOpteronにも対応する予定だ。
開発、評価用としてすべてのWindows OSを利用可能にする新パッケージ
Windows Server 2003とVS.NET 2003の発表から4日遅れの2003年5月19日、マイクロソフトは、ソフトウェア開発やシステム評価用として、Windows 9xやWindows NT、2000などの旧版を含め、すべてのWindows OSを利用可能にする日本独自のパッケージ「Windows MSDN Deluxe Edition」を発表した。発売日はWindows Server 2003およびVS.NET 2003のパッケージ発売と同じ6月25日である。
Windows MSDN Deluxe Editionパッケージ |
実質的にMSDNサブスクリプション オペレーティング・システムに相当するパッケージ。過去のバージョンを含め、すべてのWindows OSを開発・評価用途で利用できるようになる。 |
このパッケージには、Windows Server 2003, Enterprise EditionとWindows XP Professional(およびWindows XP Professional Service Pack 1a)のCD-ROMが同梱されており、ユーザー登録を行うと、Windows Server 2003(64bit版 Enterprise Edition、Standard Edition)、Windows 2000(Advanced Server、Server、Professional)、Windows XP Home Edition、Windows Me、および各種ソフトウェア開発キット(SDK)、デバイスドライバ開発キット(DDK)を収録したCD-ROM(またはDVD-ROM)が送付される。また登録ユーザーには、12カ月の間、最新技術情報やService Packなどのアップデートが送付されるとともに、マイクロソフトのダウンロード・サイトより、旧版を含むすべてのWindows OSをダウンロードできるようになる。
Windows MSDN Deluxe Editionパッケージの推定小売価格は9万4800円だが、この通常パッケージとは別に、優待パッケージと呼ばれる廉価版(5万9800円)が用意されている(パッケージ内容は同じ)。優待パッケージを購入できるのは、旧版のVisual Studio 6.0/VS.NET 2002などの製品を所有するユーザーか、競合する他社の開発関連製品を所有するユーザーに限られる。対象となる他社製品には、BEA WebLogicやBorland Delphi/JBuilder/C++ Builder、IBM WebSphere、Oracle JDeveloperなどに加えて、EclipseやSun MicrosystemsのJDK(Java Development Kit)などの無償ソフトウェアも含まれている。従って実質的には、高価な通常パッケージを購入するユーザーはいないだろう。さらに、優待パッケージを購入して8月31日までにユーザー登録を行うと、Windows Server 2003の解説書である『Microsoft Windows Server 2003テクノロジガイド』(定価2400円)がもれなくもらえるという特典まで付いている(マイクロソフトはこれを「スタートダッシュ キャンペーン」と呼んでいる)。
Windows MSDN Deluxe Editionのパッケージ内容を見ると、開発者向けにこれまでも提供されていたMSDNサブスクリプションの「オペレーティング システム サブスクリプション」(以下MSDN OS)と同等であることが分かる(マイクロソフトのMSDNサブスクリプション・レベルの解説ページ)。このMSDN OSの推定小売価格は9万4800円で、通常版のWindows MSDN Deluxe Editionのそれに一致している。しかし前述のとおり、5万9800円の優待パッケージは誰でも購入できるので、Windows MSDN Deluxe Editionは、MSDN OSの実質的な値下げということになるだろう。現時点でMSDN OSの購入を検討している人は、6月25日まで待ったほうがよさそうだ。
ビジネス・シーンでのWindows Server 2003の具体的なメリットを強調
Windows Server 2003が発表された5月15日は、企業ユーザーを対象として、マイクロソフトが定期的に開催している「the Microsoft Conference + expo 2003(以下MSC)」の初日でもあった。マイクロソフトの阿多親市社長の基調講演では、Windows Server 2003と、その関連ソフトウェアが企業コンピューティングにもたらすインパクトについて、具体的なデモンストレーションを交えてじっくりと紹介された(この件に関する@ITの2003年5月16日付けのニュース記事)。
具体的には、データ・センターでのWindows Server 2003の展開を効率化する「Automated Deployment Services(ADS)」(ADS詳細は「Insider's Eye:ベールを脱いだマイクロソフトの次世代システム・マネジメント戦略」を参照)、従来は煩雑だったグループ・ポリシーの設定や管理をGUIで行えるようにする「グループ・ポリシー管理コンソール」、Sun ONEディレクトリ・サーバやLotus Notesなど、異なる複数のディレクトリ・サービスの統合を可能にする「MetaDirectory Service」、次世代の機密情報管理を可能にする「Rights Management」(詳細は「特集Windows Server 2003完全ガイド:企業の機密情報管理に新時代をもたらすWindows Server 2003のRMテクノロジ」を参照)、Office 2003とWindows Server 2003、マイクロソフトのミドルウェアを組み合わせることで、新たなチーム・コンピューティングを可能にする「SharePoint Services」などである。
このうちグループ・ポリシー管理コンソールは、Windows 2000 Serverでも利用することが可能で、以下のマイクロソフトのサイトからダウンロードできる(ただしライセンス的には、Windows Server 2003の有効なライセンスが少なくとも1つ必要)。
この基調講演は、上記のような各ポイントについて、具体的なデモンストレーションを見せながら、約3時間にわたって行われた。早期導入企業のユーザーの声などをビデオで流しながら、Windows Server 2003の基本機能のいくつか(シャドウ・コピー機能など)についてあっさりとデモンストレーションを行った米国におけるWindows Server 2003の発表イベントと比較すると、かなり熱の入った発表イベントだった。景気低迷の逆風の中で、Windows Server 2003で企業へのWindowsサーバの普及を加速させようという並々ならぬ力の入れようを表しているようだ。
次世代の企業コンピューティングのインフラとして、Windows Server 2003がその地位を高められるかどうか。この答えは、これから数カ月にわたる企業ユーザーの厳しい評価の結果として得られることになるだろう。
Windows Server 2003、およびそれに付随する製品発表に関するマイクロソフトの情報ページ |
「Insider's Eye」 |
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